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後遺障害14級9号【肩関節脱臼後の疼痛】で140万円→280万円

2021-02-17

事案の概要

 自転車で道路を横断中,右折してきた四輪車にはねられたというもので,被害者は,肩関節や足関節の靭帯損傷といった傷害を負いました。

 その後,通院加療を続けていましたが,肩関節の痛みが後遺症として残ることとなりました。

当事務所の活動

依頼前の状況

 本件では,依頼の前に,事前認定により後遺障害等級14級9号が認定され,賠償金額として約140万円が提示されていました。

 しかし,保険会社の算定の仕方が妥当なのか疑問に思われたため,ご相談となりました。

後遺障害等級の検討

 本件は,そもそも後遺障害等級が14級9号でよいのかということをまず検討する必要がありました。

 骨折・脱臼を原因とする痛みなどの神経症状に関する後遺障害は,後遺障害等級14級9号のほかに,後遺障害等級12級13号が認定される可能性があります。

 14級9号と12級13号の違いは,訴えている症状について,関節面の不整や骨癒合の不全等といった他覚的に確認することのできる原因が存在するかという点にあります。

 本件の場合,主治医から,レントゲン上は特に問題がないという説明を受けていたことと,異議申立てをするためには時間と若干の費用が発生することになるため,後遺障害等級は14級を前提として示談交渉を行うことになりました。

示談交渉

 本件で,相手方の示した金額で問題があったのは,通院慰謝料(傷害慰謝料)と後遺障害慰謝料でした。

 後遺障害逸失利益については,計算方法については疑問があったものの,計算結果は低いとは言い難いものでした。

 具体的には,本来であれば,被害者が症状固定時に16歳であり,労働能力喪失期間を考える際,稼働開始までの期間分を控除するという処理が必要となるため,例えば,労働能力喪失期間が10年であれば,対象となる期間は,10年間から18歳(一般的に稼働開始可能と考えられる年齢)までの2年間を引かなければなりません。

 この処理は,単純に10から2を引くのではなく,中間利息を控除したライプニッツ係数を用います。

 ところが,相手方は,労働能力喪失期間を5年としながら,この5年のライプニッツ係数をそのまま用いていました。

 これは,実質的には労働能力喪失期間として7年を認定したのと同様になります(最終的な計算結果は,中間利息控除の関係で,7年で計算したよりも高くなります)。

 一般的に後遺障害等級14級9号の場合,労働能力喪失期間を就労可能年限までではなく,一定期間の制限されることが多く(むち打ち以外の場合は例外あり),若年者の場合,回復が期待できるため,その可能性も高まります。

 そうすると,労働能力喪失期間が実質7年とされるのであれば,決して不当とはいえません。

 また,相手方は,逸失利益の計算にあたって,全年齢の女性労働者の平均賃金を用いていました。

 労働能力喪失期間に制限のない後遺障害であれば,この数値を用いることが想定されるのですが,労働能力喪失期間が制限される場合で,被害者が若年者の場合だと,後遺障害の影響を受ける時点の収入は,働き始めたばかりの頃で,全年齢の平均賃金よりも低くなることが想定されます。

 したがって,逸失利益算定のための基礎となる基礎収入の額も,厳密に考えると,全年齢の女性労働者の平均賃金よりも低くなる可能性がありました。

 以上の点を考慮すると,相手方から示された逸失利益の額は低いものとはいえないのではないかと考えられました。

 そこで,示談交渉の対象を慰謝料の部分に絞ることとしました。

 その結果,最終の支払額が約280万円となって示談が成立することとなりました。

ポイント

 保険会社から示される金額は一般的には低いことが多いのですが,若年の学生が被害者となった場合のように,単純な計算とはならないような場合,むしろ裁判をするよりもいい条件なのではないかと思われることがあります。

 一方で,慰謝料のような算定が単純なものについては,ほぼ例外なく低い金額が示されます。

 示談交渉では,やみくもに相手の見解を否定するのではなく,論点を絞って交渉を進めることが有効な場合があります(そうすることで,解決までの時間も早まるというメリットもあります。)。

その他の事例はこちら→「解決事例一覧」

後遺障害12級13号【左寛骨臼骨・左大腿骨頭骨折】で500万円→1000万円

2021-02-15

事案の概要

 事故は,道路上で交通整理を行っていた被害者が,前方不注視の加害車両にひかれたというもので,被害者は,骨盤や大腿骨を骨折して入院を要することとなり,リハビリのための通院を続けたものの,関節面の不整を原因とする関節痛等の後遺症が残存することとなりました。

