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裁判で相手のセンターラインオーバーが認められた事案

2018-11-19

事案の概要

 事故の状況は,加害者が運転する車がセンターラインを越えて走行してきたため,被害者の車に衝突したというもので,双方とも怪我はありませんでした。

 しかし,加害者がセンターラインオーバーの事実を認めなかったため,適切に賠償が行われず,ご依頼となりました。

 

当事務所の活動

示談交渉

 本件は,センターラインオーバーの事故であったため,事実関係の証明さえできれば,通常,相手方が全額責任を負うことは明らかな事案でした。

 しかし,相手方は,弁護士介入後も一向にこの事実を認めず,双方の損害はそれぞれ自分で直すという,いわゆる「自損自弁」の見解を変えることがなかったため,やむを得ず訴訟提起を行うこととなりました。

 

裁判での活動

 本件の問題点は,センターラインオーバーを証明する決定的な証拠がないということでした。ここでいう決定的な証拠とは,それを見れば事故状況そのものがはっきりと分かるというような物的な証拠のことで,典型的なものはドライブレコーダーや防犯カメラの映像のようなものです。

 本件は,実は,事故現場を撮影した防犯カメラは存在しました。

 しかし,夜間の事故であったことに加え,相手のセンターラインオーバーの程度も大きくなく,双方のサイドミラーが接触したという程度であったため,カメラの映像ではセンターラインオーバーを確認することができませんでした。

 また,センターラインオーバーの場合,車の損傷状況からは,どちらがセンターラインを越えていたのかを判別することは困難であるため,他に有効な物的証拠を見出すことはできませんでした。

 その結果,事故後の双方当事者の対応といった間接事実によって,センターラインオーバーを証明することとなりました。

 そのため,相手の対応の何がどのようにおかしいのかを具体的に指摘した上で,当事者の経験した事実を詳細に記した「陳述書」という提出し,それをもって,裁判所に判断をしてもらうこととなりました。

 その結果,裁判所が相手方のセンターラインオーバーを認め,それを前提にこちらの請求のほぼこちらの主張どおりの和解をすることができました(和解では,早期の解決のため10%の限度で譲歩することとなりました。)。

 

コメント

 本件のように,当事者の供述のみで証明する方法は,通常かなりの困難を伴います。

 なぜなら,裁判では,どちらがより正しいかということを競うのではなく,こちらが主張したい事実について,裁判官に確信を抱かせる必要があり,しかも,裁判所は,あくまでも中立な立場で厳格に判断しなければならないため,曖昧な理由で事実を認めるわけにはいかないからです。

 そのため,一般的には,供述を元に事実を認める場合であっても,何らかの裏付けが必要となります。

 本件の場合,相手の主張で不合理な点があることが動かしがたい事実であったため,物的証拠がなかったにもかかわらず,こちらの主張が認められました。

 本件のポイントは,被害者の話をよく聞いた上で,裁判の中で相手の供述の不合理な点を明らかにするという点にありました。

 しかし,一般的には,このようなケースで勝つことは相当に難しいので,ドライブレコーダーを搭載するなどして,万が一のときのために備えておくことをおすすめします。 

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足の骨折で後遺障害等級14級9号が認定された事案

2018-11-08

事案の概要

 事故の状況は,センターラインオーバーの対向車と衝突し,車の右前部が大破,エアバッグが作動したというもので,被害者は,胸や脚などを打撲し,右足を骨折するなどの怪我を負いました。

 

当事務所の活動

治療中のサポート

 本件は,治療中の段階でのご依頼でしたので,保険会社とのやり取りを弁護士が行うことで,まずは治療で身体をできるだけ元の状態に専念していただきつつ,今後の流れなどについてご説明を行いました。

 特に,後遺症が残りそうなケースであったため,どういったタイミングで後遺症とみなすことになるかといったことをご説明し,様子を見ることになりました。

後遺障害の申請

 そして,後遺症をいえるような状態となったため,医師と相談していただくことになったのですが,医師から,「後遺障害診断書は書くけど,認められないと思う。」と言われたとのことでした。

