人身傷害保険で後遺障害等級【非該当→14級9号】となった事案

2018-09-26

事案の概要

 事故の状況は,駐車スペースに自車を停めるために対向車線に出たところ,対向車がスピードを出して接近してきたため,慌てて後退したところ,電柱に衝突したというものでした。

 対向車は走り去ってしまったことに加え,ほとんど自損事故といっていい状態だったので,自身が加入する保険会社の人身傷害保険を利用しました。

 症状が固定することとなって治療が終了したもの,後遺症が残ったため後遺症についても補償を受けるべく後遺障害診断書を保険会社に提出したところ,後遺障害は非該当ということで補償を受けられないという通知がされました。

 そこで,後遺症に関する補償(異議申し立て)について当事務所に相談に来られました。

 

当事務所の活動

方針の決定

 本件では,事故衝撃もそれなりに強く,治療の実績も十分でしたので,後遺障害の認定が出てもおかしくはありませんでした。

 ただ,非該当となるには理由があるはずで,後遺障害診断書の内容を見る限り,今後も労働能力の低下が生じるほどの症状が残存するかといわれると,決定的な事情がないのもたしかでした。

 本件の特徴として,本人の訴える症状が非常に強く,症状固定後も自費で長期にわたって通院を続けていたということがありました。

 他方で,事情があってMRI検査等を受けることはできませんでしたので,画像によってヘルニアの存在を示すことが難しいという事情がありました(XP,CTは実施)。

 弊所では,このような事情の下で異議申し立ての手続きを行うこととなりました。

 

異議申し立て手続き

 弁護士が異議申し立ての手続きを行う場合,弁護士が作成した意見書を添付して申請をすることが通例ですが,それだけでは結果が覆ることは考えにくく,何らかの医学的な証拠も併せて添付することになります。

 本件では,既に述べたように,症状固定日以降も自主的に通院を続け,それにもかかわらず症状が残ってしまったということころに特徴がありましたので,医師に新たに後遺障害診断書を作成してもらうことを提案しました。

 その際,前回以上に症状を詳しく書いてもらうことと,改めて通院をしても治癒に至っていないことを踏まえて,今後の症状の改善の見込みを書いてもらうことをお願いしました。

 そのうえで,弁護士作成の意見書では,日常生活や仕事において実際に強い支障が生じていることや,症状の改善が見られないことを強調しました。

 

異議申し立ての結果

 異議申し立ての結果,後遺障害等級14級の認定が得られ,それに伴い,約款にしたがって人身傷害保険金が支払われることとなりました。

 

コメント

 自分の怪我の治療のために自賠責保険を使うことはできませんが,人身傷害保険の場合でも,事前の認定の手続きが利用されています。

 本件でも,事前認定の手続き(に対する異議申し立て)によって,後遺障害等級14級が認められました。

 一般的に,異議申し立てによって結果を覆すことは容易なことではありません。なぜなら,審査する基準自体は同じであるため,同じ被害者について出された結果が変わることはないはずだからです(むしろ,コロコロ結果が変わる方がおかしい。)。

 そのため,異議申し立てをして結果が変わるとしたら,前回の申請時に資料に不足があったか,申請後に新たな事情が判明したといった事情が必要となります。

 今回の場合,前者について,前回の申請時に状態を十分に伝えられていなかったという事情が存在し,後者について,前回申請時からも相当数の通院を続けてもなお症状が緩和していないという事情がありましたので,結果を覆すことができました。

 逆に言うと,そういった事情がなく,ただ単に前回の結果に対する不満を述べるだけでは,まず結果が変わることはないと思います。

 異議申し立ては難しいですが,結果が変わることもありますので,上記のような事情がある場合,一度トライしてみてはいかがでしょうか。