 事前認定により後遺障害等級12級13号が認定されたものの,保険会社から示された賠償金の額に疑問を持たれたため,依頼となりました。

当事務所の活動

依頼前の状況

 本件では,依頼の前に,認定済みの後遺障害等級にしたがって保険会社から賠償金額が示されていましたので,その金額を増額することができるかどうかが問題となりました。

 具体的には,入通院慰謝料が約120万円,後遺障害逸失利益が約250万円,後遺障害慰謝料100万円,その他調整金を合計して,500万円という金額が示されていました。

示談交渉の結果

 まず,入通院慰謝料については,自賠責保険の基準よりは高額でしたが,入院が3カ月強と比較的長期間に及んでいたことに照らすと低額であったため,その点を考慮し,約220万円で請求しました。

 後遺障害逸失利益は,労働能力喪失期間を10年とされていたため,これを,一般的な後遺障害に合わせて67歳となるまで(31年)として計算し,約500万円で請求しました。

 最後に,後遺障害慰謝料は,12級が認定された場合の一般的な事例にならい,290万円で請求を行いました。

 その結果,請求のほぼ満額に当たる1000万円で示談することができました。

ポイント

 本件は,その他のケースと比較して,保険会社がこちらの請求に対して大きく譲歩してきた事案であったといえます。

 一般的に,示談交渉の段階で保険会社がこちらの請求の満額を支払ってくることは決して多くありません。

 弁護士が行う請求は,一般的な相場にしたがって行ってはいますが,個別の事情を見ると,必ずしも裁判所で認められるとは限らないものが含まれているためです。

 本件の場合,特に逸失利益について,12級13号という神経症状に関する後遺障害であり,裁判実務上,労働能力喪失期間が限定される例も散見されるため,裁判をした場合には減額となる可能性もありました。

 そのような中で,示談交渉の段階で請求した金額のほとんどが認められたため,被害者にとっていい解決となったのではないかと思います。

骨折後の後遺障害について詳しくはこちら→「骨折の後遺障害」

その他の事例はこちら→「解決事例一覧」

冬期休暇のお知らせ

2020-12-17

拝啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて,誠に勝手ながら弊所では下記の期間を休業とさせていただきます。
 ご迷惑をおかけしますが、ご了承のほどお願い申し上げます。

休暇期間

2020年12月28日(月)~2021年1月3日(日)

後遺障害14級9号【むち打ち】で裁判を行った事例

2020-07-01

事案の概要

 事故は信号待ちで停車中に,後方から追突されたというものです。

 ケガの内容は,頚椎捻挫と腰椎捻挫,股関節捻挫で,職業は主婦です。

  このケースでは,加害者本人が交通事故と被害者の受傷の因果関係を争っていたため,やむを得ず被害者側の人身傷害保険を利用して通院をしていたというところに特色があり,そのままでは慰謝料等について適正に支払われることは到底期待できず,人身傷害保険の治療費の支払いも停止する見込みとなったため,弁護士への依頼となりました。

当事務所の活動

治療の打ち切り

 治療は人身傷害保険を利用して行っていましたが,人身傷害保険の場合も,加害者の対人賠償保険と同様にいつまでも支払いが出るわけではありません。

 治療によって改善が見込まれなくなってくると,「症状固定」といって,それ以降は治療費の支払いはされず,後遺障害等級の認定を受けた後で,認定に応じた保険金の支払いを受けることになります。

 そのため,保険会社が「症状固定」と判断すれば,治療費の支払いがストップすることになります。

 このケースでも,治療途中で保険会社から治療費の支払い終了が告げられましたが,「症状固定」の判断をするには時期尚早で,医師は治療の終了に賛成していたわけではなかったため,この点の対応を検討することになりました。

  通常であれば,医師の見解を書面に記してもらうなどして治療費の支払延長の交渉を試みるところです。

 しかし,今回のように本来賠償をすべき加害者がいる中で,人身傷害保険を利用しているケースでは,敢えて人身傷害保険の保険会社を相手に交渉を行う必要はありません(いずれにせよ,加害者との間で争わなくてはならないため)。