 しかし,私が見る限り,十分後遺症の認定が受けられると考えられましたので,後遺障害診断書の作成をしてもらい,自賠責保険に対して被害者請求を行いました。

支払われました。

保険会社との交渉

 本件での交渉のポイントは2つありました。1つは,被害者が主婦であったため,主婦の休業損害をどう見るかということで,もう1つは,骨折後の痛みの後遺症について,むちうちなどと同じように考えていいのかということです。

 主婦の休業損害は,金額の計算に決まりがあるわけではなく,骨折後の痛みがどの程度続くのかということも確定した考え方があるわけではないため,この設定が非常に無づかしいのです。

 相手方からは,当初,追加で約220万円を支払うという提示がされました。

 初めから弁護士が付いていたからか,極端に低い金額ではありませんでしたが,今回の事故で負った怪我の内容などからすると,やはり低いと言わざるを得ませんでした。

 そのため,改めて見解に食い違いがある点について文書で説明を行い,根気強く交渉を行った結果,最終的に300万円を支払うということで合意することとなりました。

 

コメント

 本件のように,後遺症の話を医師にした際,申請をしても認められないといった話を医師からされることが,少なからず見受けられるようです。

 しかし,医師は,自賠責上の後遺障害というものに関し,十分な知識を有しているわけではないため,その判断に誤りがあることがしばしばあります。

 これは,医師が考える「後遺症」と,自賠責保険上の「後遺障害」の概念が一致していないからだと思われます。

 自賠責のいう後遺障害は,上は常に介護を要するような重篤なものから,下は日常生活にはほとんど支障がないというものまで含まれていて,特に,下の方の等級では,深刻なものとは言い難いため,医師はこれを後遺症とまでは思わないことがあるようです。

 しかし,日常生活にほとんど支障がないといっても,現実には,痛みが気になって仕方がないといった支障が生じることがあり,この点についても賠償を受けられるか検討をすべきです。

 そして,この賠償を受けるためには,医師に後遺障害の診断書を作成してもらうことが必要ですので,認定が受けられるか否かについての医師の判断はともかく,後遺障害の認定を受ける見込みがある場合には,まずは医師に後遺障害の診断書の作成を依頼しましょう。

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人身傷害保険で後遺障害等級【非該当→14級9号】となった事案

2018-09-26

事案の概要

 事故の状況は,駐車スペースに自車を停めるために対向車線に出たところ,対向車がスピードを出して接近してきたため,慌てて後退したところ,電柱に衝突したというものでした。

 対向車は走り去ってしまったことに加え,ほとんど自損事故といっていい状態だったので,自身が加入する保険会社の人身傷害保険を利用しました。

 症状が固定することとなって治療が終了したもの,後遺症が残ったため後遺症についても補償を受けるべく後遺障害診断書を保険会社に提出したところ,後遺障害は非該当ということで補償を受けられないという通知がされました。

 そこで,後遺症に関する補償(異議申し立て)について当事務所に相談に来られました。

 

当事務所の活動

方針の決定

 本件では,事故衝撃もそれなりに強く,治療の実績も十分でしたので,後遺障害の認定が出てもおかしくはありませんでした。

 ただ,非該当となるには理由があるはずで,後遺障害診断書の内容を見る限り,今後も労働能力の低下が生じるほどの症状が残存するかといわれると,決定的な事情がないのもたしかでした。

 本件の特徴として,本人の訴える症状が非常に強く,症状固定後も自費で長期にわたって通院を続けていたということがありました。

 他方で,事情があってMRI検査等を受けることはできませんでしたので,画像によってヘルニアの存在を示すことが難しいという事情がありました(XP,CTは実施)。

 弊所では,このような事情の下で異議申し立ての手続きを行うこととなりました。

 

異議申し立て手続き

 弁護士が異議申し立ての手続きを行う場合,弁護士が作成した意見書を添付して申請をすることが通例ですが,それだけでは結果が覆ることは考えにくく,何らかの医学的な証拠も併せて添付することになります。

