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交通事故における頚椎椎間板ヘルニアと素因減額

2026-06-22

はじめに

 交通事故で首を痛め、その後の検査で頚椎椎間板ヘルニアが見つかった場合、保険会社や加害者側の弁護士から、

 「元々あったヘルニアが原因で治療が長引いた」

 「後遺症が残ったのは元々あったヘルニアのせいだ」

 「加害者が全ての責任を負うわけではありません」

 などと言われることがあります。

 このような場合に問題となるのが「素因減額」です。

頚椎椎間板ヘルニアとは

 頚椎椎間板ヘルニアとは、首の骨(頚椎)の間にある椎間板が突出し、神経を圧迫する状態をいいます。

 症状としては、

 などが生じることがあります。

 交通事故による追突などで首に強い衝撃が加わったことを契機として症状が出現したり、悪化したりするケースがあります(ただし、明確な因果関係は不明です)。

素因減額とは

 素因減額とは、被害者側に存在した特徴的な体質や疾病などが損害の発生や拡大に影響した場合に、損害賠償額を減額する考え方です。

 素因減額の対象となるような疾患は多岐にわたりますが、例えば、「骨粗鬆症の患者が交通事故に遭ったときに、通常の人であれば骨折をするほどの怪我の仕方ではなかったのに骨折してしまった」というような事例が分かりやすいかもしれません(ただし、高齢者の場合には素因減額には慎重であるべきです)。

 この素因減額が認められると、賠償金額の全体から割合的に加害者の責任が割り引かれることになりますので、被害者が受けられる補償は大きく減ることになります。

 この割合は様々ですが、既往症の影響が大きいと見られれば、70~80%といった大幅な減額がされることもあります

 もっとも、事故前からヘルニアが存在していたとしても、当然に素因減額が認められるわけではありません。

 この記事では、頚椎椎間板ヘルニアと素因減額の考え方について解説します。

ヘルニアが見つかれば必ず素因減額されるのか

 結論からいうと、MRIでヘルニアが確認されたとしても、それだけで素因減額が認められるわけではありません。

 実際には、中高年になると症状がなくてもMRI上で椎間板の変性やヘルニア所見が確認されることは珍しくありません。

 裁判例でも、単に画像上の変性所見が存在するというだけでは、素因減額が否定される傾向にあります。

 では、実際にはどのようなケースで素因減額が認められるのでしょうか。

素因減額が認められやすいケース

 次のような事情がある場合には、素因減額が認められる可能性があります。

事故前から治療を受けていた場合

 事故前から首の痛みや手のしびれなどの症状が継続していた場合には、事故との因果関係が問題となります。

さらに、その症状について整形外科で継続的な通院や投薬を受けていた場合には、事故による影響だけではないと判断され、素因減額となる可能性が高まります。

重度の後遺障害が認められた場合

 素因減額が問題となるようなケースでは、後遺障害の残存も問題なっていることが少なくありませんが、その中でも、頚椎前方固定術の手術が行われたような場合には注意が必要です。

 ヘルニアによる痛み等の症状が強い場合、頚椎前方固定術が行われることがありますが、この場合、後遺障害別表第二11級7号が認定される可能性があります。

 一般的にむち打ち症の後遺症に認定される後遺障害は同14級9号にとどまるのが通例で、11級の場合とは賠償額が大きく違います。一概には言えませんが、数倍の違いがあると考えていただいてよいです。

 交通事故を原因とする首の痛みで頚椎前方固定術が行われるのは稀であり、事故や受傷自体はそれほど大きくないのに、損害の額が大幅に膨らんでくると、素因減額をされる可能性は高まります。

保険会社や相手の弁護士から「もともとのヘルニア」と言われたら

 保険会社は、ヘルニアの所見があるということのみで、素因減額を主張してくることがあります。

 しかし、あくまでも通院状況や後遺症の程度が、一般的な被害者にも生じ得る程度のものであれば、そもそも素因減額の前提となる「損害の拡大」がありませんので、素因減額は認められません。

 また、頚椎椎間板ヘルニアは、健常な人でも加齢によって生じることがしばしば見られるようなもので、そのような加齢による変性を理由とした素因減額は基本的に認められません。

 そのほか、事故前に通院歴や症状がなかったことも重要な要素です。

 保険会社や相手の弁護士から素因減額の主張が出されたら、こちらからはこれらの事情を主張することになります。

素因減額が争点となる場合に重要な資料

 素因減額が問題となる場合には、次のような資料が重要になります。

 これらを総合的に検討し、事故によって症状が発生したのか、それとも既往症によるものなのかを判断することになります。

弁護士に相談するメリット

相手方から頚椎椎間板ヘルニアを理由とした賠償金の減額が主張されることは少なくありませんが、最近の裁判の傾向では、現実にヘルニアを理由とした素因減がされることはあまりありません。

