骨折による後遺障害等級12級13号のポイント

2016-11-14

 前回は,交通事故の後遺障害(後遺症)の中では比較的軽いとされる14級の中でも,神経症状が残った場合の後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」に特に焦点を当ててみました。

 今回は,同じ神経症状の中でも,交通事故で骨折した後に後遺障害等級12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の障害が残った場合について,認定や逸失利益や慰謝料といった損害賠償の弁護士による示談交渉・増額のポイントについて見ていきたいと思います。

 (関節の可動域制限について12級6号が認定された方はこちら→「肩・ひじ・手の関節の後遺症の賠償」

 

骨折と後遺症(後遺障害)

 交通事故に遭ったときに身体のどこかを骨折するということは,むち打ちと同様に交通事故の被害者の方によく見られることです。

 また,骨折をした後,時間をかけて治療をしても痛みが消えなかったり,運動障害(可動域制限)が出たり,骨が変形してしまうこともありますが,そのような後遺症については,加害者からしっかりと損害賠償を受けなければなりません。

 今回見ていくのは,これらの後遺症のうち,痛みを中心とする神経症状に関する後遺症です。

想定される自賠責保険の後遺障害等級は?

 骨折後に痛みの後遺障害が残った場合に認めれられる後遺障害等級としては,前回見た14級9号「局部に神経症状を残すもの」のほかに,12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」が考えられます。

 ここでのポイントは,どちらに認定されるかは症状だけでは分からないということです。

 この2つは,どちらが認定されるかによって想定される損害賠償の金額が大きく異なってきますので,これらがどのように区別されているのかが重要になってきます。

14級9号と12級13号の違い

 自賠責保険の後遺障害12級13号と後遺障害14級9号の内容を見てみると、12級13号は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」とあり、14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」とあります。
 これだけを見ると、痛みの強さが強い方が12級13号で、痛みがそれほどでなければ14級9号になるように読めます。
 しかし、痛みの強さは本人にしか分からないので、痛みの強さによって等級を決めるのは困難です。

 さらに、自賠責保険が準用する労災の認定基準では,12級13号は「通常の労務に服することはできるが,時には強度の疼痛のため,ある程度差支えがあるもの」,14級は「通常の労務に服することはできるが,受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」とされています。

 しかし,この基準もあいまいで,今一つ区別の基準が分かりません。

 一般的には,14級9号と12級13号を区別する基準としては,12級は「障害の存在が医学的に証明できるもの」であり,14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」とするものなどが挙げられています。

 これにより,骨折の場合には,画像によって関節面の不整や骨癒合の不全が見られることが,12級13号が認定されるポイントとなってきます。

 逆に言うと、被害者自身がどれだけ痛みが強いと言っても、そのことを裏付ける画像がなければ12級13号は認定されないことになりますし、痛みを裏付ける画像があれば、痛み自体はそれほど苦にならなくても12級13号が認定される可能性があります。

 そのため,骨折による症状についてきちんと賠償を受けるためには,上記のような異常を確認するためのCTやXP,MRIといった検査を受けることが重要となります。

弁護士による12級13号の示談交渉・増額のポイント

 上記のような点に留意して,後遺障害等級12級13号が認定されたとして,損害賠償の示談交渉や裁判の中ではどのようなことが問題になるのでしょうか?

逸失利益は?

 神経症状についての後遺障害については,特に逸失利益の労働能力の喪失期間(労働へ支障が生じる期間)が争いになることが多く,しかも,同じ12級13号であっても,症状の原因が何であるかによって判断が分かれるところでもありますので,以下で詳しく見ていきます。

 そもそも後遺障害とは,原則として,治療をしても良くならない状態になったときに残った症状について認定されるもので、基本的に一生付き合っていくようなものです。

 したがって,逸失利益(後遺症による労働への支障によって生じる減収)は,働いている限り生じるものと考えられます。

 このことは,例えば交通事故で腕などを失ったようなケースを想定すると分かりやすいと思います(失われたものが元通りになることは考えられないでしょう)。

 ところが,神経症状の場合には,あくまでも感覚的な問題であるため,被害者本人の馴れなどによって,労働能力が回復するのではないかという問題があるのです。

 14級9号に関する記事でも言及しましたが,特にむち打ち症の場合にはこのことが問題とされやすく,裁判をしたとしても,むち打ち症で12級13号が認定された場合、労働能力喪失期間が10年程度に限定されることが一般的になっています。

保険会社との示談交渉のポイント

 保険会社は,上記のようなむち打ち症に関する12級13号の一般論を元に,労働能力をかなり短く設定しようとしてきます(10年未満を主張してくることも珍しくありません。)

 上記のように,12級13号で労働能力喪失期間を10年などとされることも多いため,あるいは,そのような提示を受けても,そういうものなのかと思われるかもしれません。

 しかし,同じ12級13号であっても,骨折の場合とむち打ちの場合では事情が異なり,骨折後の疼痛等に12級13号が認定された場合、骨癒合の不全や関節面の不整といった原因がはっきりとしていて,しかもその原因がなくなることがないと考えられます。

 そのため,骨折で12級13号が認定された場合であれば, 過去の裁判例上,症状が骨折部位によるものであるという理由によって,特に労働能力喪失期間を行わなかったものも数多くあります。

 したがって,どの程度の賠償を相手に求めることができるかは,過去の事例を調査し,慎重に検討した上でしっかりと交渉で必要があります。

 実際には、現実に後遺症が仕事へ影響を与えているか、そのために収入が下がっているかといった事情が考慮されて、最終的な結論が出されることになりますので、この点もご自身でチェックしてみてください。

 逸失利益の請求は,弁護士によっても違いが出るところでもありますので,依頼される前によく説明を受けて,弁護士の方針を確認してください。

慰謝料は?

 後遺症について12級が認定された場合のいわゆる裁判基準に従った慰謝料の相場は,290万円程度とされています。

 裁判上は,多くのケースでこの相場にしたがって請求が認められていますので,保険会社が低い金額を提示してきた場合は,しっかりと交渉していく必要があります。

まとめ

 このように,12級13号は,認定されるかどうかという点で,どのように医学的な証明を行うべきかということがまず問題となり,認定された後は,どの程度の賠償を受けることができるかということで特有の問題があります。

 12級13号が認定されるような症状が残っている場合には,交通事故事件に詳しい弁護士にご依頼されることをおすすめします。

 

 後遺障害に関する一般的な説明についてはこちらをご覧ください →「後遺症が残った方へ」