 本件では,既に述べたように,症状固定日以降も自主的に通院を続け,それにもかかわらず症状が残ってしまったということころに特徴がありましたので,医師に新たに後遺障害診断書を作成してもらうことを提案しました。

 その際,前回以上に症状を詳しく書いてもらうことと,改めて通院をしても治癒に至っていないことを踏まえて,今後の症状の改善の見込みを書いてもらうことをお願いしました。

 そのうえで,弁護士作成の意見書では,日常生活や仕事において実際に強い支障が生じていることや,症状の改善が見られないことを強調しました。

 

異議申し立ての結果

 異議申し立ての結果,後遺障害等級14級の認定が得られ,それに伴い,約款にしたがって人身傷害保険金が支払われることとなりました。

 

コメント

 自分の怪我の治療のために自賠責保険を使うことはできませんが,人身傷害保険の場合でも,事前の認定の手続きが利用されています。

 本件でも,事前認定の手続き(に対する異議申し立て)によって,後遺障害等級14級が認められました。

 一般的に,異議申し立てによって結果を覆すことは容易なことではありません。なぜなら,審査する基準自体は同じであるため,同じ被害者について出された結果が変わることはないはずだからです(むしろ,コロコロ結果が変わる方がおかしい。)。

 そのため,異議申し立てをして結果が変わるとしたら,前回の申請時に資料に不足があったか,申請後に新たな事情が判明したといった事情が必要となります。

 今回の場合,前者について,前回の申請時に状態を十分に伝えられていなかったという事情が存在し,後者について,前回申請時からも相当数の通院を続けてもなお症状が緩和していないという事情がありましたので,結果を覆すことができました。

 逆に言うと,そういった事情がなく,ただ単に前回の結果に対する不満を述べるだけでは,まず結果が変わることはないと思います。

 異議申し立ては難しいですが,結果が変わることもありますので,上記のような事情がある場合,一度トライしてみてはいかがでしょうか。

労災と自賠責で後遺障害等級14級9号を獲得した事案

2018-09-12

事案の概要

 事故の状況は,通勤中に渋滞で停車していたところ,後続車から追突されたというもので,被害者は,外傷性頚部腰部症候群の傷害を負いました。

当事務所の活動

労災の後遺障害の申請

 事故から半年強が過ぎたところで,症状が残っていたものの症状固定の時期となりましたが,後遺症について加害者から賠償を受けるためには,自賠責保険の後遺障害の認定を受けなければなりません。

 しかし,本件は,骨折や脱臼等の他覚的異常所見があったわけではなかったことに加え,被害車両の損傷の状況から,申請をしたとしても認定を受けられる保証はありませんでした。

 そこで,本件が労災の対象となるものであったため,先に労災で後遺障害の申請をすることとしました。

 結果,労災保険で後遺障害等級14級が認定され,無事に保険給付を受け取ることができました。

自賠責の後遺障害の申請

 労災で無事後遺障害14級9号の認定が得られたため,その結果も添付したうえで自賠責保険に後遺障害の申請を行いました。

 その結果,自賠責保険でも後遺障害等級14級9号が認定され,追加で自賠責保険金を受け取ることができました。

保険会社との示談交渉

 保険会社との交渉では,すでに労災と自賠責保険から受け取った金額を差し引いて請求を行いますが,労災保険給付の中の特別支給金は控除しなくてもよいとされているため注意が必要です。

 交渉の結果,後遺障害部分は約8万円の減額となりましたが,ほぼ請求どおりの額で示談をすることができました。

 

コメント

 交通事故の被害者の場合,労災から保険給付を受ける必要はないように思われます。

 実際,100%被害者の場合で,加害者が賠償金を適切に支払ってくれれば,基本的に損害はすべて補填されますので,そういう意味では,あえて労災保険給付を受け取る必要はないかもしれません。

