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会社員で後遺障害12級6号が認定され,過失割合の交渉も行った事例

2019-05-20

事案の概要

 事故の状況は,バイクで道路を走行中,右側からバスが車線変更をして接触してきたというもので,被害者は,鎖骨・肋骨・肩甲骨の骨折といった傷害を負い,過失割合や事故当時に身に付けていたものなどに関する賠償の問題もあったため,事故から間もない時点でのご依頼となりました。

当事務所の活動

物損の示談交渉

 まずは,物損の交渉からですが,本件は,バイクの修理費用が時価額を上回る,経済的全損にあたりましたので,この点の賠償の交渉が必要となりました。

 また,事故当時身に付けていたものなども破損していましたので,この点も併せて交渉を行いました。

 物損の交渉の一般論については,こちらをご覧ください。

過失割合

 本件は,弁護士への依頼前の物損の交渉の時点で過失割合は5:95で話が進んでいて(物損は相手からの請求なし),この点について被害者は特に異存はありませんでした。

 しかし,弁護士が介入すると,保険会社がそれまでの主張を撤回し,過失割合20:80を新たに主張してきました。

 四輪車が車線変更をして二輪車に接触した場合の過失割合は,一般的には20:80とされているのです。

 保険会社が一旦示した金額を撤回することは通常はないのですが,物損で示した過失割合を,弁護士が介入した後の人身の交渉の際に撤回してくるということはたまにあります。

 物損と人身では金額の大きさが違うことに加え,弁護士介入後の人身の支払額は,保険会社が通常予定している金額よりもさらに大きくなるためだと考えられます。

 そのため,この点も交渉を行う必要が生じました。

 一般的な過失割合を修正するためには,それ相応の理由が必要となり,しかも,こちらが主張したい事実を自分で証明しなければなりません。

 事故の状況は,ドライブレコーダーなどで証明することができることもありますが,それが難しい場合,刑事手続の中で作成された資料を用いて証明をしていきます。

 本件は,加害者の刑事裁判が行われていましたので,裁判所の記録を取得する必要がありました。

 この裁判記録を確認することにより,事故の状況を証明することができ,被害者が事故を回避することが一般的な車線変更の場合と比較して困難であったことが分かりましたので,このことを理由に過失割合を5:95に戻すことができました。このことは,人身の賠償額に大きく影響することになります。

後遺障害の認定

 被害者は,治療を行いましたが,肩の関節の可動域に障害が残ったため,後遺症の認定を受けることになりました。

 本件は,実際に通院した日数が10日(他に入院2日)と短かったのですが,無事に後遺障害等級12級6号の認定を受けることができ,これに伴い,自賠責保険金として224万円が支払われました。

 むちうちに代表される,痛みやしびれなどの神経症状のみの後遺症の場合とは異なり,骨折後の可動域制限の場合であれば,実通院日数がそれほど問題とはならないのです。

 この場合,症状固定時点での骨の癒合の仕方などに問題があり,それによって可動域が制限されているということが,画像資料によって客観的に把握することができるということが重要なポイントとなります。

人身の示談交渉

 本件の場合,既に述べたように,過失割合も争いとなりましたが,この点は,20:80から5:95となりました。

 人身の交渉で金額面の差が出る部分は,主に慰謝料と逸失利益です。

 過失割合5:95を前提としても,当初相手方は約950万円を提示していました。

 しかし,これは相場と比較して著しく低かったため,交渉を行い,最終の支払額は約1160万円として示談をすることができました。

ポイント

 今回の交渉で金額に大きな影響を与えたのは,過失割合の部分でした。

 被害者本人が交渉をしていた場合と弁護士が介入した場合で,弁護士が介入した後で不利になることはほとんどないのですが,たまにあるのが,物損示談時の過失割合が変更されるパターンです。

 この場合,物損の方で一般的な相場よりも保険会社が譲歩している可能性が高いため,人身の方の過失割合の交渉は難しいことが多いです。

 しかし,一方で,全く譲歩する余地がないのに保険会社が譲歩することはほとんどありません。

 つまり,保険会社にも何らかの弱みがあるはずです。ただ,それを証明する資料が不足しているために,一般的な相場を強く主張してくるのです。

 今回の場合,刑事記録を取得することで,相手の弱み(被害者が避けられない状況だったこと)を証明することができたので,過失割合を相場から修正することができました。

 弁護士基準で慰謝料や逸失利益などを請求しようとする場合,金額が大きくなり,過失割合の交渉もよりシビアになりますので,しっかりと資料を揃え,論理を整えることが重要となるのです。