 弁護士にご依頼いただいた場合、頚椎椎間板ヘルニアと素因減額に関するこのような実務の傾向と、なぜそのような結論になっているのかを踏まえて、効果的に反論をおこなっていきます。

整形外科の通院がわずか17日で後遺障害14級【むち打ち】の認定を受けたケース

2026-06-03

事案の概要

 事故状況は、停車中の追突事故で、事故車には一見して分かる大きなへこみ等は見られませんでした。

 この事故で、被害者は頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負い、約半年間の通院をすることとなりました。

 本件は物損の全損賠償額についても争いがありましたので、物損からのご依頼となりました。

弁護士の活動

物損の示談交渉

 本件は全損の事案でしたが、車両の時価額については保険会社提示額に問題はないようでしたが、買い替えに要する諸費用が考慮されていませんでしたので、その分の上乗せの交渉を行いました。

 また、代車の利用期間が長くなってきており、保険会社からレンタカーの引き揚げの打診がありましたが、この点については一般的な裁判の相場を示しつつ、依頼者にもできるだけ早期に納車の手続を進めるようにアドバイスを行い、自己負担のない形で示談することができました。

後遺障害認定

 事故から半年を経過しても症状が完全には消失しなかったため、自賠責保険の被害者請求により、後遺障害認定を受けることとなりました。

 後述するように、本件は事故状況や通院経過に照らして、認定の可能性は低いものと考えていましたが、結果的に後遺障害認定を受けることができました。

示談交渉

 示談交渉では、慰謝料や逸失利益の額が争点となりましたが、後遺障害については請求金額満額、入通院慰謝料では裁判基準からわずかに譲歩した形で示談することができました(治療費・休業損害を除き約350万円の賠償)。

ポイント

 頚椎捻挫や腰椎捻挫といった他覚所見を伴わない神経症状で後遺障害認定を受ける場合、一般的に通院の状況も重視されていると言われていて、整骨院の通院が多いと後遺障害認定を受けることが難しいなどと言われることがあります。

 実際に、私がこれまで担当してきた事案でも、事故の状況やMRI検査の内容等からすれば後遺障害認定が受けられそうに見えるのに、整骨院ばかり通って整形外科にはほとんど通っていないというようなケースでは、後遺障害認定が受けられないように見受けられました。

 ただ、例外的に、バイク事故で身体に受けた衝撃が強いものと考えられ、かつ、整骨院の通院が非常に多かった(135日超)ような事案で、整形外科にはほとんど通わなかったようなケースでも後遺障害14級9号の認定を受けられたようなケースもありました。(「整形外科の通院日数がわずか9日でむちうちの後遺障害14級認定」)

 しかし、本件の事例は、過去に後遺障害非該当となったケースと比較しても事故が大きいものは思えず、神経根への圧迫所見も認められないとされていたほか、整骨院への通院と合算しても実通院日数の合計は50日に過ぎず、後遺障害認定に有利になるような事情は見受けられませんでした。

 本件は、後遺障害が認定できるかどうかの限界事例だったと思われますが、整骨院の通院が多く整形外科への通院が少ないことが思ったほどマイナスに働いていないのかもしれません。

 まだこのような事例が多く見られるわけではないので、今後もむち打ち症や腰椎捻挫に関して、どのような場合に後遺障害が認定され、どのような場合に認定されないのかを注意深く見ていきたいと思います。

 

主婦の休業補償が払われる場合と払われない場合

2026-05-26

主婦の休業補償とは

 交通事故で怪我をしたことが原因で仕事ができなくなれば、休業補償(厳密にいうと休業損害に対する賠償)が支払われます。

 これは主婦の場合でも同様で、交通事故による怪我が原因で家事の一部ができなくなれば、その分に対して休業補償が支払われます。

 しかし、主婦であれば必ずこの休業補償が支払われるかというとそういうわけではなく、不合理な扱いを受けることもあります。

 どういう場合に主婦の休業補償が支払われ、どのような場合には支払われないのか、最近の実務の動向を踏まえて弁護士が解説します。

支払いがあるかどうかを決める要素

 主婦の休業補償が支払われるかどうかを左右する要素としては、主に以下のものがあります。

・怪我の程度・治療状況

・家族内での家事の分担状況

・家事の他に仕事があるかどうか(兼業主婦)

・家事以外の仕事の休業状況

・家事以外の仕事の収入額

怪我の程度・治療状況

 言うまでもないかもしれませんが、例えば、かすり傷程度の怪我で、通院も含めて家事に何ら支障が生じていないような場合には休業損害は認められません。

 逆に、入院が必要となったり、怪我が重く、自宅で安静にしていなければならないような場合には家事はできなくなりますので、家事に関する休業補償の支払いを受けることは難しくありません。

 悩ましいのは、絶対安静というほどではないが、骨折等で身体の一部の動きに制限が生じていたり、負傷箇所の痛みやめまい等が生じて家事の一部ができなくなっているような場合です。

