死亡事故で近親者慰謝料を考慮して相場を上回る額で和解したケース
事案の概要
事故の状況は、被害者がバイクで十字路交差点を直進しようとしたところ、右折のトラックにはねられたというものでした。
被害者は大腿骨遠位端開放骨折、橈骨・尺骨遠位端骨折、頭骨骨折、肋骨骨折、恥骨骨折、等の多数の骨折のほか、外傷性クモ膜下出血・脳挫傷の重傷を負いました。
事故直後はせん妄状態で意思疎通は困難で、入院を経て意思疎通もできるようになったものの、事故前の状態まで回復することなく施設に入所されることとなり、施設で亡くなられました(直接の死因は貧血となっています)。
弁護士の活動
後遺障害認定の検討
本件は、被害者のご家族がご相談にみえられ、当初は高次脳機能障害について後遺障害認定を受けてから、加害者側と賠償交渉を行う予定でした(その時点ではご本人様も意思疎通はできる状態でした。)。
しかし、後遺障害診断書の取り付けがスムーズにいかず、自賠責保険会社への申請の準備に時間がかかっていたところ、ご本人様が亡くなられたため、後遺障害認定ではなく死亡事故として加害者側へ賠償金の請求を行うこととしました。
示談交渉~訴訟提起
本件は、当初は保険会社とやり取りをしていましたが、ご本人様が亡くなられたことから、相手方に弁護士がつくこととなり、事案の性質上、訴訟提起が望ましかったため、訴訟提起をすることとなりました。
また、それに先立って、自賠責保険会社に対して死亡事故として保険金の請求を行い、自賠責保険会社において事故と死亡の間の因果関係が認められ、保険金が支払われることとなりましたので、不足分について訴訟提起をしました。
訴訟~和解
本件の裁判での争点は過失割合や逸失利益など複数ありましたが、特に重要だったのは慰謝料の額です。
死亡事故の場合の慰謝料の額は、家族構成(扶養している家族の有無)や被害者の年齢などが重視されて決められる傾向にあります。
本件では、ご本人様の事故当時の年齢は81歳で、一人暮らし、同居している家族もいないという状況でした。
慰謝料の額の目安は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)が参照されることが多いですが、このように単身で扶養する家族のいない被害者の場合、2000万円~2500万円が相場とされていて、さらに、高齢の被害者の場合は、若年の被害者と比較すると低額になる傾向があるため、本件のような高齢の被害者の場合は、この下限に近いものとされています。
したがって、本件の場合2000万円程度が慰謝料の目安となります。
しかし、本件では、慰謝料を増額するための事情を説明し、最終的に、死亡慰謝料として2300万円(近親者慰謝料含む)が和解金として認められ、これに入院慰謝料300万円を加えて和解することができました。
※実際の賠償金は、逸失利益等を加算した上で、事故状況による過失相殺もありました。
ポイント
上記のように、本件では死亡慰謝料の額がポイントとなりましたが、本件で特徴的だったのは、ご本人様に6名のお子様がいらっしゃったということです。
死亡事故の場合、民法711条により、被害者本人だけでなく、身近な人を亡くした近親者にも固有の慰謝料が認められることになります。
そして、上で述べた目安金額には、この近親者慰謝料の額も含まれているとされています。
しかし、このような考え方をとると、同居したり扶養したりしている家族がいない被害者の場合、近親者がいてもいなくても慰謝料の総額は変わらないこととなり、近親者慰謝料が考慮されていないのと同様の結果になります。
それでは近親者固有の慰謝料が認められている意味がありませんので、この裁判では、生前の被害者と家族との交流状況等について説明し、被害者本人の慰謝料に加算する形で近親者慰謝料を認めてもらうことができました。その分目安金額よりも慰謝料の額が高くなっています。
このように、交通事故の損害賠償では目安となる「赤い本」という基準がありますが、それをそのまま使用していればよいというわけではなく、事案に応じて修正する必要もあります。
また、今回は説明を割愛していますが、死亡事故の場合、訴訟提起をすることにより相手方と有利な条件で和解できる可能性があります。
死亡事故の場合、どのように手続を進めていけばよいか、賠償金額はどれくらいが適正なのかを判断するのが難しい部分がありますので、弁護士へのご依頼を強くおすすめします。

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