被害者が知っておくべき損害賠償の基本

2016-11-21

 交通事故に遭ってお困りの方は,過失割合が決まらない,相手方が提示してきた示談の金額が小さい,治療費の支払いを打ち切られた等々…様々な事情を抱えられています。

 これらは,内容は違うものの,法律的にはすべて損害賠償の問題になります。

 損害賠償請求が一般的にどのような場合に法律的に認められるのかを知っておくことは,ご自身の請求が認められるのかどうかを判断する上で役に立ちますので,今回はこの点についてお話しします。

 

不法行為責任

 交通事故に限らず,他人から権利を侵害されて損害を与えられた場合には,民法709条により,不法行為責任に基づく損害賠償の請求をすることになります。

 この不法行為責任が認められるには,①被害者の権利が侵害されたこと,②この行為について加害者に故意または過失が認められること,③それによって損害が発生したこと及びその金額,④①と③の間に相当因果関係があること,が必要になります。

 

誰が証明しなければならないのか

 注意をしなければならないのは,これらの条件について被害者の側で証明しなければならないとされていることです。

 このことは,被害者の方からすれば納得しがたいことだと思います。

 しかし,加害者の側から見ると,全くの他人からの請求であることが通常であり,それで賠償金を支払う以上は,やはり請求に理由があることを被害者に示してもらわないといけないということになります。

 

※交通事故事件の場合には,自賠法3条によって,②については被害者が証明しなくても良いことがありますが,問題になりやすい③と④については被害者が証明しなければならないことに違いはありません。

 

どの程度証明しなければならないのか

 このように,被害者の側で損害額や事故によって損害が発生したことを証明する負担を負わされるとすると,一体どの程度証明しなければならないのかが問題になってきます。

 この点については,一般的に,第三者である裁判官が確信に至る程度の証明が必要とされています。

 つまり,ある程度根拠があったとしても,第三者(裁判官)に対して,「おそらく被害者の言う通りだろう。」という程度の認識しか持たせることができないというのでは基本的に証明が足りないということになります。

 

きちんと証明できるかが賠償が認められるかどうかのカギ

 基本的に,損害賠償について相手方と争いになるのは,証明の問題が原因であることがほとんどと言っていいと思います。

 例えば,治療の打ち切りの件については,治療によって症状が改善することの証明がどの程度できるかという問題ですし,後遺症(後遺障害)は,後遺症が実際に生じていることの証明や,後遺症が事故によって生じたものであるということの証明の問題ということになります。

 これらについても,証拠によって,誰が見ても賠償をしなければならないことが明らかな状況であれば,基本的に相手方と争いにはならないでしょう。

 仮に,賠償をしなければならないのが明らかなのに,相手が変わり者で支払いを拒んでいるというのであれば,多少手間はかかりますが,裁判をすれば済みます。

 そのため,交渉にせよ裁判にせよ,請求を認めさせるためには,請求に理由があることの証明をどのように行うのかがカギになってきます。

 この点は,まさに法律の専門家である弁護士の得意分野です。

 

まとめ

 今回は,損害賠償の基本について見てみましたが,このことは,交通事故の損害賠償において問題となる様々な場面で基礎となる事柄です。

 請求が可能かどうかの見通しを立てる際にも,このことを念頭に置いて検討していくことになります。

 交通事故の損害賠償請求でお困りの方は,一度弁護士にご相談ください。