 この場合、実際にどのような家事に支障が生じているか、家事を休まなければならないような怪我の内容か、といった点を考慮して、どのくらいの割合で支障が生じているのかを判断することになります。通院による時間の制限も考慮する必要があります。

 具体的には、「家事労働の何%の制限が生じているのか」を確定して、その分単価を減額して計算することになります。

兼業主婦かどうか

 現代社会では、家事だけをする専業主婦の方はそれほど多くなく、正社員やパートの仕事をしながら家事もこなしているという方が少なくありません。

 このような方の場合には、家事以外の仕事で休業があれば、その休業に応じた補償を受けられます。

 しかし、仕事を休んだ分に対して補償が受けられたからといって、それまでしていた家事は問題なくできたということにはなりません。

 例えば、1日中安静にしていて、仕事はおろか家事も全くできなかったという場合、仕事と家事のそれぞれに休業が発生していることになります。

 そこで、仕事の休業分に家事の休業分を加算した額が賠償の対象となるのかが問題となりますが、これについては否定するのが判例です(最高裁昭和62年1月19日)。

家事以外の仕事の休業状況

 怪我自体の影響や通院によって家事には支障が出ていたものの、仕事は頑張って行っていたというケースではどのように考えられるのでしょうか。

 実際に被害者の方からお話を伺っていると、このようなことは多く、何も珍しいことではありません。

 一方で、「仕事が出来ていたのだから家事も出来ただろう」という理屈も分からないわけではありません。

 この点も悩ましいところなのですが、実務上は、次に述べる家事以外の収入の多さも踏まえて、家事労働に影響があったかどうかを判断する傾向にあります。

 また、パートタイム労働者か、フルタイム勤務なのかによっても違いが出てきます。

家事以外の収入の額

 被害者が家事以外にも仕事をしていた場合、実務上重視されているのは、その家事以外の仕事の収入額です。

 具体的には、家事以外の仕事の収入額が女性労働者の平均賃金(賃金センサス女性・学歴計・全年齢)と比較して高いかどうかを一つの目安として、これを上回る場合には、その仕事の休業分に対する補償のみで、別途家事労働への休業補償を支払わないというケースが少なくありません。

実務の傾向に対する評価

 このように、実務では、怪我の程度や元々の家事分担の内容を元にしつつ、兼業主婦の場合には、家事以外の仕事の状況によって補償額が決められる傾向にあります。

 しかし、率直に言って、これは現代社会における主婦の働き方が分かっていないものと言わざるをえないでしょう。

 最近では、女性でも高い所得を得ている人が少なくない一方で、賃金が低いパートタイム労働者として働いている人もいます。

 そして、高所得者の兼業主婦だから仕事だけをしているわけではなく、仕事に加え、例えば保育園の送り迎えをしながら、家に帰ったら料理や子供の寝かしつけをしたり、買い物をこなしていたりするのです。

 そのような中で、仕事を休むわけにはいかないので(高所得であればなおさら)、仕事はしつつ、通院に時間を取られるため子供の送り迎えは夫に頼んだり、料理をする時間がないので外食や出来合いの物を購入したりして、何とか調整をした上で、土日を休養にあてるといった形で何とか調整をしていたりするわけです。

 また、最近では在宅ワークも増えていて、在宅ワークは身体への負担は大きくないためこなすことができるが、家事のように体を動かす仕事はできないというケースもあるでしょう。

 また、現代では収入格差が大きく、時間当たりの賃金額に大きな隔たりがありますので、平均賃金を超えているからといって、フルタイムで働いているとも限りません。

 したがって、高収入であれば主婦業に対する補償はしなくてもよいなどという理屈は現実を知らない乱暴な議論というほかなく、実態に即していないと言ってよいと思います。

被害者がやるべきこと

 保険会社や裁判所の考え方が簡単に変わるとは言えません。

 ただ、兼業主婦の方が休業補償について請求しようと思えば、少なくとも、ご自身の損害がどのようなものなのかを説明できるようにしておく必要があります。

 具体的には、元々どのような家事をしていたのか、事故によってどういった家事ができなくなったか、そのとき身体に生じていた症状はどのようなものだったのか、通院1回あたりどの程度時間をとられていたか、といった点について、後で説明できなければいけません。

 したがって、こういった事項について日記などにまとめておくとよいでしょう。

 また、保険会社や裁判所は、通院先のカルテの記載内容を重視しています。家事に支障が出ているようであれば、そのことを医師にも話しておいていただき、それがカルテにも記載してもらえれば良いです。

まとめ

 このように、主婦の休業補償は、保険会社はもとより、裁判所の考え方も必ずしも妥当なものとはいえない面があり、実務上非常に難しい問題となっています。

 主婦の休業補償について適切に補償されることをお望みであれば、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

