後遺障害併合10級【脊柱変形・股関節機能障害・会社員】で2500万円を獲得

2022-12-27

事案の概要

 事故状況は、夜間に会社からの帰宅中、横断歩道のない幹線道路を横断しようとした被害者が、車にはねられたというものです。

 被害者は、骨盤骨折、右寛骨臼骨折、頚椎横突起骨折、軸椎椎体骨折、外傷性くも膜下出血等の傷害を負いました。

当事務所の活動

 本件は、通勤災害という労災が使用できるケースでしたので、治療は労災保険を使って専念していただき、治療終了後の慰謝料や後遺障害に関する賠償について弁護士が相手方と交渉を行うこととなりました。

方針のポイント

 まず、本件は、夜間の幹線道路の横断歩道がない場所を横断したというものでしたので、歩行者といえでも相応の過失が認められてしまうような事案でした。

 このような場合、治療費も含めて、過失分については加害者に対して賠償の請求をすることはできませんので、治療費としての支出をいかに抑えるかが重要なポイントになります。

 本件は、労災保険が使えるケースだったのですが、この場合、労災をしようすることをおすすめします。

 労災保険を使用して治療費に対して療養給付が支払われる場合、被害者は、治療費の自身の過失分について負担しなくても良くなります。

 入院・手術を伴うようなケースでは、治療費が数百万円にのぼることも珍しくありません。

 そのような高額な治療費について過失が1割でもある場合、被害者の負担は大きなものとなりますので、労災を使用して安心して治療を受けることをおすすめします。

 この他に、自身の自動車保険の人身傷害保険に加入がある場合、これを利用して過失分の補てんを受けることも可能ですが、本件のように歩行中の事故の場合、使用できないこともありますので、労災が使えたのは補償にとって有利な点でした。

示談交渉のポイント

 本件の示談交渉時のポイントは、脊柱変形の後遺障害を含んでいたことにありました。

 脊柱変形は、他の後遺障害とは異なり、逸失利益が生じるのか、生じたとして、労働能力喪失率表どおりに考えてよいのかという点に議論があり、裁判上も、やや厳しい判断となることが少なくありません。

 実際に、このケースでも被害者に脊柱変形そのものによる目立った仕事への支障は見受けられないという事情がありました(収入の減少もない)。

 そこで、相手の保険会社は、顧問医の意見も踏まえて、「脊柱変形による逸失利益はない」と主張してきました。

 しかし、この点については、たしかに労働能力喪失率を控え目に認定されるケースは少なくないものの、これを完全に否定する事例も少ないというデータがあります。

 そこで、この点を資料を示しながら粘り強く交渉し、最終的には自賠責保険金461万円のほかに、2000万円超の損害が認められることになりました。

 また、過失についても、保険会社からはかなり厳しめの提案がきていましたが、交渉により、保険会社提案の割合から10%修正させることができました。

 

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