 ただ,労災保険給付の中には,「特別支給金」と呼ばれるものがあり,この部分については,損害の填補を目的とするものではないとして控除をする必要はないというのが裁判所の立場です(最高裁平成8年2月23日判決)。

 つまり,特別支給金分は,加害者から受ける賠償とは別に受けられることになるのです。この分のメリットは小さくありません。

 もちろん,このことを知ったうえで,労災保険給付を受けないという選択肢があってもいいと思いますが,知らなかったから申請しなかったというのであれば,やはりもったいないと思います。

 また,後遺障害の認定も,基本的に同じ基準を用いているにもかかわらず,判断が微妙な場合は一般的に労災保険の方が自賠責保険よりも認定が出やすい傾向にあるため,自賠責保険で認定が受けられるか微妙なときに,労災で認定を受けるということが考えられます。

 ただし,ここで注意しておかなければならないことは,労災で後遺障害の認定が受けられれば,必ず自賠責保険でも後遺障害の認定が受けられなければならないというわけではないということです。

 自賠責保険の後遺障害の認定は,基本的に労災保険の後遺障害の認定に準じて行われるため,基本的にその結果は一致することになります。

 しかし,両者は審査の方法が異なることに加え,自賠責保険の場合,認定が出ることで国ではなく保険会社が支払いをすることになるため判断が慎重にならざるを得ないという点で違いがあり,判断が微妙な場合は,結果が異なるということも当然あり得ます。

 それでも,基本的に同じ基準で審査されている労災保険で,各種検査が行われたうえで等級が認定されたという事実は軽視はできないので,その資料を自賠責保険への申請の際に添付するということが考えられ,実際,一度自賠責で非該当となったものが,労災の資料を添付して再申請したところ,等級が認められたということもあります。

 以上をまとめると,労災保険を使った場合のメリットとして以下の2つが挙げられます。

 ①労災保険の資料は,自賠責保険の結果を決定づけるものではないが,認定のための資料となりうる

 ②労災保険給付の中には特別支給金というものがあり,その分は賠償金とは別に受け取ることができる

 

 交通事故の賠償の際には,労災保険以外にも各種社会保険制度が関係する場合があり,それによって加害者に請求できる金額が変化することもありますので,実務上の取り扱いがどうなっているのか,きちんと把握しておくことが重要です。

弁護士に依頼すべき理由はこちら→「なぜ弁護士に交渉を依頼すべきか」

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後遺障害等級14級9号で,提示額0円→約83万円となった事例

2018-08-30

事案の概要

 事案は,右折待ちで停車中に,加害車両に追突されたというもので,ご相談時点で頚椎捻挫後の頚部痛・右上肢しびれの症状について被害者請求で後遺障害等級14級9号が認定されていましたが,相手方保険会社から,自賠責の認定額以上に支払うものはないとして,追加の賠償金0円の提示を受けていました。

 

当事務所の活動

 本件は,元々後遺障害非該当だったものを,過去に事故歴があった被害者本人が異議申立て手続きを行って14級9号を獲得したというものでした。

 そして,事故の直前に職を変わるなどしていたため,確実に安定した収入を認定するのが難しいという問題がありました。

 このような理由から,保険会社は,自賠責保険金以上のものを支払うことはできないと主張していました。

 しかし,事故後の仕事の状況や現在の裁判実務等について根気強く説明して交渉した結果,約83万円で示談とすることができました。

 

コメント

 通常,むちうち症で後遺障害等級14級9号が認定された場合,後遺傷害部分に関する賠償交渉で問題になることはさほど多くありません。

 まず,後遺障害の慰謝料は,裁判実務上,後遺障害等級に応じて定額が支払われることがほぼ定着しているといってよく,入通院慰謝料のように人によって幅が出ることもあまりないので,争いの余地はほとんどありません。