交通事故の入通院慰謝料とは

2026-05-15

 交通事故の入通院慰謝料とは、交通事故で怪我をして入院や通院をしたときに、その入院や通院の期間、怪我の内容に応じて支払われる慰謝料のことをいいます。

 慰謝料とは、諸説ありますが、精神的・身体的な苦痛に対する賠償金のことを指します。

 つまり、入通院慰謝料とは、怪我の痛みや入院や通院によって生じた日常生活に生じた支障などの苦痛を金銭的に評価したものということです。

保険会社との間で生じる問題

 交通事故で入院や通院を必要とするような怪我を負った場合、最終の通院を終えた段階で、保険会社から最終の支払いに向けて、示談金額が提示されます。

 この中に、入通院慰謝料慰謝料が含まれています。

 この流れには問題はないのですが、問題はその金額です。

 精神的な苦痛と言われても、その金額がどのくらいなのかを感覚的に分かるという人はまずいないでしょう。

 そのような中で、保険会社が金額を計算してくるのですが、この金額が適正とは言い難いのです。

 金額がおかしいのであれば、保険会社の担当者との間で金額の交渉をして金額の修正をもとめなければなりません。

 これが、交通事故の入通院慰謝料をめぐって保険会社との間で生じる問題です。

なぜ入通院慰謝料をめぐって問題が生じるのか

 上で述べたように、入通院慰謝料は、その金額がどのくらいなのかを感覚的に分かるようなものではないので、目安が必要となります。

 この目安が、任意保険会社が設定している「任意保険基準」と呼ばれるものと、過去に裁判で争われてきた膨大なデータを元に設けられた「裁判基準」との間にかなりの開きがあります。

 そのため、保険会社が計算してきた額が、法律的に見て適正といえる金額と比べて低いという問題が生じるのです。

どうやって適正な入通院慰謝料の額で示談するか

 裁判基準の入通院慰謝料は、大雑把に言うと、入院と通院の長さによって決まっています。

 例えば、典型的な怪我であるむち打ち症で6か月間の通院をした場合、89万円が通院慰謝料の目安となります。

 この目安は、一般の方でもインターネットで調べれば分かるかもしれません。

 しかし、この数値を保険会社に示したからといって、保険会社がこの金額で示談に応じるわけではありません。(その理由はこちら→「保険会社が出す慰謝料の額はなぜ低いのか」)

 特に、一般の方が交渉をする場合に気を付けていただきたいのは、少し交渉をするくらいであれば良いのですが、語気を強めたり、威迫するような言動をとってしまうと、保険会社側が弁護士を立ててくることがあり、そうなると、相当厳しい対応となる可能性が高くなります。

 適正額での示談を希望されるのであれば、弁護士に依頼されることをおすすめします。特に、弁護士特約にご加入の方であれば、弁護士費用の負担を気にする必要もありませんので、早期にご依頼いただいた方が良いかと思います。

保険会社が出す慰謝料の額はなぜ低いのか

2026-05-08

慰謝料の保険会社の算定基準

 保険会社が計算してくる慰謝料の金額は、「保険会社基準」などと言われることもありますが、一般的に裁判をした場合に裁判所で認められる金額よりも低くなっていることが多いとされています。

 保険会社は、会社である以上利益を最大化させなければならず、支払額を小さくできるのであれば、できるだけ小さくしようとするのは当然のことです。

 しかし、例えば怪我をして通院したような場合の治療費については、一般的に想定されている範囲を超えない限り、保険会社が治療費を値切ってきたりすることはほとんどありません。

 では、なぜ慰謝料については、相場といえる金額があるのに低く見積もってくるのでしょうか?それには理由があります。

裁判基準は目安に過ぎない

 結論を端的に言うと、弁護士が保険会社との交渉で用いる金額(裁判基準とか弁護士基準とか言われるもの)は、実際に裁判で認められる金額というわけではないからです。

 実際に裁判をした場合には、下がることも少なくありませんし、(稀ですが)上がることもあります。

 「裁判基準」は、文字通り慰謝料の額を決めるための基準であり、これに従わないといけないのではないか?と思われるかもしれません。

 しかし、実際にはそんなに甘いものではないのです。

裁判で慰謝料の額が基準を下回ることがあるのはなぜか

 「一般的に想定されている範囲を超えない限り、保険会社が治療費を値切ってきたりすることはほとんどない」と述べました。

 これは、あくまでも、裁判をせずに一応円満に話し合いで解決しようとしている場合の話です。

 いざ裁判をすると、保険会社はほぼ確実に弁護士をつけてきて、これまで争いになっていなかった部分も含めて徹底的に闘ってきます(多少弁護士によって熱量に違いがあります)。

 典型的なのは、通院先からカルテ等を取り寄せて、入通院の必要性を争ってくるというものです。

 カルテの記載をみると、怪我の内容にもよりますが、被害者側にとって不利になるようなことが書かれていることが少なくありません。

 保険会社側の弁護士は比較的優秀な者が多いため、そのような記載を見逃さず、「入通院が必要以上に長過ぎる」といった主張を展開してきます。

 慰謝料の額は入通院の長さによって決まる傾向にありますので、入通院が短縮されれば、その分慰謝料の額も低くなります。

 それに対して、こちら側からは、治療経過や同種の怪我の一般的な治療期間などについて根拠を示した上で主張し、入通院が必要であったことを証明しなければなりません。

 その結果、こちらの言い分を裁判所が認めれば、請求額どおりの慰謝料が認められますし、保険会社側の言い分を一部でも裁判所が認めれば、治療費が減額となるほか、慰謝料の額も減額となります。

