示談交渉と裁判(裁判基準)の重要な関係

2016-12-09

交通事故事件は示談交渉で解決することが可能

 当事務所では,交通事故事件について裁判の案件も当然お受けしておりますが,結果として裁判をせざるを得なくなった事案でも,初めは示談の可能性を探るために示談交渉から始めることがほとんどです。

 その理由は,交通事故事件が,これまで数えきれないほど全国の裁判所で争われてきており,他の事件と比較してもかなりのノウハウが蓄積されているということにあります。

 ある程度相場(裁判基準)が形成されているため,裁判所の判断を待たなくても当事者双方がある程度結論を予測することが可能となり,弁護士が示談交渉を行うことで,裁判をしなくても相場(裁判基準)を前提とした示談をすることが可能であることが多いのです。

 特に,慰謝料の場合は,算定に一定の基準が必要となりますので,裁判基準が非常に重要となります。

 逆に言うと,これまでにほとんどノウハウがないような特殊な事案では,裁判をせざるを得ないということがあり得ます。

 

示談交渉と裁判は別物?

 慰謝料のように,金額を算定する際に直接裁判基準を用いる場合は別として,その他の場合に裁判ではなく示談交渉として事案を進めていく場合,一応裁判とは別物であるということで,裁判のことは度外視して考えていくことになるのでしょうか?

 答えはノーです。

 交渉でご依頼されている以上,「自分は裁判までするつもりはないから,裁判所のことは関係ないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが,そうではないのです。

 示談交渉をしていく上でも,裁判所であればどのように考えるのかということは非常に重い意味を持ってきますので,今回はこの点についてご説明いたします。

 

賠償額を決めるのは法律と裁判所

 交通事故事件の相手方は多くの場合,保険会社になると思いますが,そもそもなぜ保険会社は示談交渉に応じてくるのでしょうか?

 保険会社として,自社の判断を超えて支払うことはない!と考えるのであれば,弁護士から何を言われても支払いに応じなければいいはずです。

 しかし,どのような場合に賠償をしなければいけないのかは法律によって定められていて,法律をどう適用していくのかは裁判所が判断を示すことになります。

 したがって,独自の見解に従って支払いを拒んだ場合,弁護士は最終手段として,裁判等の手段をとることになります。

 

保険会社が示談に応じる理由

 裁判になれば,裁判所の判断で結論が出されることになり,保険会社は判決に従って支払いをせざるを得なくなります。

 そのため,いくら拒んでも,最終的には裁判所の見解に従わざるを得ないのであれば,多少妥協してでも早く支払いをしてしまおうということになるのです。

 このように,裁判という仕組みがあるからこそ,相手方が支払いをしてくれるという側面がありますので,交渉においても裁判所がどのように判断するのかを見据えることは非常に重要です。

 

弁護士にできること

 弁護士は,法律や裁判所が定めたルールの中で,いかにしてご依頼者様の権利を実現していくかということに全力を注いでいくことになります。

 交渉は,ただ自分の主張の正当性を述べればよいというものではなく,その主張が,法律や裁判でも認められるものであることを,根拠を示して説明できなければなりません。

 そのため,交渉と裁判は密接な関係にあり,交渉でも裁判に対する知識は不可欠なのです。

 私がご依頼者様に対して方針などを説明する際,「裁判だと~」と申し上げることがありますが,それはこのような理由によります。

 

まとめ

 以上のように,裁判外の交渉での解決を望まれる方でも,適正な賠償を受けるためには法律や裁判についての知識が非常に重要になりますので,賠償のことでお困りの場合は,まずはお気軽にご相談ください。