 後遺障害逸失利益は,一般的には①基礎収入,②労働能力喪失率,③労働能力喪失期間が問題となります。

 ①は,年度ごとの収入の増減が激しいとか会社役員等でなければ,事故前年の収入を示せばよいので,それほど問題になりません。

 ②は,後遺障害等級が労働能力喪失率に見合っていないのではないかという疑義がある一部の後遺障害を除けば,ほとんど問題になりません。

 ③は,むちうち症で14級9号の場合は,裁判実務上,5年とすることが定着してきていますので,他の費目との兼ね合いもありますが,大きな乖離が出ることは多くありません。

 

 本件の場合,過去に事故歴があったことや事故前の就労の実績が十分でなかったことが,相手が支払いを躊躇した理由だったようです。

 本件では,結果的に賠償金を獲得することができましたが,事故歴が多く,その他に通常のケースと異なる点がある場合,相手方から問題視される可能性があります。

 そのような場合,交渉の難易度は他のケースと比較して高くなりますので,事故歴が多い方は,必要以上に仕事を休まない・不要な通院を繰り返さないといった点等を特に気を付けてください。

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可動域制限角度の後遺障害診断書の訂正で10級10号・約1800万円を獲得した事例

2018-08-14

事案の概要

 事案は,青信号で道路を横断中,右折してきた車が衝突してきたというもので,被害者は右橈骨粉砕骨折の重傷を負いました。

当事務所の活動

 ご相談に来られた時点で治療は終盤となっていましたが,可動域制限が残り,改善の見込みもないということでしたので,後遺症の問題がありました。

後遺障害診断書の作成

 後遺障害の申請に当たって,まずは主治医に後遺障害診断書の作成を依頼することとなりました。

 私がご相談時に被害者に状態を直接確認した際,手首が通常の半分も曲がらず,しかもそれが痛みによるものではなく,物理的に無理ということでしたので,後遺障害等級10級10号が見込まれると判断していました。

 ところが,出来上がった後遺障害診断書を見ると,患側(けがをした方)の可動域と健側(けがをしていない方)の可動域を比較したときに,患側の可動域が健側よりも制限されているとはいえ,3分の2程度は曲がるという結果になっていました。

 この場合,認定される後遺障害等級は12級6号となり,想定していた後遺障害等級とは異なります。

 手や足など、身体の左右があるものの可動域制限に関する後遺障害等級は、原則としてけがをした方とけがをしていない方の可動域を比較し、制限の割合がどの程度になっているかによって等級が認定されるのです。例えば、主要運動の可動域が、健側100度、患側50度であれば、患側の可動域が健側に対して2分の1に制限されているということになり、この割合で等級が振り分けられます。

後遺障害診断書の訂正

 どうして想定と異なる結果となったのか、よくよく後遺障害診断書を確認してみると,左手(けがをしていない方)の可動域が健康な人よりも制限されていることになっていることが分かりました。

 上で説明したように、後遺障害等級の振り分けは、左右の可動域を比較して行われますので、けがをしていない方も元々可動域が制限されていたとなれば、左右差が小さくなり、認定される等級も低いものとなります。

 そこで,左手もあまり曲がらないのか被害者に確認してみると,全く問題なく曲がるということだったので,この点に記載の誤りがあることが分かりました。

 そのため,この点について後遺障害診断書を作成した主治医に訂正してもらう必要が生じましたので,弁護士が病院に同行して医師に事情を説明し,再度左手の可動域を計測して正しい値を後遺障害診断書に記入してもらうことができました。

 記載が変わってしまったことを医師に尋ねると、完全に誤りだったということでした。

 そして,訂正された自賠責保険会社に提出したところ,無事に後遺障害等級10級10号が認定され,自賠責保険金461万円が支払われました。

示談交渉

 被害者は,兼業主婦の方だったのですが,それまでに休業損害として支払われていたのはパートの仕事に関するものだけでした。

 そこで,休業損害について家事労働の点を踏まえて再計算したものを請求しました。

 後遺障害部分については,逸失利益は家事労働をベースに就労可能年限まで,慰謝料は裁判基準で請求を行いました。

 その結果,休業損害の額は約2倍になり,後遺障害に関する賠償は裁判基準の満額で示談することができ,自賠責保険金と合わせて約1800万円が追加で支払われることとなりました。