 これが、裁判で慰謝料の額が基準を下回ることがある理由です。

保険会社も基準を下回ることは想定している

 このように、「裁判基準」といっても、実際にはそれほど強固な基準ではなく、個々の事情によって増えたり減ったりするものなので(実際に問題になるのは減額の有無であることが大半)、保険会社としては、裁判基準どおりには支払わないということなのです。

 しかも、被害者本人とのやり取りの中では、裁判基準から大幅に減額した額を提示してくることが少なくありません。

どうやって裁判基準での支払いを受けるか

 保険会社が裁判基準を下回る金額を示してきたとしても、それ自体がおかしいわけではありません。

 しかし、その差額の大きなものとなれば、被害者としては許容できるものではないでしょう。

 そこで、保険会社との間で交渉を行い、可能な限り裁判基準に近い金額で示談できるようにする必要があります。

弁護士による交渉で何が変わるか

 弁護士による交渉と被害者本人による交渉での違いは、知識や闘う手段(裁判等)の有無は当然ですが、大事なポイントして、ご自身の請求がどれだけ適正なものなのかを把握されているかどうか、ということがあります。

 自分の通院が不当なものであると認識しつつ通院している人はほとんどいません。

 しかし、客観的に怪我の内容は回復状況から見ると、妥当な範囲を超えてしまっているということは少なくありません。この点は、法律上の考え方と、医師や被害者本人の感覚との間でズレがあるところですので分かりにくいと思います。

 こうしたズレに気付かないままで交渉をしようとしても、かえって保険会社の態度を硬化させてしまい、適正な示談からは遠ざかってしまいます。

 交通事故を専門的に取り扱っている弁護士であれば、法律上はどの程度まで支払いが認められ、保険会社がどの程度のラインであれば示談可能なのかをある程度把握しています。

 それらの知識を駆使して、保険会社との間で適正額での示談を成立させているのです。

まとめ

 このように、保険会社が計算する慰謝料の額が低いのには理由がありますが、出された額を増額させるための交渉を弁護士が行うことは可能です。

 適正な額での示談をお望みであれば、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

事故直後でも法律相談を受けた方が良い理由

2026-04-28

 まず、交通事故に遭われたときに法律相談に行く最適なタイミングですが、私自身のこれまでの経験上、「事故直後」をおすすめします。

 事案によっては、事故直後でなくても良いケースもありますが、早めに行って存することはありませんが、相談が遅くなると、もう対応のしようがないということがあるからです。

なぜ法律相談は早めに行った方が良いのか

 事故に遭った直後は、特に過失割合が0:100であるようなケースであれば、保険会社が治療費を支払ってくれますし、仕事を休むことになっても、多少であればその分の保険会社が(計算方法の問題はありますが)支払ってくれますので、特に保険会社との対応で困ることもなく、法律相談の必要はないと思われるかもしれません。

 しかし、お怪我の内容にもよりますが、漫然とこの時期を過ごしていると、後になって必要な補償が受けられなくなるといったことがありますので、一度弁護士にご相談いただき、通院方法などについてアドバイスを受けることをおすすめします。

実際にあった事例

症状の一部が見過ごされるケース

 これは、入院が必要になるような比較的重い怪我をされた場合に見られるのですが、入院中は、頭部外傷や内臓の損傷など、生命に関わるようなものの治療に医療機関側も集中するため、その他の軽微な怪我については後回し(治療できないことも多い)となることがよくあります。

 医療機関の対応としてはそれでも問題はないのでしょうが、加害者側に賠償金を請求するという場面では問題が生じることがあります。

 というのも、頭部外傷や内臓の損傷等については、手術などによって比較的短期間で事故前の状態と同じように過ごせることになったものの、事故当初は軽微であると思われて特に対応されていなかった怪我の症状が長引くということがあるのですが、この場合に、事故当初に症状の訴えがカルテや診断書に記載されていない場合、「事故との因果関係が認められない」という理由で、治療費の支払いがされなかったり、後遺障害の認定が受けられないということがあります。

 このようなことは、重症の事例でなくても生じ得ることで、受傷当初は足があまりに痛くて足の痛みしか訴えしかしていなかったが、実は首も最初から痛めていたというようなケースで、後になって首に関する治療を受けようとしても受けられないということがあります。