主婦のむちうちで14級が認定され,後遺症の賠償が満額となった事例

2019-04-12

事案の概要

 事故の状況は,信号待ちで停車中に後方から加害車両に追突されたというもので,被害者は頚椎捻挫・腰椎捻挫・肩関節捻挫のけがを負いました。

 順調に回復していたのですが,事故から8か月近くが経過し,治療の終了が見えてきたところで症状が悪化し(整骨院の施術の問題の可能性がありました。),保険会社から打ち切りの連絡がありました。

 そのため,このタイミングで弁護士への依頼となりました。

 

当事務所の活動

打ち切りに対する対応

 まずは,治療費の支払いの延長交渉から始まりました。

 事故から相当時間が経過しており,骨折等の他覚所見もありませんでしたので,治療費の延長を求めることは非常に困難でした。

 さらに,本件の場合,整骨院での施術が原因で症状が悪化した可能性があり,客観的に見ても,加害者にそれによって追加で生じた治療費の支払いを求めることは難しい状況でした。

 それでも,交渉を行った結果,さらに2か月強の治療費の支払いに応じてもらえることになりました(保険会社によっては,一切交渉を受け付けられなかった可能性が高いです。)。

後遺症の申請

 治療終了後も,被害者の訴える症状が強かったため,自賠責保険会社に対して後遺症の申請を行うことにしました。

 本件は追突事故でしたが,後部バンパーだけでなく,内部まで損傷が及んでいたことが写真からも明らかでしたので,この写真を添付しました。

 結果として,頚椎捻挫後の症状と腰椎捻挫後の症状についてそれぞれ後遺障害等級14級9号が認定されました。

示談交渉

 治療費の件は既に交渉ができていたので,示談交渉で問題となったのは,主婦として休業損害の上乗せと慰謝料,後遺障害に関する賠償の点でした。

 主婦の休業損害については,会社員としての休業損害が既に50万円以上出ていたことから,上乗せが難しい部分でした。また,本件の場合,治療の延長の問題もあったため,この点を強硬に主張することは得策ではないと思われました。

 そのため,この部分は上乗せを求めない代わりに,その他の部分の満額の支払いを求めることにしました。

 その結果,入通院慰謝料は約108万円,後遺障害逸失利益は約81万円(労働能力喪失期間5年),後遺障害慰謝料は110万円と,いずれも裁判基準の満額(入通院慰謝料は,当初終了予定だった8か月の基準を上回る額)での支払いを受けることができました(その他に既払の治療費や休業損害等が約200万円ありました。)。

 

コメント

 本件は,相手の保険会社の対応が比較的良かったため,請求がほぼ認められましたが,いい意味で珍しい事案だったと思います。

 基本的に,怪我を「治す」という意味では,医師による治療が推奨されるところであり,整骨院の施術によって症状が悪化した可能性がある場合,しかも,治療が相当進んだ段階でそのような事態が生じた場合,相手方からの打ち切りを拒むことは非常に難しいと言わざるを得ません。

 整骨院による症状の緩和の効果や,通院のしやすさ等のメリットは否定できませんが,仮に賠償上の何らかのデメリットが生じた場合,その点は自己責任になる可能性が高いことを認識しておくべきです。

 特に,本件は後遺症について等級の認定が出たので後遺症についても補償を受けることができましたが,仮に等級が出なかった場合,その部分の補償が受けられないこととなって,大きな苦痛を伴うこととなりますので,どのような治療を受けるのがベストなのか,賠償の観点からもしっかりと検討をすることをおすすめします。

相手方からの請求に対し,逆に約204万円の支払いを受けた事案

2019-01-07

事案の概要

 事故の状況は,被害者が運転するバイクが,道路の左前方にあるコンビニエンスストアの駐車場に左折で入ろうとする車を追い抜いて道路を直進しようとしたところ,コンビニエンスストアから右折で道路に出ようとしたバイクが左前方の車の陰から出てきたため衝突したというものでした。

 そして,加害者から弁護士を通じてバイクの修理費用について時効の関係で損害賠償の請求をされたため,ご依頼となりました。

 

当事務所の活動

 本件は,被害者が骨折の傷害を負っていて,後遺症について後遺障害等級14級9号の認定を受けており,この点に関する慰謝料等が認められる事案であったため,相手方に対して賠償する分を差し引いても,逆に支払いを受けられるような事案でした。