コメント

 本件は,後遺障害診断書の記載に誤りがあったという事案で,しかも,けがをした部分に関する記載の誤りではなく,健康な部分に関する記載に誤りがあったというもので,誤りに気付きにくい事案でした。

 医師は,日々大量の患者さんを診察する中で後遺障害診断書の作成を行いますので,ときとして誤りを記入してしまうことがあります。

 その場合,誤りを正すのは被害者が自ら行わなければなりません。

 そして,本件のようなケースで左手側の記入ミスが後遺障害等級との関係で問題になることに気付くには,後遺障害等級が健側と患側の比較によって決まるということを最低限知っておく必要があります。

 私は,後遺障害の申請が被害者請求なのか事前認定なのかによって結果が大きく変わることはないと基本的に考えていますが,本件のように,後遺障害診断書を漫然と保険会社に提出するだけでは適切に補償を受けられないことがあることを改めて認識させられました。

 また,本件で被害者は,医師から後遺障害の認定は受けられないだろうという話をされていたそうです。後遺障害認定が見込まれる他の被害者の方からも,このように医師から言われたという話を聞くことがあります。

 しかし,損害賠償上の後遺障害は,医師が想定しているものと必ずしも一致しません。また、後遺障害認定は医師が行うものでもありません。

 そのため,医師にこのように説明されたときでも鵜呑みにせず,後遺症が気になる場合は,後遺障害の認定が受けられるかどうか弁護士にご相談されることをおすすめします。

夏季休暇のお知らせ

2018-08-10

拝啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて,誠に勝手ながら弊所では下記の期間を休業とさせていただきます。
 ご迷惑をおかけしますが、ご了承のほどお願い申し上げます。

休暇期間

平成30年8月15日(水)・平成30年8月16日(木)

弁護士による示談交渉の役割

2018-07-27

 このサイトをご覧になっている方は,交通事故に遭って,何らかの点でお困りで,情報を探されている方だと思います。

 しかし,弁護士が間に入って交渉する必要がそもそもあるのか疑問に思われる方も多いのではないでしょうか?

 そこで,弁護士による示談交渉がどういった場面で必要になるのか,簡単な事例にして説明します。

 

慰謝料の交渉の場合

 治療が終わると,慰謝料の支払いを受けて示談という場面になりますが,この慰謝料の交渉について考えてみます。

 このとき,相手から例えば「あなたの慰謝料は50万円です。」と言われたときに,あなたはそれが適切かどうか判断できるでしょうか?

 慰謝料とは,端的に言うと,精神的な苦痛に対する賠償で,精神的な苦痛にかかわるあらゆる事情が考慮されて決定されるものです。

 当然,この判断は難しいので,当事者間で話し合いをする場合,ある程度の幅を持った金額とならざるを得ず,裁判になれば,裁判所は最終的な金額を判定しなければならない立場なので「65万円」などと金額をきっちり決められますが,この金額は裁判をして初めて確定するものです。

 そのため,裁判をせずに早期に示談で解決しようと思えば,先の例でいうと,「正確なところは分からないものの,50万円から70万円の間と考えられるので,この範囲で妥当なところ」で示談金額を決めていかなければなりません。

 

保険会社の立場になって考える

 ここで,保険会社の立場で考えていただきたいのですが,金額が50万円~70万円と予想されるときに,70万円を支払うでしょうか?

 保険会社はビジネスで保険金の支払いをしているので,50万円の可能性もあるのに上限の70万円を支払うということは通常あり得ないということが分かるでしょう。

 むしろ,できるだけ下限の50万円で済ませようとするはずです(ケースによってどの程度下げてくるかは差がありますが,少なくとも上限の金額をすすんで払うというケースは,少なくとも私は見たことがありません。)。

 しかし,逆に下限の金額であるとすれば,裁判をすれば金額が上がる可能性が非常に高いので,言い換えると,その金額で示談すると被害者が損をする可能性が高いです。

 そのため,この金額をできる限り適正な金額に近づける必要があります。

 

実際に交渉をする

 保険会社の提示する金額が基本的に低いことが分かったところで,次に交渉です。

 ここで,あなたが,「50万円では納得できない60万円払ってほしい」と言ったとします。

 これに対して,保険会社から,「うちの計算では50万円なので,これ以上払えない。」と言って譲らなかったら,どうしますか?

