後遺症が原因で退職の被害者・異議申立で【非該当→後遺障害14級】
事案の概要
事故状況は、高速道路上で、後方から無理に車線変更をしようとした車に衝突されたというものです。
被害者は、頚椎捻挫・腰部挫傷、右肩挫傷の傷害を負いました。
当事務所の活動
過失割合の交渉
本件は、後方から衝突されていたもので、被害者が避けようもなく過失相殺されるのは酷な事案でした。
しかし、高速道路上の車線変更の事案では通常過失割合は20:80とされています。
また、ドライブレコーダーの搭載もなかったため、詳細な事故状況を証明することは難しい事案でした。
そのため、相手の保険会社は、当初過失相殺を主張してきました。
そこで、この過失割合の部分から交渉を開始することになりました。
ドライブレコーダーの映像や目撃証言等がない場合、事故状況を証明するための一番初めに検討すべき証拠は破損した車両の状態です。
本件でも、車の破損した位置や傷の付き方を元に、後方から衝突されたこと主張し、無事に0:100で解決することができました。
後遺障害の異議申立
次に、本件では被害者は長期間の療養にもかかわらず後遺症が残存しましたが、初回の後遺障害申請の結果は、後遺障害非該当という結果でした。
しかし、被害者は、保険会社からの治療費支払の打ち切り後も長期間に渡って自費で通院を続けており、事故後、症状の負傷箇所の痛みにより仕事を退職していたという特色がありました。
そこで、これらの点について根拠を示しつつ説明を行うことで異議申立てを行うことにしました。
その結果、腰痛について後遺障害14級9号が認定されました(頚部痛については別件事故で認定済み)。
示談交渉
その後、示談交渉では、頚部痛について別件事故で後遺障害14級9号が認定されていたため、逸失利益をその分減額すべきではないかと保険会社から主張されました。
最終的に、後遺障害については裁判基準の満額で、休業損害は期間が長かったため満額とはいきませんでしたが一般的な相場に照らせば十分な支払いを得ることができました。
最終的な示談金額は、物損や治療費を除いて約320万円(自賠責保険金含む)となりました。
ポイント
過失割合
過失割合の交渉ですが、今回は上手くいきましたが、ドライブレコーダーの映像がない場合で、事故状況に争いがある場合、こちらの言い分を証明することは非常に難しいです。
前提として、相手の保険会社は、契約者である加害者の意向に反する示談をすることはできません。
そのため、保険会社は、加害者が虚偽の主張をしている場合、それと異なる事実を前提に示談することは相当にハードルが高くなります。
この点も、ドライブレコーダーの映像のような有無を言わさないような証拠があれば問題がないのですが、それ以外の、「車両の傷の付き方」といった証拠では、やはり少し弱い部分があることは否定できません。そういった証拠で勝負しようとする場合、説明の工夫が必要になります。
異議申立
後遺障害等級の異議申立てについては、決まったやり方があるわけではありませんが、同種の事案と比較して際立っている点があれば、それを強調していくのがセオリーだと思います。
示談交渉
交渉に関しては、別件で頚部痛について後遺障害14級が出ていたことをどう考慮すべきかが問題となりますが、この点は、負傷した部位が違うので、腰の後遺障害に関する補償に関して、頚の後遺障害のことを考慮すべきではありません。
この点は、弁護士でも誤解している者がいるようですが、例えば、事故の影響で片腕が使えなくなった人が、何とか頑張って500万円の年収を得ていたとします。そうした中で、足を骨折して足が不自由になったという場合に、さらに仕事へマイナスの影響が出ることは明らかで、後発事故前の年収500万円は、腕の後遺症を前提に稼いでいた金額ですので、これをベースに足の逸失利益を計算することに何ら問題ありません。
後遺障害の逸失利益で既存障害が問題となるのは、あくまでも同一部位を重ねて負傷した場合です。