後遺障害の分類と等級表

 一言で後遺障害といっても,その症状は様々で,いわゆる寝たきりの状態で意思疎通もままならないという人もいれば,ちょっとした痛みが残っている程度で,日常生活にはほとんど支障が生じていないという人もいます。

 このように症状が異なれば,被害の大きさも違ってきますので,損害賠償の額も大きく異なってきます。

 それでは,実務では,このような違いをどのように賠償に反映させているのでしょうか?

 基本的な考え方について見ていきます。

等級表

 後遺障害は,治療をしても改善が見込めなくなった症状について,将来にわたってどのような苦痛や仕事への影響が出るのかというものですので,これを事前に金銭的に評価することは事実上不可能といってよいでしょう。

 そのため,実務上は,後遺症の重さである程度区分けをして,その区分けに応じて損害額を決めていくということが一般化しています(そこでは評価しきれない将来介護費や家屋改造費,将来確実に生じる手術費用などは別途実費を請求します。)。

 この区分けで用いられているのが,自賠責保険の等級表です。

 自賠責保険の等級表は,以下のとおりです。
 別表1と別表2があるのは,介護が必要かどうかによって支払い保険金額に差を生じさせるためのものです。
 この等級表は,基本的に労災補償の支払基準に準じて作成されていますので,労災補償の基準を確認すれば,さらに詳しい認定の基準を知ることができます。
 
別表第一 
等級
介護を要する後遺障害
保険金額
第1級
1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4,000万円
第2級
1 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3,000万円
 
備考 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。
別表第二 
等級
後遺障害
保険金額
第1級
1 両眼が失明したもの
2 咀嚼(そしやく)及び言語の機能を廃したもの
3 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4 両上肢の用を全廃したもの
5 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6 両下肢の用を全廃したもの
3,000万円
第2級
1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
2 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
3 両上肢を手関節以上で失つたもの
4 両下肢を足関節以上で失つたもの
2,590万円
第3級
1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
2 咀嚼(そしやく)又は言語の機能を廃したもの
3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5 両手の手指の全部を失つたもの
2,219万円
第4級
1 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
2 咀嚼(そしやく)及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3 両耳の聴力を全く失つたもの
4 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6 両手の手指の全部の用を廃したもの
7 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
1,889万円
第5級
1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
2 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4 一上肢を手関節以上で失つたもの
5 一下肢を足関節以上で失つたもの
6 一上肢の用を全廃したもの
7 一下肢の用を全廃したもの
8 両足の足指の全部を失つたもの
1,574万円
第6級
1 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
2 咀嚼(そしやく)又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5 脊(せき)柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
1,296万円
第7級
1 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
2 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
7 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
8 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11 両足の足指の全部の用を廃したもの
12 外貌に著しい醜状を残すもの
13 両側の睾(こう)丸を失つたもの
1,051万円
第8級
1 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
2 脊(せき)柱に運動障害を残すもの
3 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
4 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
5 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
6 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8 一上肢に偽関節を残すもの
9 一下肢に偽関節を残すもの
10 一足の足指の全部を失つたもの
819万円
第9級
1 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
2 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
3 両眼に半盲症、視野狭窄(さく)又は視野変状を残すもの
4 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
6 咀(そしやく)及び言語の機能に障害を残すもの
7 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
8 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
9 一耳の聴力を全く失つたもの
10 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
13 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
14 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
15 一足の足指の全部の用を廃したもの
16 外貌に相当程度の醜状を残すもの
17 生殖器に著しい障害を残すもの
616万円
第10級
1 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
2 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3 咀嚼(そしやく)又は言語の機能に障害を残すもの
4 十四歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
5 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
6 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
7 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
8 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
9 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
461万円
第11級
1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4 十歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
5 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
6 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
7 脊(せき)柱に変形を残すもの
8 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
9 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
10 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
331万円
第12級
1 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3 七歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
4 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8 長管骨に変形を残すもの
9 一手のこ指を失つたもの
10 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
11 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
12 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
13 局部に頑固な神経症状を残すもの
14 外貌に醜状を残すもの
224万円
第13級
1 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
2 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3 一眼に半盲症、視野狭窄(さく)又は視野変状を残すもの
4 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5 五歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
6 一手のこ指の用を廃したもの
7 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
8 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
9 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
10 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
11 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
139万円
第14級
1 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2 三歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
3 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9 局部に神経症状を残すもの
75万円

 

等級の認定

 上の等級表を見れば,自分の後遺症がどこに位置するのか大まかに把握することができると思います。

 等級表にしたがって,等級の認定が受けられれば,次は賠償金額の決定の問題に移っていきます。

 この「等級の認定」と「賠償金額の決定」は,必ずしも確定した認定方法や計算式によって決まっているわけではありませんので,実際に生じた後遺症の内容,実際の損害の内容に即して,検討していかなければなりません。

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