 交通事故では、「症状の一貫性」についての資料の裏付けが非常に重要なのです。

 このように、医師への説明の仕方が後で賠償が受けられるかどうかに影響してくることがありますので、この辺りについて弁護士に確認された方が良いかと思います。

証拠の保全

 お怪我に関する補償に関する重要なポイントとして、「事故によって怪我をしたということ(因果関係)を客観的な資料で証明しなければならない」ということがあります。

 骨折をしたときのレントゲンやCT画像といったものが典型例です。

 ここで問題となるのが、「医学的には保存療法をとるしかないため厳密に怪我の状態を確認する必要はないが、賠償との関係では厳密な証明が要求される」ということがしばしば見られることです。

 時間の経過によって組織は修復されていきますので、後になって、画像上の異常所見が見つかったとしても、事故とは無関係のものとの判別ができず、事故との因果関係が認められないということがあり得ます。

 これも、医学的には治療方法に違いが出ないため、医療機関に問題があるというわけではありませんので、検査によって怪我の状態が明確になっていない場合には、必要に応じて被害者の側から医師に検査を依頼しなければなりません。

その他

 その他の事例としては、休業損害や通院交通費に関するもので、休業損害は仕事を休んだ分だけ、通院交通費は通院をした分だけ支払われるものと考え、治療が終わった段階でまとめて請求をしようとしたところ、保険会社から支払いを拒まれるというケースがあります。

 休業損害は、怪我の内容や仕事内容に照らし、休業が相当といえる場合でなければ支払われません。

 また、通院についても、何十キロも離れたところに頻繁に通わなければならないということは通常ありませんので、そのような不自然な通院をしていた場合、その全てが支払われる保証はありません。

 このような事態は、実際に支払われるのはどの程度までなのか、といったことを事前に知っていれば回避できたことです。

まとめ

 このように、事故直後から弁護士にご相談いただくことで、後の後遺障害認定や示談交渉に備えることができ、不測の事態を回避できるということもありますので、交通事故に遭われたら、お早目にご相談いただくことをおすすめします。

後遺障害9級【肩関節・膝関節機能障害】で約3500万円を獲得

2026-04-22

事案の概要

 事故の状況は、被害者がバイクで停車していたところ、前方にいた自動車が後退してきてバイクに衝突し、被害者の脚が自動車と地面に挟まれてひきずられるような形になったというものでした。

 被害者の方は、この事故で右肩腱板断裂、左前十字靭帯損傷、左膝後十字靭帯損傷、左膝内側側副靭帯損傷、左膝内側半月板損傷といった傷害を負い、膝については手術も行われました。

弁護士の活動

休業損害

 本件は、以前別件でご依頼いただいた方からのご依頼でしたので、初期の物損から含めての対応となりました。

 物損について示談した後、症状固定までの間は特に休業損害の発生等で争いは生じなかったのですが、本件では休業損害に一般的な事案と違うところがあり、事故後の休業が多く、仕事に復帰しても稼働時間や遂行可能な業務に請願があるなどしたため、降格となり、基本給部分も減少することになりました。

 交通事故で勤務先に作成してもらうことになる「休業損害証明書」では、通常だと、対象期間の基本給をベースに減給された額を書くことになるのですが、本件ではそのような書き方では基本給が減給となっていることが考慮されなくなってしまうため、この点を配慮した形で勤務先に休業損害証明書を書いてもらう必要がありました。

 この点は、弁護士と勤務先との間で書き方について調整をしました。

傷害部分の示談

 上記のとおり、本件では基本給から減給が生じており、一貫して一部休業が必要となったため、保険会社からの治療費が打ち切られることになる「症状固定」後も休業損害が発生していました。

 しかし、症状固定後の休業損害は、実務上「後遺障害逸失利益」として扱われるため、後遺障害認定を受けた後でなければ、保険会社から支払いを受けることはできません。

 そのため、生活費の問題が生じてきますので、まずは傷害部分(症状固定までの怪我に対する補償)の示談を先行させ、並行して後遺障害の被害者請求の準備を進めました。

後遺障害の被害者請求

 本件は、後遺障害の被害者請求をするにあたり、症状固定時期をいつにするのかが医療機関の対応との関係で問題となりましたが、症状固定日だけを引き延ばしても、休業損害がいつまでも保険会社から支払われる保証はなく(実際に保険会社からのプレッシャーがありました)、症状に改善が見られないようであれば、症状固定として後遺障害診断書を作成してもらった方が生活費の観点から良いように思われましたので、その旨を被害者の方に説明し、後遺障害の被害者請求を行うこととしました。

 結果として、右肩腱板断裂後の右肩関節可動域制限(10級10号)、左膝が「重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの」として左膝関節機能障害(12級7号)が認定され、全体として併合9級の認定を受けることができました。

後遺障害に関する示談交渉

 この後遺障害の認定結果を受けて、加害者側の保険会社と交渉を行ったところ、傷害部分も含めて約3500万円(治療費を除き、後遺障害の自賠責保険金616万円を含む)の賠償を受ける内容で示談をすることができました。