 そのため,まずは人身に関する賠償金額を算出し,加害者側に請求することにしました。

 本件のような,コンビニ駐車場から出てきた車両と道路を直進している車両の間の過失割合は,駐車場から出る側が80%,直進している側が20%とされることが一般的です。

 しかし,本件は,直進車の前方に停車車両があったため,この点を踏まえて20%の修正を行い,加害者側は60対40を主張していました。

 本件は,加害者の過失割合に関する意向が強く,加害者側の請求に関する部分については,40%以外で和解できないような状況でした。

 他方で,この加害者側の請求は,バイクの修理費用のみで金額も比較的小さいのに対し,被害者からの請求に関しては,金額が大きいものの,支払いは相手の保険会社が行うため,それほど強くこだわっていないという事情がありました。

 また,こちらの対物保険を使った場合の保険料の増額が小さく,過失割合を修正したとしても,結局保険を使った方が経済的であったため,実質的には違いがないという特色もありました。

 そこで,早期解決のため,加害者に対する支払いについては,対物保険を使って40対60としつつ,被害者からの請求については,30対70とすることで合意することとなりました。

 その結果,約204万円の支払いを受けることで示談となりました。

 

コメント

 本件のように,前方に障害物があった場合,どちらにとって不利な事情になるのかは悩ましい問題ですが,車両の間をバイクがすり抜けようとした場合や,歩行者が車の陰から出てきて道路を横断しようとした場合,バイクや歩行者にとって不利になることから,直進車にとって不利になることも十分に考えられると思います。

 とはいっても,20%の割合での修正はやはり大きいと思われますが,物損は対物保険を利用した方が経済的なメリットがあったため,対物の過失割合にこだわって紛争を長期化させるよりも,人身でしっかりと賠償を受けて早期の解決を図ったのが本件の特徴です。

 なお,過失が大きい側の人身に関する補償は,自賠責保険の範囲内にとどまることが多いため,賠償の請求をされることはあまりありません。

 本件でも,加害者から人身に関する賠償の請求はされていませんでした。

 交通事故の解決の方法には様々なバリエーションがあるため,保険の加入状況等を見てみなければ,どのように解決を図るべきか判断しかねるような場合もありますので,自分の場合にどのような可能性があるのか,しっかりと検討することが必要です。

裁判で相手のセンターラインオーバーが認められた事案

2018-11-19

事案の概要

 事故の状況は,加害者が運転する車がセンターラインを越えて走行してきたため,被害者の車に衝突したというもので,双方とも怪我はありませんでした。

 しかし,加害者がセンターラインオーバーの事実を認めなかったため,適切に賠償が行われず,ご依頼となりました。

 

当事務所の活動

示談交渉

 本件は,センターラインオーバーの事故であったため,事実関係の証明さえできれば,通常,相手方が全額責任を負うことは明らかな事案でした。

 しかし,相手方は,弁護士介入後も一向にこの事実を認めず,双方の損害はそれぞれ自分で直すという,いわゆる「自損自弁」の見解を変えることがなかったため,やむを得ず訴訟提起を行うこととなりました。

 

裁判での活動

 本件の問題点は,センターラインオーバーを証明する決定的な証拠がないということでした。ここでいう決定的な証拠とは,それを見れば事故状況そのものがはっきりと分かるというような物的な証拠のことで,典型的なものはドライブレコーダーや防犯カメラの映像のようなものです。

 本件は,実は,事故現場を撮影した防犯カメラは存在しました。

 しかし,夜間の事故であったことに加え,相手のセンターラインオーバーの程度も大きくなく,双方のサイドミラーが接触したという程度であったため,カメラの映像ではセンターラインオーバーを確認することができませんでした。

 また,センターラインオーバーの場合,車の損傷状況からは,どちらがセンターラインを越えていたのかを判別することは困難であるため,他に有効な物的証拠を見出すことはできませんでした。

 その結果,事故後の双方当事者の対応といった間接事実によって,センターラインオーバーを証明することとなりました。

 そのため,相手の対応の何がどのようにおかしいのかを具体的に指摘した上で,当事者の経験した事実を詳細に記した「陳述書」という提出し,それをもって,裁判所に判断をしてもらうこととなりました。

 その結果,裁判所が相手方のセンターラインオーバーを認め,それを前提にこちらの請求のほぼこちらの主張どおりの和解をすることができました(和解では,早期の解決のため10%の限度で譲歩することとなりました。)。

 