 そのため,とりあえず健康保険を使って自費で通院をした上で,いよいよ治療の効果が出なくなった段階で後遺症の申請を行うこととしました。

 人身傷害保険金としては,治療費を除いて約54万円が支払われました。

後遺症の認定申請

 事故から半年以上を経過しても症状がなくならなかったため,後遺症の申請(被害者請求)を行い,その結果,頚椎捻挫後の頚部痛について後遺障害等級14級9号が認定されることとなり,自賠責保険金として75万円が支払われました。

裁判

 依頼に至るまでの経過に照らし,示談交渉の余地はほとんどなかったのですが,実際に交渉を試みても全く支払いに応じる様子がなかったため,裁判に踏み切ることにしました。

 裁判では,後遺症の発生のほか腰椎捻挫・股関節捻挫と事故との因果関係まで争われることとなりましたが,弁護士が資料を精査し,損害の額に影響を与えないことなどを主張しました。

 その結果,最終的に,人身傷害保険金(約54万円)と自賠責保険金(75万円)を除いて約200万円が支払われることを内容とする和解が成立しました。これらを合計すると約329万円なります(治療費を除く)。

ポイント

 本件は,相手方の対応が悪く,かといって,人身傷害保険の対応も十分なものとは言えず,人身傷害保険の保険会社に言われるがまま,治療打ち切り後の対応を怠っていれば,後遺症の認定も受けられず,まともな賠償を受けられることができなかったのではないかと思います。

 「症状固定」とはどういう意味を持つのか,「後遺障害」とはどのような場合に等級が認定されるのかといった基本的な考え方を理解しておく必要があったといえるでしょう。

 また,今回のように加害者の態度が著しく悪い場合,過失割合等に争いがなくても,裁判をせざるを得ない場合があります。

 裁判となると,通常の示談交渉では問題とならないような細かい因果関係まで争われることが多々あり,それが言いがかりのようなものであればそれほど気にする必要はありませんが,一応理由のあるものであれば,それに対する反論を適切に行わなければなりません。

 このような対応は,専門家でなければ相当に難しいところですので,裁判を検討されているのであれば,弁護士にご依頼いただくことをおすすめします。

実通院日数が少ない兼業主婦の事例

2020-06-30

事案の概要

事故は高速道路で渋滞中に,後方から追突されたというものです。

治療自体はそれほど問題なく進みましたが,最終的に提示された示談金額が少額であったため,弁護士が介入することとなりました。

当事務所の活動

後遺症について

 本件は,治療を約8か月受けたところで,相手方の保険会社から治療終了についてのアナウンスがなされたのですが,元々の症状がそれほど強くなく,治療期間も十分であったため,特に後遺症を残すことなく治療を終えていました。

示談交渉

 後遺症が特に問題とはならなかったため,そのまま示談交渉を行うことになりました。

 当初示されていた示談金額は約28万円で,自賠責基準での慰謝料に交通費が加算されたのみでした。

 しかし,被害者は兼業主婦でしたので,自賠責基準であるとしても金額は低いと言わざるを得ず,慰謝料も,通院日数が少なかったため,裁判基準を大幅に下回るものとなっていました。

 そこで,弁護士が,慰謝料を裁判基準により計算しなおし,休業損害についても新たに加算した上で賠償金の計算を行いました。

 その後,示談交渉の結果,賠償金額が約110万円となり,当方の主張が概ね認められた形で示談をすることができました。

ポイント

 本件は,後遺症がないケースで,保険会社の提示する金額が低くなる典型的なケースであるといえます。

 ポイントは,①通院日数が少ないことと,②兼業主婦で,勤務先の仕事の休業は少ないことです。

実通院日数の少なさ

 ①の通院日数が少ないことは,保険会社との交渉の中ではマイナスに働く事情になります。

 その理由は,自賠責保険の慰謝料の計算方法が,治療を開始してから終了するまでの期間の長さか,実際に通院した日数を2倍した数字のいずれか小さい方に4,200円(令和2年4月1日以降に発生した事故の場合は4,300円)をかけることになっているためです。

 この方法によると,たとえどれだけ症状が治るまでに時間がかかったとしても,通院の日数が少ないと慰謝料の金額も大きくならないことになります。

 そして,相手方の任意保険会社は,自賠責保険の認定額を念頭に置いて支払額を決定しますので,自賠責基準の金額が低ければ,任意保険会社との交渉でも金額が低くなる傾向にあるのです。

 さらに,弁護士が用いる「赤い本」の基準でも,実通院日数が少ない場合,通常であれば治療を終えるまでの期間の長さによって金額を定めるところが,実通院日数の3倍を目安とすることがあるとされています(むち打ちの場合)。