ポイント

 本件のポイントはいくつかありますが、賠償金に影響を与える部分としては、収入に関する損害(休業損害・逸失利益)の点が挙げられます。

 既に述べたように、本件では治療期間中に降格処分がされ、基本給が下がることとなったのですが、それに加えて、事故の少し前まで別の事情で長期にわたり休職していたという事情もありました。

 交通事故の休業損害や後遺傷害逸失利益では、事故当時の収入がどれだけであったかが重要です。

 一般的には、休業損害の場合は事故前3か月の給与の平均値が、後遺障害逸失利益の場合は事故前年の年収がベースになって金額を計算します。

 本件の場合、このいずれの数値も使えなかったという問題がありました。

 しかし、事故当時既に復職を果たしてはいたこと、その時点で新たな労働契約が締結されていたこと、復職の労働契約は休職前と同様であったこと等の事情があったため、事故当時の労働契約の内容にしたがって交渉を行いました。

 本件は、早い段階からのご依頼となったため、弁護士が介入していなかった場合にどれだけの補償が受けられたのかは分かりませんが、相当厳しい内容になっていたのではないかと思います。

後遺障害14級【むち打ち】主婦の方で約290万円の支払いを受けたケース

2026-04-14

事案の概要

 事故の状況は、路外の駐車場から飛び出してきた加害車両が、片側3車線道路の第2車線を走行していた被害車両の左側面に衝突したというものでした。

 被害者の方は、頚椎捻挫・腰椎捻挫等の傷害を負い、治療を終えても首の痛みや右上肢のしびれなどの後遺症が残ることとなりました。

弁護士の活動

後遺障害認定

 本件は治療中からのご依頼でしたが、通院を半年続けても症状がなくならなかったため、その時点で後遺障害認定を受けることとなりました。

 そして、当事務所で被害者請求を行った結果、後遺障害14級9号の認定を受けました。

示談交渉

 この後遺障害の認定結果を受けて、加害者側の保険会社と交渉を行ったところ、治療費のほかに、約290万円(自賠責保険金75万円を含む)の賠償を受ける内容で示談をすることができました。

ポイント

 本件のポイントは、まず後遺障害認定の部分にありました。本件のお怪我の内容は、いわゆるむち打ち症でしたが、むち打ちの場合の後遺障害認定の場合、事故の衝撃がどれだけ大きいかがまず重要です。

 本件の場合、車両が横転するような一見して衝撃が大きいと分かるような事故ではなく、フレームの修理もそれほどありませんでしたが、写真を見る限りドアパネルのへこみははっきりと分かるほど大きなものでした(修理費は60万弱)。

 また、MRIではヘルニアを確認することもできました。

 ただ、最近の非該当事例を見ると、同程度の車両の損傷で、ヘルニアがあるような人でも認定を受けられていない方もいるので、限界事例に近かったのではないかと思います。

 その他、過失相殺が15%あったのですが、その代わり後遺傷害部分の損害額の認定は当方の請求額どおりとなっており、過失相殺前の損害金額は、治療費を除いて約360万円となっており、よい示談ができたのではないかと思います。

交通事故で弁護士に依頼すると本当に示談金は増額する?

2026-04-09

実際の交渉状況

 交通事故の被害者の方で、インターネットで弁護士を探されている方は、弁護士に依頼して本当に示談金が増額するのか?ということを疑問に思われているかもしれません。

 結論から申し上げますと、交通事故のお怪我に関する「損害額」の部分については、弁護士に依頼した場合、少なくとも弊所にご依頼ただいた事案に関しては、ほとんどのケースでそれまでに保険会社から示されていた金額よりも交渉により増額されています。

 もちろん、事案によりますので断定的なことを申し上げることはできませんが、これまでの経験上、保険会社が全く交渉に応じないということはほとんどないと言ってよいかと思います。

注意が必要な場合

弁護士費用特約がない場合の注意点

 増額ができたとしても、その増額幅に対して支払う弁護士費用の方が高いのであれば、弁護士に依頼した意味がありません。

 そのため、弁護士費用特約のご加入がない場合には、増額の見込み額と弁護士費用を比較して、弁護士に依頼するべきかどうかを見極める必要があります。

 この点は、ご依頼前の段階で、どれだけのメリットが見込めるのかご案内していますので、それを踏まえてご依頼いただければと思います。

 これに対し、弁護士費用特約のご加入がある場合には、増額分を上回る負担をするということはほぼないと言ってよいので、この点を心配する必要はありません。

過失が大きい場合

 交渉をしても増額ができないケースの典型例は、こちら側の過失が大きい場合です。

 このような場合でも、費目ごとの、例えば「慰謝料の額」自体については増額となることが多いです。

 しかし、過失がある場合には、その分加害者側の負担額が減ることになり、実際に支払われる額も小さくなります。

 ただ、これだけであれば、割合で最終的な受取額が小さくなるだけで、弁護士の交渉に意味がなくなるわけではありません。こちらの過失が大きくても、その割合なりに慰謝料の額は増額となるからです。