コメント

 本件のように,当事者の供述のみで証明する方法は,通常かなりの困難を伴います。

 なぜなら,裁判では,どちらがより正しいかということを競うのではなく,こちらが主張したい事実について,裁判官に確信を抱かせる必要があり,しかも,裁判所は,あくまでも中立な立場で厳格に判断しなければならないため,曖昧な理由で事実を認めるわけにはいかないからです。

 そのため,一般的には,供述を元に事実を認める場合であっても,何らかの裏付けが必要となります。

 本件の場合,相手の主張で不合理な点があることが動かしがたい事実であったため,物的証拠がなかったにもかかわらず,こちらの主張が認められました。

 本件のポイントは,被害者の話をよく聞いた上で,裁判の中で相手の供述の不合理な点を明らかにするという点にありました。

 しかし,一般的には,このようなケースで勝つことは相当に難しいので,ドライブレコーダーを搭載するなどして,万が一のときのために備えておくことをおすすめします。 

足の骨折で後遺障害等級14級9号が認定された事案

2018-11-08

事案の概要

 事故の状況は,センターラインオーバーの対向車と衝突し,車の右前部が大破,エアバッグが作動したというもので,被害者は,胸や脚などを打撲し,右足を骨折するなどの怪我を負いました。

 

当事務所の活動

治療中のサポート

 本件は,治療中の段階でのご依頼でしたので,保険会社とのやり取りを弁護士が行うことで,まずは治療で身体をできるだけ元の状態に専念していただきつつ,今後の流れなどについてご説明を行いました。

 特に,後遺症が残りそうなケースであったため,どういったタイミングで後遺症とみなすことになるかといったことをご説明し,様子を見ることになりました。

後遺障害の申請

 そして,後遺症をいえるような状態となったため,医師と相談していただくことになったのですが,医師から,「後遺障害診断書は書くけど,認められないと思う。」と言われたとのことでした。

 しかし,私が見る限り,十分後遺症の認定が受けられると考えられましたので,後遺障害診断書の作成をしてもらい,自賠責保険に対して被害者請求を行いました。

支払われました。

保険会社との交渉

 本件での交渉のポイントは2つありました。1つは,被害者が主婦であったため,主婦の休業損害をどう見るかということで,もう1つは,骨折後の痛みの後遺症について,むちうちなどと同じように考えていいのかということです。

 主婦の休業損害は,金額の計算に決まりがあるわけではなく,骨折後の痛みがどの程度続くのかということも確定した考え方があるわけではないため,この設定が非常に無づかしいのです。

 相手方からは,当初,追加で約220万円を支払うという提示がされました。

 初めから弁護士が付いていたからか,極端に低い金額ではありませんでしたが,今回の事故で負った怪我の内容などからすると,やはり低いと言わざるを得ませんでした。

 そのため,改めて見解に食い違いがある点について文書で説明を行い,根気強く交渉を行った結果,最終的に300万円を支払うということで合意することとなりました。

 

コメント

 本件のように,後遺症の話を医師にした際,申請をしても認められないといった話を医師からされることが,少なからず見受けられるようです。

 しかし,医師は,自賠責上の後遺障害というものに関し,十分な知識を有しているわけではないため,その判断に誤りがあることがしばしばあります。

 これは,医師が考える「後遺症」と,自賠責保険上の「後遺障害」の概念が一致していないからだと思われます。

 自賠責のいう後遺障害は,上は常に介護を要するような重篤なものから,下は日常生活にはほとんど支障がないというものまで含まれていて,特に,下の方の等級では,深刻なものとは言い難いため,医師はこれを後遺症とまでは思わないことがあるようです。

 しかし,日常生活にほとんど支障がないといっても,現実には,痛みが気になって仕方がないといった支障が生じることがあり,この点についても賠償を受けられるか検討をすべきです。

 そして,この賠償を受けるためには,医師に後遺障害の診断書を作成してもらうことが必要ですので,認定が受けられるか否かについての医師の判断はともかく,後遺障害の認定を受ける見込みがある場合には,まずは医師に後遺障害の診断書の作成を依頼しましょう。

人身傷害保険で後遺障害等級【非該当→14級9号】となった事案

2018-09-26

事案の概要

 事故の状況は,駐車スペースに自車を停めるために対向車線に出たところ,対向車がスピードを出して接近してきたため,慌てて後退したところ,電柱に衝突したというものでした。