 そのため,実通院日数が少ない場合に,通常の場合と同様の慰謝料を受け取るためには,相応の交渉が必要となるのです。

兼業主婦で仕事の休みはほとんどない

 兼業主婦で勤務先の仕事の休みが少ない(又はない)場合,主婦の休業損害を請求できるのかは悩ましいところです。

 なぜなら,勤務先の仕事に出ていたということは,家庭でも家事が出来たのではないかという疑問が生じるためです。

 しかし,実際には,症状を抱えて通院をしつつ,仕事を休まなかったのであれば,その分のしわ寄せがあるはずであり,それが家事に影響するということはよくあります。

 また,そうでなくとも,収入を得るために仕事には無理をして出ていても,家事については他の家族に頼るということもあります。

 いずれにせよ,症状があって通院をしている以上,仕事を休まなかったからといって家事労働に支障が出なかったということには必ずしもなりません。

 裁判でも,仕事を休まなかった主婦に休業損害を認めるものがあります。

 そのため,この点についても,実際に家事に支障が出ていたのであればしっかりと主張をすべきですが,保険会社はこの点は容易には認めません。

まとめ

 後遺症がなく,実際に通院の日数が少ない場合,保険会社から示される金額が小さく,弁護士に依頼するほどのことでもないと思われがちですが,本件のようなケースでは,金額大きく変わることも少なくありませんので,示談をする前に,一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

もらい事故への対応について

2020-06-08

もらい事故だと保険会社が交渉できない?

 相談をお受けしていると,「自分の保険会社から『過失割合が0対100なので,交渉をすることができない』と言われた」という話をよく聞きます。

 たしかに,被害者に落ち度のない,いわゆるもらい事故の場合,自分の保険会社は交渉を行うことはできません。

 なぜなら,示談交渉などを弁護士以外の者が行うことが弁護士法72条という法律で基本的に禁止されていて,違反すると犯罪になるためです。

示談代行サービスとは

 それでは,自動車保険のテレビCMなどで示談代行サービスをうたっていて,実際に示談代行サービスが行われているのは何故でしょうか?

 これは,被害者に少しでも落ち度があれば,保険会社は,その程度に応じて対人又は対物保険の支払いをする必要が出てきますので,自分たちが支払う保険金に関することとして,示談代行を行うことができるためです。

 これに対し,もらい事故の場合,そこで行われる交渉は,全て被害者から加害者に対する支払に関するものであって,自分の保険会社は対人・対物保険の保険金を支払う必要がありませんので,交渉を行うことはできないのです。

示談代行サービスが使えない場合の対応方法

 示談代行サービスが使えない場合でも,慰謝料など怪我に関する補償の問題や,車の時価額の問題など,交渉をしなければ適切に賠償が受けられない場面は多々あります。

 このような場合,弁護士に依頼することで,適切に交渉を行っていくことが可能になります。

 弁護士に依頼する場合,弁護士費用が発生することになりますが,交通事故の場合,弁護士費用を差し引いても示談交渉を依頼した方が良いという場合も多いです。

 しかし,それでも支払いが生じる以上,やはり費用は気になるとことだと思います。

 こうした場面で弁護士に依頼してしっかりと示談交渉を行いつつ,弁護士に支払う費用に備える保険が,弁護士費用特約です(CMでもこの保険のことをアピールするものもあります。)。

 弁護士費用特約そのものにかかる保険料は通常は低額で,使用しても等級は下がりませんので,交通事故の被害に遭ったときに備える保険として非常に有効です。

 弁護士費用特約のご加入がある方は,ご相談だけでも利用できますので是非積極的にご活用ください。

 また,ご加入がない方でも,示談交渉を依頼するメリットがあることが多いので,お気軽にお問い合わせください。

人身事故への切り替えについて

2020-05-12

 事故発生から間もない段階でのご相談をお受けした場合,人身事故への切り替えをした方が良いのか?という点について聞かれることがよくあります。

 ここでいう人身事故への切り替えとは,保険会社との関係ではなく,警察に対して,交通事故が物件事故扱いとなっているものを人身事故扱いとしてもらうかどうかということを意味しています。

 事故当日に警察に状況を説明しているとは思いますが,後日診断書を警察に提出して人身事故への切り替えまでするかどうか悩まれている人もいらっしゃるかと思います。

 ここでは,人身事故への切り替えの持つ意味を解説します。

刑事処分

 交通事故に関する刑事処分は,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷行為処罰法)によってなされていますが,文字通り人を死傷させた場合を念頭に置いていますので,物件事故の場合はこの法律の対象外となります。

