後遺障害14級9号【異議申立】で約340万円(治療費除く)獲得
事案の概要
事故状況は,丁字路交差点の優先道路を被害車両が直進中、左側の道路から交差点に進入してきた加害車両が衝突したというもので、被害者は、頚椎捻挫・腰椎捻挫の傷害を負いました。
治療中の経過
頚椎捻挫・腰椎捻挫は、交通事故で最も多い傷病名ですが、本件の場合、症状が比較的強く出ており、トリガーポイント注射を打つなどして症状の緩和に努めていました。しかし、約11か月の通院にもかかわらず、症状は完全に消失することなく、首・腰痛などが残存することとなりました。
被害者請求(1回目)
上記のとおり、後遺症が残ることとなったため、まずは後遺障害について被害者請求を行うことにしました。
しかし、1回目の申請では、自賠責保険の後遺障害には該当しないという結果となってしまいました。
事故自体は、軽いとまでは言えないものの、車のフレームまで損傷していたわけではなく、怪我の内容からしても、後遺症が残るほどのものではないと判断された可能性がありました。
異議申立て
本件には特殊性があり、依頼を受けた事故の2か月ほど前に別の事故により同一部位を損傷して治療中だったところに、新たに事故が起きたというものでした。
こういった事故のことを、保険の用語では「異時共同不法行為」と呼んでいます。
法律の用語でも共同不法行為というものがありますが、内容は別のものです。
「異時共同不法行為」の場合、保険会社の考え方では、2事故目が発生した段階で1事故目の加害者は対応を終え、以後は2事故目の保険会社が治療終了まで対応することになります。
本件も、1事故目については別の弁護士が示談をしていました(このような示談は、法律的な観点からはリスクがあるのですが、ここでは割愛します)。
そのため、弊所でも基本的には2事故目に着目して対応をしていたのですが、後遺症が残ったことについて1事故目の影響があったことも否定できませんでした。
また、MRIの画像上、はっきりとヘルニアが確認できるというのも特徴的でした。
そこで、改めて、1事故目の資料を一式取り付けて異議申立てを行うとともに、1事故目についても同時に被害者請求を行い、弁護士の意見書も添付することにしました。
その結果、後遺障害として認められ、後遺症部分について賠償を受けることができました。
また、本件は休業損害の額が比較的大きかったのですが、後遺障害の認定が受けられたことで、比較的高額の賠償を受けることができました。
ポイント
異議申立ては、一般的には成功の可能性が低いものです。
なぜなら、初回の請求時に診断書・診療報酬明細書、画像資料といった、認定のために必要な資料を一式提出しているからです。
また、後遺障害14級9号は、被害者が訴えている症状が、「医学的に説明のつくもの」であることが必要です。言い換えると、1回目の申請では症状が残っていることが医学的に説明がつかないと判断されたことになります。
そうすると、異議申立てでは、通常の資料だけでは「医学的に説明がつかない」とされた後遺症について、「医学的に説明がつく」ということを訴えていかなければなりません。
通常の資料では足りないわけですので、その事案に特徴的な、後遺症が残ってもおかしくないことを示す資料を探す必要があります。
そうすると、事故が2回重なることで、通常なら治ったはずの怪我が治りにくくなるということは十分あり得ますし、1事故目の方が衝撃が強かったなどの事情があれば、そのことを積極的にアピールしていく必要があるでしょう(今回のケースでは、そこまでの事情は確認できませんでした)。
保険会社の考え方にしたがって1事故目で示談をしている場合、2事故目の後遺障害の申請でも1事故目のことは特に気にしないかもしれません。
しかし、1事故目も含めてトータルで考えることで初めて後遺症が「医学的に説明がつく」といえるケースもあり得ますので、改めて1事故目の影響がどうだったのか検討してみる必要があります。