 対向車は走り去ってしまったことに加え,ほとんど自損事故といっていい状態だったので,自身が加入する保険会社の人身傷害保険を利用しました。

 症状が固定することとなって治療が終了したもの,後遺症が残ったため後遺症についても補償を受けるべく後遺障害診断書を保険会社に提出したところ,後遺障害は非該当ということで補償を受けられないという通知がされました。

 そこで,後遺症に関する補償(異議申し立て)について当事務所に相談に来られました。

 

当事務所の活動

方針の決定

 本件では,事故衝撃もそれなりに強く,治療の実績も十分でしたので,後遺障害の認定が出てもおかしくはありませんでした。

 ただ,非該当となるには理由があるはずで,後遺障害診断書の内容を見る限り,今後も労働能力の低下が生じるほどの症状が残存するかといわれると,決定的な事情がないのもたしかでした。

 本件の特徴として,本人の訴える症状が非常に強く,症状固定後も自費で長期にわたって通院を続けていたということがありました。

 他方で,事情があってMRI検査等を受けることはできませんでしたので,画像によってヘルニアの存在を示すことが難しいという事情がありました(XP,CTは実施)。

 弊所では,このような事情の下で異議申し立ての手続きを行うこととなりました。

 

異議申し立て手続き

 弁護士が異議申し立ての手続きを行う場合,弁護士が作成した意見書を添付して申請をすることが通例ですが,それだけでは結果が覆ることは考えにくく,何らかの医学的な証拠も併せて添付することになります。

 本件では,既に述べたように,症状固定日以降も自主的に通院を続け,それにもかかわらず症状が残ってしまったということころに特徴がありましたので,医師に新たに後遺障害診断書を作成してもらうことを提案しました。

 その際,前回以上に症状を詳しく書いてもらうことと,改めて通院をしても治癒に至っていないことを踏まえて,今後の症状の改善の見込みを書いてもらうことをお願いしました。

 そのうえで,弁護士作成の意見書では,日常生活や仕事において実際に強い支障が生じていることや,症状の改善が見られないことを強調しました。

 

異議申し立ての結果

 異議申し立ての結果,後遺障害等級14級の認定が得られ,それに伴い,約款にしたがって人身傷害保険金が支払われることとなりました。

 

コメント

 自分の怪我の治療のために自賠責保険を使うことはできませんが,人身傷害保険の場合でも,事前の認定の手続きが利用されています。

 本件でも,事前認定の手続き(に対する異議申し立て)によって,後遺障害等級14級が認められました。

 一般的に,異議申し立てによって結果を覆すことは容易なことではありません。なぜなら,審査する基準自体は同じであるため,同じ被害者について出された結果が変わることはないはずだからです(むしろ,コロコロ結果が変わる方がおかしい。)。

 そのため,異議申し立てをして結果が変わるとしたら,前回の申請時に資料に不足があったか,申請後に新たな事情が判明したといった事情が必要となります。

 今回の場合,前者について,前回の申請時に状態を十分に伝えられていなかったという事情が存在し,後者について,前回申請時からも相当数の通院を続けてもなお症状が緩和していないという事情がありましたので,結果を覆すことができました。

 逆に言うと,そういった事情がなく,ただ単に前回の結果に対する不満を述べるだけでは,まず結果が変わることはないと思います。

 異議申し立ては難しいですが,結果が変わることもありますので,上記のような事情がある場合,一度トライしてみてはいかがでしょうか。

労災と自賠責で後遺障害等級14級9号を獲得した事案

2018-09-12

事案の概要

 事故の状況は,通勤中に渋滞で停車していたところ,後続車から追突されたというもので,被害者は,外傷性頚部腰部症候群の傷害を負いました。

当事務所の活動

労災の後遺障害の申請

 事故から半年強が過ぎたところで,症状が残っていたものの症状固定の時期となりましたが,後遺症について加害者から賠償を受けるためには,自賠責保険の後遺障害の認定を受けなければなりません。

 しかし,本件は,骨折や脱臼等の他覚的異常所見があったわけではなかったことに加え,被害車両の損傷の状況から,申請をしたとしても認定を受けられる保証はありませんでした。

 そこで,本件が労災の対象となるものであったため,先に労災で後遺障害の申請をすることとしました。

 結果,労災保険で後遺障害等級14級が認定され,無事に保険給付を受け取ることができました。

自賠責の後遺障害の申請

 労災で無事後遺障害14級9号の認定が得られたため,その結果も添付したうえで自賠責保険に後遺障害の申請を行いました。

 その結果,自賠責保険でも後遺障害等級14級9号が認定され,追加で自賠責保険金を受け取ることができました。

保険会社との示談交渉

 保険会社との交渉では,すでに労災と自賠責保険から受け取った金額を差し引いて請求を行いますが,労災保険給付の中の特別支給金は控除しなくてもよいとされているため注意が必要です。