 わざと車をぶつけたような場合は刑法上の器物損壊罪が成立する可能性がありますが,一般的に交通事故で想定されているケースではないでしょう。

 また,わざとではなくても,交通事故で建造物を損壊した場合には道路交通法116条によって刑事処分を受ける可能性はあります。

 いずれにせよ,物件事故で通常想定されている,不注意による自動車(バイク)同士の事故で,自動車(バイク)が破損させられたというケースでは,基本的にそれだけで刑事責任の対象とならないと考えて良いでしょう(修理費などの民事責任が問題となることは言うまでもありません。)。

 したがって,物件事故と人身事故では,この点が大きく異なりますので,人身事故の切り替えをすることは,加害者に刑事処分を受けさせるかどうかに大きく影響することとなります。

 もっとも,人身事故への切り替えをしたとしても,怪我の程度が軽く,相手に前科・前歴がなければ,不起訴処分となって刑事処分を受けないことも多いです。

行政処分

 交通違反や交通事故では,自動車等の運転者の交通違反や交通事故の内容により一定の点数を付けられていて,その過去3年間の累積点数等に応じて免許の停止や取消等の処分を行われることになります。

 人身事故の場合,次のように交通事故の付加点数(違反点数)が定められています。

① 専ら当該違反行為をした者の不注意によって発生したものである場合

死亡事故 20点

治療に要する期間が3か月以上または後遺障害がある 13点

治療に要する期間が30日以上3か月未満 9点

治療に要する期間が15日以上30日未満 6点

治療に要する期間が15日未満または建造物の損壊に係る事故 3点

② ①以外の場合

死亡事故 13点

治療に要する期間が3か月以上または後遺障害がある 9点

治療に要する期間が30日以上3か月未満 6点

治療に要する期間が15日以上30日未満 4点

治療に要する期間が15日未満または建造物の損壊に係る事故 2点

※→警視庁ホームページ

 

 このように,怪我をしているかどうか,怪我がどの程度重いかによって付加点数が異なりますので,加害者にとって,人身事故の届け出がされるかどうかは重大な影響があります(仕事上,自動車の運転が必須な人などは特にそうでしょう。)。

刑事記録の違い

 人身事故の場合,実況見分によって事故に至るまでの状況や,道路の形状といったことが細かく記録され,実況見分調書というものが作成されます。

 これを見れば,どのような事故であったのかある程度正確に知ることができます。

 これに対し,物件事故の場合,基本的に刑事処分の対象とならないため,本格的な捜査は行われないのが通例です。

 書類は一応作成されますが,物件事故報告書という簡易なもので,事故の概要しか分かりません。

賠償上の違い

 法律上,加害者側から損害賠償を受けるにあたって,人身事故への切り替えが条件になっているということはありません。

 インターネット上の情報を見ていると,人身事故への切り替えをしなければ支払われないものがあるとか,後遺障害の認定が受けられなくなるといったものを目にします。

 しかし,少なくとも私の経験上,交通事故の届出自体をしていないというのであればともかく,人身事故の切り替えをしていないという理由だけで相手の任意保険会社から支払いを拒まれたことはありません。

 また,後遺障害の認定を含めた自賠責保険の請求の場合でも,物件事故の交通事故証明書に,「人身事故証明書入手不能理由書」という紙を1枚添付すれば,適切に処理がされています。

 人身事故の切り替えをしていた方が後遺障害の認定がされやすいかどうかについては,検証のしようがないため(全く同じ事件というものはないので),断定的に述べることはできません。

 ただ,上記の「人身事故証明書入手不能理由書」を添付する方法で認定を受けられたものも多数ありますし,反面,当初から人身事故扱いとなっていても認定が受けられなかったものもありますので,明白な違いというものは認められません。

 以上のような次第ですので,弊所では,基本的に,人身事故への切り替えが,賠償の範囲や額に直結するものとは考えていません。

人身事故へ切り替えをしておいた方が良いケース

相手への処分を求める場合

 人身事故への切り替えは,加害者の刑事処分や行政処分の内容に大きな影響を与えますので,加害者への処分を求めたい場合には,切り替えをした方が良いでしょう。

事故状況が問題になるケース

 既に述べたように,人身事故への切り替え自体で損害賠償の額が直接変わるというものではありません。

 しかし,既に述べたように,人身事故への切り替えをした場合の違いとして,実況見分等の捜査が行われ,その記録が作成されるということがあります。

 これらの本来の目的は,適切に刑事処分を行うことにありますが,被害者としても,これらの書類を取り寄せることで,民事の損害賠償請求の中で証拠として活用することができます。