 保険会社が自社の見解を持つのはもちろん自由なので,これを覆すためには,相応の根拠を示さなければなりません。

 具体的には,こちらから「過去のデータや文献ではこうなっているので,これだけは支払わないといけないはずだ。」などとして説得していく必要があります。

 

それでも効果が出なかった場合は?

 こうなってしまっては,話し合いでは解決できないので,裁判などの特別な手続きを踏む必要がありますが,この手続きは一言でいうと非常に面倒で時間と手間がかかる手続きです。

 

弁護士の役割

 こういったことを一人でやり切れるという場合は,弁護士は不要です。

 しかし,一般的に上記のようなことをご自身でやろうとするのは困難ですので,これをご本人に代わって行うのが弁護士です。

 特に,交通事故に強い弁護士であれば,データや知識を豊富に持っているので,このようなことをスムーズに行うことが期待できます。実際には,裁判までいかずに,話し合いで解決に至る場合も多いでしょう。

 紹介した事例は慰謝料の増額の件ですが,その他にも休業損害の補償,逸失利益の交渉等,さまざまな場面で同じようなことが起こり得ます。

 それらを適切な形で解決していくのが,我々弁護士による示談交渉の役割なのです。

後遺障害等級12級で当初約960万円の提示から約1580万円に増額した事例

2018-07-17

事案の概要

 本件は,バイクと車の出合い頭の交通事故で,骨折等の傷害を負い,後遺症に後遺障害等級12級加害者側に弁護士がついていて,示談金額の提示が既にされていたという事案でした。

当事務所の活動

本件の特徴

 本件は,被害者に過失があると見込まれる事案で,相手方の弁護士から提示された金額も決して低いものではなかったため,通常の交渉ではそれほど増額が見込める事案ではありませんでした。

 しかし,本件は,人身傷害保険が利用できる事案でもあり,この点に特徴がありました。

人身傷害保険

 人身傷害保険とは,被害者の過失の程度にかかわらず,原則として被害者に生じた損害を補填するということを目的とするもので,金額の算定は,保険会社が独自に設定している基準に基づいて行われます。

 そして,この基準は,裁判所で認められる実際の損害額よりも低いことが通例です。

 そのため,加害者がいる場合には,この保険を使うメリットはあまりありません。

 しかし,被害者に過失がある場合は,保険会社の基準の限度で,過失分の埋め合わせをできるという性質もあるというのがこの保険の隠されたメリットです。

 そこで,この保険を最大限活用し,過失分も含めて損害を完全に填補することを目標に活動を行いました。

保険金の支払い

 本件では,上記の方針に従って,まず人身傷害保険金について保険会社から約1100万円の支払いを受けることとしました。

訴訟の提起

 次に,この人身傷害保険金は,すでに述べたとおり保険会社の基準に従って金額が決まるため,実際の損害額よりも不足していたことから,この不足分について加害者に対して請求する訴訟を提起しました。

 詳細は割愛しますが,上記のメリットを活かすためには,人身傷害保険の保険会社が,支払った保険金について,全額を加害者に対して求償するということを防ぐ必要があります。

 そのために,通常,裁判手続きで全体の損害額を確定する必要があるのです。

 この訴訟の中では,逸失利益の額等が争われることになったのですが,関連する裁判例を参考にしつつ反論し,結果として遅延損害金等を含めて,約480万円が支払われることで和解することとなりました。

 その結果,人身傷害保険金を含めると,当初の金額の約960万円から約1580万円と約620万円の増額となりました。

コメント

 本件は,人身傷害保険を利用することで,結果として被害者の過失分も含めて賠償金の回収を行うことができましたが,このような保険の仕組みは,人身傷害保険の保険会社の担当者も十分に理解していないことが多いです。