 交渉の結果,後遺障害部分は約8万円の減額となりましたが,ほぼ請求どおりの額で示談をすることができました。

 

コメント

 交通事故の被害者の場合,労災から保険給付を受ける必要はないように思われます。

 実際,100%被害者の場合で,加害者が賠償金を適切に支払ってくれれば,基本的に損害はすべて補填されますので,そういう意味では,あえて労災保険給付を受け取る必要はないかもしれません。

 ただ,労災保険給付の中には,「特別支給金」と呼ばれるものがあり,この部分については,損害の填補を目的とするものではないとして控除をする必要はないというのが裁判所の立場です(最高裁平成8年2月23日判決)。

 つまり,特別支給金分は,加害者から受ける賠償とは別に受けられることになるのです。この分のメリットは小さくありません。

 もちろん,このことを知ったうえで,労災保険給付を受けないという選択肢があってもいいと思いますが,知らなかったから申請しなかったというのであれば,やはりもったいないと思います。

 また,後遺障害の認定も,基本的に同じ基準を用いているにもかかわらず,判断が微妙な場合は一般的に労災保険の方が自賠責保険よりも認定が出やすい傾向にあるため,自賠責保険で認定が受けられるか微妙なときに,労災で認定を受けるということが考えられます。

 ただし,ここで注意しておかなければならないことは,労災で後遺障害の認定が受けられれば,必ず自賠責保険でも後遺障害の認定が受けられなければならないというわけではないということです。

 自賠責保険の後遺障害の認定は,基本的に労災保険の後遺障害の認定に準じて行われるため,基本的にその結果は一致することになります。

 しかし,両者は審査の方法が異なることに加え,自賠責保険の場合,認定が出ることで国ではなく保険会社が支払いをすることになるため判断が慎重にならざるを得ないという点で違いがあり,判断が微妙な場合は,結果が異なるということも当然あり得ます。

 それでも,基本的に同じ基準で審査されている労災保険で,各種検査が行われたうえで等級が認定されたという事実は軽視はできないので,その資料を自賠責保険への申請の際に添付するということが考えられ,実際,一度自賠責で非該当となったものが,労災の資料を添付して再申請したところ,等級が認められたということもあります。

 以上をまとめると,労災保険を使った場合のメリットとして以下の2つが挙げられます。

 ①労災保険の資料は,自賠責保険の結果を決定づけるものではないが,認定のための資料となりうる

 ②労災保険給付の中には特別支給金というものがあり,その分は賠償金とは別に受け取ることができる

 

 交通事故の賠償の際には,労災保険以外にも各種社会保険制度が関係する場合があり,それによって加害者に請求できる金額が変化することもありますので,実務上の取り扱いがどうなっているのか,きちんと把握しておくことが重要です。

後遺障害等級14級9号で,提示額0円→約83万円となった事例

2018-08-30

事案の概要

 事案は,右折待ちで停車中に,加害車両に追突されたというもので,ご相談時点で頚椎捻挫後の頚部痛・右上肢しびれの症状について被害者請求で後遺障害等級14級9号が認定されていましたが,相手方保険会社から,自賠責の認定額以上に支払うものはないとして,追加の賠償金0円の提示を受けていました。

 

当事務所の活動

 本件は,元々後遺障害非該当だったものを,過去に事故歴があった被害者本人が異議申立て手続きを行って14級9号を獲得したというものでした。

 そして,事故の直前に職を変わるなどしていたため,確実に安定した収入を認定するのが難しいという問題がありました。

 このような理由から,保険会社は,自賠責保険金以上のものを支払うことはできないと主張していました。

 しかし,事故後の仕事の状況や現在の裁判実務等について根気強く説明して交渉した結果,約83万円で示談とすることができました。

 

コメント

 通常,むちうち症で後遺障害等級14級9号が認定された場合,後遺傷害部分に関する賠償交渉で問題になることはさほど多くありません。

 まず,後遺障害の慰謝料は,裁判実務上,後遺障害等級に応じて定額が支払われることがほぼ定着しているといってよく,入通院慰謝料のように人によって幅が出ることもあまりないので,争いの余地はほとんどありません。