 過失の割合が0対100で争いもないような場合であれば,それほど問題はありませんが,それ以外の場合,事故の状況を正確に把握する必要があり,その際に,中立な第三者である捜査機関によって作成された書類は,最も有効な資料となります。

 特に,加害者が,事故当初は事故状況について率直に認めていたのが,後になって内容を覆してくるというような場合,加害者の事故直後の説明を元に作成された実況見分調書を示すことで,そうした主張を封じることができます。

 このとき,物件事故の場合だと,必ずしも双方の主張を聞いて書類が作成されるわけではなかったりするので,十分な対応ができないことがあります。

まとめ

 人身事故への切り替えは,刑事処分・行政処分に関するものですので,これらの加害者への処分をどうしたいかによって行うべきかどうかを考えることになります。

 他方で,民事の損害賠償との関係でも,事故状況に関する証拠を押さえるという点で意味があります。

 人身事故への切り替えを積極的に行うべきかはケースによりますが,事故状況などで争いになりそうな場合には,速やかに切り替えを行うと良いでしょう。

冬期休暇のお知らせ

2019-12-20

拝啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて,誠に勝手ながら弊所では下記の期間を休業とさせていただきます。
 ご迷惑をおかけしますが、ご了承のほどお願い申し上げます。

休暇期間

2019年12月28日(土)~2020年1月5日(日)

交通事故の慰謝料と通院日数

2019-11-15

 交通事故の慰謝料の額の計算は、「どれだけ通院が必要だったか」と密接な関係がありますが、通院すればするほど支払われる慰謝料の額が増えるというわけでもありません。

 交通事故の件で被害者の方から色々とお話を伺っていると、整骨院などに通院した際、柔道整復師から、「通院回数が多い方がもらえる慰謝料の額も大きくなる」などと言われるケースがあるようです。また、インターネット上の情報にも同様の記述が見られます。

 これは、100%間違っているとは言いませんが、「慰謝料を増やすために通院の回数を稼ごう」などというのは、通院の目的を履き違えたものですし、実際には慰謝料の額が増えるどころか減る可能性すらある行為で控えるべきであり、場合によってかえって自身にとって不利益な結果となることもあります。

 ここでは、なぜ通院回数を増やせば慰謝料が増えるといえないのかについて、自賠責基準と裁判基準の説明をしつつ解説します。 

自賠責保険の場合

 自賠責保険から支払われる慰謝料の額は,計算方法が決まっており,1日当たり4,300円(※)です。この4,300円にかける日数は,通常は通院にかかった期間の長さですが,通院が2日に1回よりも少ない場合,実際に通った日数の2倍となります。

(※)令和2年3月31日以前に発生した事故については1日当たり4200円となります

(具体例)

 例えば,4月1日に治療を開始して5月30日に治療を終え(この間60日),この間に40回通院した人の場合,慰謝料の額は,4,300円×60日=258,000円となります。
 同じく,4月1日から5月30日までの治療期間で,10日しか通院していない人の場合,慰謝料の額は,4,300円×10日×2=86,000円となります。

 この違いを見ると,通院をすればするほど慰謝料の額が増えるようにも見えます。
 しかし,この計算でも、通院の回数が30回と50回で慰謝料の額に違いはありません。

 また、例えば、通院期間180日の間に100日間通院したら,4,200円×180日=774,000円が当然支払われるものと考えている人がいますが,これも誤りです。

 自賠責保険の場合で注意しなければならないのは,支払われる保険金には上限額があるということです。
 自賠責保険の場合,通院の慰謝料や治療費,休業損害などについては,すべてを合計して120万円しか支払われません(加害者が複数などの場合を除く)。
 そのため,通院をすればするほど治療費が大きくなり,慰謝料に割り当てることのできる保険金の枠もどんどん小さくなります。

 特に、交通事故の場合、自由診療扱いで治療・施術を受けていることが多いですが、その場合、健康保険を使用した場合と比較して窓口負担額は6倍以上となっていることが多く、1回あたりの治療費の額も大きくなっています。