 交通事故の特殊なところは、強制保険の自賠責保険が存在することで、弁護士に依頼するメリットがあるかどうかは、自賠責保険の補償でも足りるかどうかという観点からも考えなければなりません。

 一般的に、こちら側の過失が40%だとすると、治療費や慰謝料などの損害の合計額のうち、加害者が支払うのは60%分のみです。自賠責保険は、よほど過失が大きくない限り、支払額が減額されることはありません。

 慰謝料が100万円となっても、相手の支払額は60万円に過ぎないのです。

 これに対し、自賠責保険の場合は、上限が120万円となっていたり、慰謝料の算出方法が低くなっているといった問題はありますが、原則100%補償されます。

 このようなケースでは、加害者側から支払われる賠償金の額よりも、自賠責保険金の額の方が大きくなるということがあり得ます。

 その場合は、加害者との関係で賠償金の増額が見込めず、敢えて弁護士に示談交渉を依頼する必要はないということがあります。

 ただし、こうした場合でも、人身傷害保険の加入がある場合には、弁護士に依頼するメリットがあります。詳しくは弁護士にご確認ください。

その他増額が期待できないケース

 その他、あまり見られませんが、被害者本人と保険会社との交渉で、法律的にはまず認められないような支払いを保険会社が認めているようなことがあります(実費や特殊な休業損害のような部分で稀に見られます)。

 このような場合には、慰謝料等の部分で増額が期待できたとしても、慰謝料のところで強く交渉をした結果、それまで認めていた部分が撤回されるということにもなりかねませんので、どこまで交渉するかは慎重に見極める必要があります。

まとめ

 以上のように、過失が絡んだり、弁護士特約のご加入がなく比較的軽微なお怪我の場合には、増額が見込めないこともありますが、特に慰謝料の評価額については、弁護士が交渉すればほとんどのケースで増額が見込めるといって差し支えないと思います。

 基本的には、弁護士に依頼するメリットがあるものと考えて法律相談をご利用いただき、実際に弁護士に依頼すべきかどうかは弁護士から見通しの説明を受けていただいてからご判断いただければよいかと思います。

後遺障害12級【骨盤骨変形】で治療費等を除き1300万円の支払いを受けたケース

2026-03-31

事案の概要

 事故の状況は、店舗の駐車場で、ブレーキとアクセルを踏み間違えた車両が後退してきて、被害者が店舗と車両に挟まれて負傷したというものです。

 被害者は、骨盤輪損傷、左寛骨臼骨折、左脛骨骨折、左膝前十字靭帯損傷、左膝内側側副靭帯損傷の傷害を負い、今後の対応に不安を感じられてご依頼となりました。

 

弁護士の活動

後遺障害認定

 本件では、被害者の方は手術が必要となるほどの重傷を負われたのですが、術後の予後は悪くなく、自覚可能な深刻な可動域制限などはありませんでした。

 ただ、骨盤骨の変形障害は残ってしまったため、その点で「骨盤骨の著しい変形」として後遺障害12級5号の認定を受けました。

示談交渉

 この後遺障害の認定結果を受けて、加害者側の保険会社と交渉を行ったところ、治療費のほか、自宅の一部改造費や休業損害といった既に補償を受けていた部分を除いて、約1300万円(自賠責保険金224万円を含む)の賠償を受ける内容で示談をすることができました。

ポイント

 本件のポイントは後遺障害部分の補償に関する部分で、被害者ご本人様の自覚症状としては大きな後遺症がなく、日常生活にも大きな影響がないように思われたことでした。後遺障害に対する補償で大きな割合を占めるのは後遺障害逸失利益(仕事への支障とそれに伴う収入の減少)ですが、まったく仕事に支障がないということになれば、この後遺障害逸失利益自体がないという判断にもなりかねません。

 今回後遺障害の認定を受けたのは骨盤骨の変形障害ですが、骨の癒合に問題があり、その程度が大きい場合、「変形障害」として後遺障害の認定を受けることがあります。

 痛みを伴う場合には後遺障害12級13号という等級もあり、痛みに伴う日常生活への支障も生じているのが通例ですので、逸失利益の主張をするのはそう難しくありません。

 しかし、中には、レントゲンなどではっきり分かる変形が確認できても、仕事にはほとんど支障がないという人もいます

 このような場合には、逸失利益の評価が難しくなります(特に鎖骨や脊柱の変形障害で問題となることが多いです)。

 そもそも後遺障害は、将来も治る見込みがないものですから、今の時点で特に仕事に支障がなくても、業務内容に変更が生じたり、転職が必要となった時点で問題が生じてくるかもしれません。

 したがって、現状だけを見て、安易に妥協するのは危険です。

 本件は骨盤骨の変形障害で、鎖骨や脊柱の変形障害のときほどこの点が問題となったわけではありませんが、後遺障害認定の結果と自覚症状にギャップがあるような場合には、逸失利益の金額をどのようにすべきかは慎重に行う必要があります。

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