 また,上記のような事情もあって,人身傷害保険を十分に活かすためには,基本的に裁判を行って全体の損害額を確定する必要がありますが,この裁判はかなり難しいため,ご自身で行うことは非常に困難なものとなります。

 人身傷害保険を利用できる場合は,特に交通事故に強い弁護士のサポートがなければきちんと補償を受けることは困難ですので,まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼すべき理由はこちら→「なぜ弁護士に交渉を依頼すべきか」

ご依頼の場合の料金はこちら→「弁護士費用」

 

後遺障害分の請求が満額認められた事例

2018-07-13

事案の概要

 事案は,道路で停車中に後続車から追突されたというもので,過失割合に争いはありませんでしたが,経済的全損の損害額に争いがあったことから,事故直後からのご依頼となりました。

 また,事故で負った怪我が治療をしても完全には治らなかったため,後遺障害の申請をしたところ,腰椎捻挫後の臀部の痛み等について後遺障害等級14級9号が認定されました。

 

交渉経過

物損

 経済的全損とは,損傷した車を修理するよりも同種の車両に買い替えた方が安く済む場合のことで,この場合,賠償の対象となるのは,買い替えに要する費用に限られます。

 このときに争いになるのが,買い替えをする車の時価額や乗り出しのための諸費用です。

 今回は,時価額を新車価格の10%とされていて,諸費用については特に計上されていませんでした。

 そこで,時価額・諸費用についてそれぞれ調査を行って交渉を行った結果,当初の金額約12万円から約37万円への増額に成功しました。

人身

 本件は後遺症が残っていたため,後遺障害等級の認定を受ける必要があったのですが,後遺障害診断書上,目立った異常所見やそれに一致する神経症状は見受けられず,これのみで認定を受けられるかは微妙なケースでした。

 ただ,本件は事故による衝撃が大きく,日常生活にも支障が生じていたため,そうしたことを車両の損害レポート等の資料と共に意見書の形にして自賠責保険会社に提出し,結果として後遺症が等級14級9号の認定を受けることができました。

 さらに,保険会社との交渉では,慰謝料や逸失利益の金額について争いになることが多いのですが,本件では弁護士が交渉を行った結果,後遺障害分については慰謝料・逸失利益ともに請求金額の満額が認められて示談することができました。

 

ポイント

物損

 経済的全損となった場合,オートガイド社が発行しているレッドブックという本に掲載されている価格が時価額の基準とされることが多いのですが,この金額は実際の中古車市場との間で乖離が見られることも多く,一定年数を経過した古い車両は掲載もされないという問題があります。

 そこで,車両の時価額については,被害者がインターネット等で中古車市場の状況を確認する必要があります。

 特に,レッドブックに掲載されないような車両は,保険会社から新車価格の10%といった提案がされることも多く(本件もそうでした。),一層チェックの必要が出てきます。

 また,買い替えに要する諸費用については,当然こちらから請求しなければ相手方は認定してくれませんので,これも調査をする必要があります。

 この買い替え諸費用は,どの費目でも認められるわけではなく,裁判でも判断が分かれるものもありますので,算出が難しい部分でもあります。

人身

 後遺障害に関する損害は,裁判上,傷害部分(治療中の分)以上に賠償金の定額化が進んでいるところですので,安易に妥協することはできません。

 ただ,逸失利益については,被害者の仕事の復帰状況などによっては実際の損害額に違いが出ることもありますので,その辺りのリスクも踏まえて最終的な示談金額を協議していくことになります。

 

まとめ

 物損・人身いずれも,現在の裁判実務でどのような判断がされているのかについて知識がなければ,妥当な金額を導き出すことは難しいところがあります。

 示談にあたって,どの程度の金額が妥当なのか,お気軽に弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼すべき理由はこちら→「なぜ弁護士に交渉を依頼すべきか」

ご依頼の場合の料金はこちら→「弁護士費用」

 

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