 例えば、1ヶ月間に20日ほどの割合で、6カ月間通院した場合で、1ヶ月当たりの治療費が10万円だったとします。
 この場合、治療費として60万円が支払われることになり,残りは60万円ですから,先ほどの計算のように慰謝料の額は774,000円とはならず,支払われるのは60万円に過ぎません。
 この60万円の中には、休業損害や通院のための交通費も含まれますので、純粋な慰謝料といえる部分はもっと少なくなるでしょう。
 さらに極端なケースで、治療費が100万円かかったような場合、残りは20万円となり、通院回数の多さから交通費も多少大きくなると思われますので、慰謝料に充てられる額が10万円ほどということもあり得るわけです。
 自賠責保険の残枠が小さくなれば、任意保険会社からの任意保険基準による最終の慰謝料の支払額も小さくなることが予想されます。

 他の弁護士のホームページでは、任意保険基準>自賠責基準などとしているものも多いため、最低でも自賠責基準で慰謝料がもらえると誤解している人も多いと思いますが、上記のように自賠責基準で計算した慰謝料を支払ってしまうと自賠責保険の上限額である120万円を超えていしまいそうな場合、自賠責基準を下回る金額で算定されることが多いです。

 弁護士が交渉すれば、裁判基準という自賠責保険のような上限額のない計算をしますので、計算上は影響はないかもしれませんが、自分で交渉をしようという場合、上記のことを頭に入れておく必要があります。

裁判基準の場合(実際に支払われるべき慰謝料の額)

 実務的には,弁護士が慰謝料の請求をする場合,日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「赤い本」と呼ばれる本で示されている基準によって金額の計算を行います。

 この基準は,入院が〇か月,通院が〇か月なら〇〇円ということを表の形で金額を示しており,入院又は通院にどれくらいの期間を要したかによって金額が決まるようになっています(個別の事情によって変動することはあり得ます。)。
 入通院に時間がかかったということは、それだけ症状がある期間が長いということですので、その分精神的・身体的な苦痛も長く続きます。したがって、入通院期間の長さを慰謝料の額を決める際の基準に用いることには合理性があります。

 しかし,ここも注意が必要で,「通院が長引けば慰謝料の額が大きくなるとは限らない」のです。

 代表的なものとして,以下のようなものがあります。

実際に通った日数が少ない場合の計算方法

 この点は,保険会社との交渉をしているときに,頻繁に問題になる点です。

 上記のとおり,慰謝料の額は,入院又は通院にどのくらいの期間を要したかによって決まる傾向にありますが,同じ通院期間の人であっても,毎日のように通院せざるを得なかったような人もいれば,月に1回程度の通院にとどまったような人もいます。

 このような違いがあるときに,慰謝料の額が同じでよいのかという問題です。

 この点について,弁護士が用いている「赤い本」の基準では,「通院が長期にわたる場合は,実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」としています。

 この計算方法によれば,例えば,通院が1年間であれば,通常なら慰謝料の額は154万円となりますが,この間の実際の通院日数が12日程度なら,慰謝料の額が12日×3.5=42日分の通院に相当する額になり,このケースだと,80万円ほどになってしまうということになります。

 また,むち打ち症や打撲・捻挫などの他覚的所見がない怪我の場合でも,同様に,「通院が長期にわたる場合は,実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある」とされています。

 ただし,この基準は,あくまでも実通院日数の3.5倍(又は3倍)程度を通院期間の目安とする「こともある」としているのであって,必ずそのような計算をするとはしておらず,むしろ,あくまでも通院期間で計算するのが原則で,このような計算をするのは例外的なものであるとしています(2016年版「赤い本」下巻)。

 したがって,保険会社と交渉をする際にも,通院日数の少なさは考慮せずに計算をすべきです。

 ただし,実際に通院した日数が極端に少ない場合の基準については、上記のとおり曖昧な部分があり、やはり通院日数が多い場合と少ない場合とで通院による負担も変わってくるところなので、金額に差が出たとしてもおかしくありません(通院間隔が開くことになるので、結果的に治療終了までの期間が長くなってしまうケースもあると思います)。

 結論としては、「通院が多少少なかったとしても慰謝料の額に影響が出るとは考えにくいが、通院日数が極端に少ないと慰謝料の額に影響が出る可能性がある」ということになります。

 なお、骨折をした場合で、「骨癒合のための時間を要し、かつ、その間は骨折箇所を固定するくらいで治療としてできることはない」というようなことがしばしば見られますが、このような場合、通院の頻度が少なくなるのは当然ですので、そのことを理由に慰謝料を減額すべきではないと考えます。