 後遺障害逸失利益は,一般的には①基礎収入,②労働能力喪失率,③労働能力喪失期間が問題となります。

 ①は,年度ごとの収入の増減が激しいとか会社役員等でなければ,事故前年の収入を示せばよいので,それほど問題になりません。

 ②は,後遺障害等級が労働能力喪失率に見合っていないのではないかという疑義がある一部の後遺障害を除けば,ほとんど問題になりません。

 ③は,むちうち症で14級9号の場合は,裁判実務上,5年とすることが定着してきていますので,他の費目との兼ね合いもありますが,大きな乖離が出ることは多くありません。

 

 本件の場合,過去に事故歴があったことや事故前の就労の実績が十分でなかったことが,相手が支払いを躊躇した理由だったようです。

 本件では,結果的に賠償金を獲得することができましたが,事故歴が多く,その他に通常のケースと異なる点がある場合,相手方から問題視される可能性があります。

 そのような場合,交渉の難易度は他のケースと比較して高くなりますので,事故歴が多い方は,必要以上に仕事を休まない・不要な通院を繰り返さないといった点等を特に気を付けてください。

後遺障害診断書の訂正で10級10号・約1800万円を獲得した事例

2018-08-14

事案の概要

 事案は,青信号で道路を横断中,右折してきた車が衝突してきたというもので,被害者は右橈骨粉砕骨折の重傷を負いました。

 

当事務所の活動

 ご相談に来られた時点で治療は終盤となっていましたが,可動域制限が残り,改善の見込みもないということでしたので,後遺症の問題がありました。

 

後遺障害診断書の作成

 後遺障害の申請に当たって,まずは主治医に後遺障害診断書の作成を依頼することとなりました。

 私がご相談時に被害者に状態を直接確認した際,手首が通常の半分も曲がらず,しかもそれが痛みによるものではなく,物理的に無理ということでしたので,後遺障害等級10級10号が見込まれると判断していました。

 ところが,出来上がった後遺障害診断書を見ると,患側(けがをした方)の可動域と健側(けがをしていない方)の可動域を比較したときに,患側の可動域が健側よりも制限されているとはいえ,3分の2程度は曲がるという結果になっていました。

 この場合,認定される後遺障害等級は12級6号となり,想定していた後遺障害等級とは異なります。

 手や足など,身体の左右があるものの可動域制限に関する後遺障害等級は,原則としてけがをした方とけがをしていない方の可動域を比較することによって等級が認定されるのです。

後遺障害診断書の訂正

 どうして想定と異なる結果となったのか,よくよく後遺障害診断書を確認してみると,左手(けがをしていない方)の可動域が健康な人よりも制限されていることになっていることが分かりました。

 そこで,左手もあまり曲がらないのか被害者に確認してみると,全く問題なく曲がるということだったので,この点に記載の誤りがあることが分かりました。

 そのため,この点について後遺障害診断書を作成した主治医に訂正してもらう必要が生じましたので,弁護士が同行して,再度左手の可動域を計測し,正しい値を後遺障害診断書に記入してもらうことができました。

 医師によると,完全に誤りだったということでした。

 そして,訂正された自賠責保険会社に提出したところ,無事後遺障害等級10級10号が認定され,自賠責保険金461万円が支払われました。

示談交渉

 被害者は,兼業主婦の方だったのですが,それまでに休業損害として支払われていたのはパートの仕事に関するものだけでした。

 そこで,休業損害について家事労働の点を踏まえて再計算したものを請求しました。

 後遺障害部分については,逸失利益は家事労働をベースに就労可能年限まで,慰謝料は裁判基準で請求を行いました。

 その結果,休業損害の額は約2倍になり,後遺障害に関する賠償は裁判基準の満額で示談することができ,自賠責保険金と合わせて約1800万円が追加で支払われることとなりました。

コメント

 本件は,後遺障害診断書の記載に誤りがあったという事案で,しかも,けがをした部分に関する記載の誤りではなく,健康な部分に関する記載に誤りがあったというもので,誤りに気付きにくい事案でした。

 医師は,日々大量の患者さんを診察する中で後遺障害診断書の作成を行いますので,ときとして誤りを記入してしまうことがあります。

 その場合,誤りを正すのは被害者が自ら行わなければなりません。

 そして,本件のようなケースで左手側の記入ミスが後遺障害等級との関係で問題になることに気付くには,後遺障害等級が健側と患側の比較によって決まるということを最低限知っておく必要があります。