過剰診療の場合

 事故の状況から見て,治療に時間がかかるとは到底思えないような場合に,慰謝料目当てに通院をしても,それに応じて高額の慰謝料が払われるほど甘くはありません。

 場合によっては,過剰な診療分が慰謝料の額から差し引かれることさえあります。

 そのため,一言でいうと「同じような怪我が治るまでに一般的に必要とされる期間」が慰謝料の額に反映されると考えた方が良いです。

 もちろん,どれだけ治療を要するのかは,人によって多少の違いがありますので,はっきりとした基準があるわけではありませんし,少しでも通院が長くなったら、その分は慰謝料の計算にあたって考慮しないというわけでもありません。

 しかし,常識的に考えて過剰というような通院の仕方は,慰謝料の増額につながらないばかりか,最終的にその治療費を自分で負担しなければならないリスクもあるということを認識しておく必要があります。

適切な治療を受けていなかった場合

 逆に,本来であれば受けるべき治療を受けずに,それが原因で治療が長引いてしまうというケースも考えられます。

 この場合も,治療費は過剰というよりもむしろ少ないので,特段問題となりませんが,「同じような怪我が治るまでに一般的に必要とされる期間」との比較をすると,期間が長すぎるということが考えられます。

 そのため,この場合も,慰謝料の額が治療期間に応じて大きくなるとは言い難い部分があります。

まとめ

 結局のところ,医師の指示のもと,自分が怪我を治すために必要と思える範囲で治療を受ける分には問題ありませんし,それに伴って慰謝料の額が大きくなる傾向にあるのは事実であるといえます。

 したがって,多くの場合,通院の長さに応じて慰謝料の額が多くなると考えて差支えないでしょう。

 しかし,これはあくまでも,交通事故によって負った怪我の内容からみて妥当な範囲であれば当てはまることなので,通常必要とされる治療期間よりも明らかに治療に時間がかかっているような場合は,その原因にもよりますが,必ずしも治療期間の長さに応じた慰謝料の額になるとは限らないのです。

 特に,自賠責保険では,計算された慰謝料の額がそのまま支払われるわけではないので,そのことを認識しておく必要があるでしょう。

後遺障害14級9号【むち打ち】で示談交渉を行った事例

2019-09-04

事案の概要

 事故は信号待ちで停車中に,後方から追突されたというものです。

 相手方の保険会社を利用して治療を継続していましたが,完全には症状がなくならないまま治療費の支払いの打ち切りを宣告されたため,ご相談となりました。

当事務所の活動

後遺症の認定申請

 まず,治療の打ち切りの問題については,治療の長さ,訴えている症状の内容,事故の状況などから,自賠責保険に対して,後遺症の認定を申請することをおすすめしました。

 これは,法律的に見ても,症状が固定した時期(治療しても根本的な改善が見られない状態になった時期)になると,一般的にそれより後の治療費の支払いはされなくなり,その分について補償を受けるためには,後遺症の認定を受ける必要があるためです。

 その結果,頚椎捻挫後の首の痛みについて,後遺障害等級14級9号が認定されました。

示談交渉

 上記の結果を受けて,相手方保険会社と示談交渉を行い,結果として,慰謝料については示談交渉であることを考慮して,多少の譲歩をしたものの,後遺症の逸失利益は,労働能力喪失期間5年の裁判の相場にしたがって支払いを受けることができました。

ポイント

 本件は,事故の程度としてはそれほど大きいものではなく,事故状況からすると,後遺症の認定が出ないことも十分に考えられました。

 しかし,被害者の年齢が60歳を超えていて,頚椎に加齢による変性が見られ,訴える症状も強く,整形外科への通院も比較的多かったという事情があり,結果として後遺障害等級が認められました。

※むちうちの場合の後遺症認定のポイントはこちら→「むち打ち症と後遺障害等級の認定」

 14級9号の場合,労働能力喪失期間を3年などと主張されることが多いのですが,この点については,最近の裁判の傾向を示し,根気強く交渉をすることが必要となります。

 本件は,むち打ち症で後遺障害等級14級9号が認定された場合の典型的な事例であったと思いますが,だからこそ,しっかりと相応の支払いを受けられるようにしなければなりません。

弁護士に依頼すべき理由はこちら→「なぜ弁護士に交渉を依頼すべきか」

その他の事例はこちら→「解決事例一覧」

ご依頼の場合の料金はこちら→「弁護士費用」

 

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