 私は,後遺障害の申請が被害者請求なのか事前認定なのかによって結果が大きく変わることはないと基本的に考えていますが,本件のように,後遺障害診断書を漫然と保険会社に提出するだけでは適切に補償を受けられないことがあることを改めて認識させられました。

 また,本件で被害者は,医師から後遺障害の認定は受けられないだろうという話をされていたそうです。他の被害者の方からも,このように言われたという話を聞くことがあります。

 しかし,損害賠償上の後遺障害は,医師が想定しているものと必ずしも一致しません。

 そのため,医師にこのように説明されたときでも,後遺症が気になる場合は,後遺障害の認定が受けられるかどうか弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士による示談交渉の役割

2018-07-27

 このサイトをご覧になっている方は,交通事故に遭って,何らかの点でお困りで,情報を探されている方だと思います。

 しかし,弁護士が間に入って交渉する必要がそもそもあるのか疑問に思われる方も多いのではないでしょうか?

 そこで,弁護士による示談交渉がどういった場面で必要になるのか,簡単な事例にして説明します。

 

慰謝料の交渉の場合

 治療が終わると,慰謝料の支払いを受けて示談という場面になりますが,この慰謝料の交渉について考えてみます。

 このとき,相手から例えば「あなたの慰謝料は50万円です。」と言われたときに,あなたはそれが適切かどうか判断できるでしょうか?

 慰謝料とは,端的に言うと,精神的な苦痛に対する賠償で,精神的な苦痛にかかわるあらゆる事情が考慮されて決定されるものです。

 当然,この判断は難しいので,当事者間で話し合いをする場合,ある程度の幅を持った金額とならざるを得ず,裁判になれば,裁判所は最終的な金額を判定しなければならない立場なので「65万円」などと金額をきっちり決められますが,この金額は裁判をして初めて確定するものです。

 そのため,裁判をせずに早期に示談で解決しようと思えば,先の例でいうと,「正確なところは分からないものの,50万円から70万円の間と考えられるので,この範囲で妥当なところ」で示談金額を決めていかなければなりません。

 

保険会社の立場になって考える

 ここで,保険会社の立場で考えていただきたいのですが,金額が50万円~70万円と予想されるときに,70万円を支払うでしょうか?

 保険会社はビジネスで保険金の支払いをしているので,50万円の可能性もあるのに上限の70万円を支払うということは通常あり得ないということが分かるでしょう。

 むしろ,できるだけ下限の50万円で済ませようとするはずです(ケースによってどの程度下げてくるかは差がありますが,少なくとも上限の金額をすすんで払うというケースは,少なくとも私は見たことがありません。)。

 しかし,逆に下限の金額であるとすれば,裁判をすれば金額が上がる可能性が非常に高いので,言い換えると,その金額で示談すると被害者が損をする可能性が高いです。

 そのため,この金額をできる限り適正な金額に近づける必要があります。

 

実際に交渉をする

 保険会社の提示する金額が基本的に低いことが分かったところで,次に交渉です。

 ここで,あなたが,「50万円では納得できない60万円払ってほしい」と言ったとします。

 これに対して,保険会社から,「うちの計算では50万円なので,これ以上払えない。」と言って譲らなかったら,どうしますか?

 保険会社が自社の見解を持つのはもちろん自由なので,これを覆すためには,相応の根拠を示さなければなりません。

 具体的には,こちらから「過去のデータや文献ではこうなっているので,これだけは支払わないといけないはずだ。」などとして説得していく必要があります。

 

それでも効果が出なかった場合は?

 こうなってしまっては,話し合いでは解決できないので,裁判などの特別な手続きを踏む必要がありますが,この手続きは一言でいうと非常に面倒で時間と手間がかかる手続きです。

 

弁護士の役割

 こういったことを一人でやり切れるという場合は,弁護士は不要です。

 しかし,一般的に上記のようなことをご自身でやろうとするのは困難ですので,これをご本人に代わって行うのが弁護士です。

 特に,交通事故に強い弁護士であれば,データや知識を豊富に持っているので,このようなことをスムーズに行うことが期待できます。実際には,裁判までいかずに,話し合いで解決に至る場合も多いでしょう。

 紹介した事例は慰謝料の増額の件ですが,その他にも休業損害の補償,逸失利益の交渉等,さまざまな場面で同じようなことが起こり得ます。

 それらを適切な形で解決していくのが,我々弁護士による示談交渉の役割なのです。

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