後遺障害等級12級6号が認定され約580万円獲得した事例
今回は,当事務所で取り扱った交通事故の案件の中で,後遺障害等級12級6号が認定された事例をご紹介します。
事案の概要
事案は,自転車で横断歩道を横断中,左側から交差点に進入しようとした自動車に衝突されたというもので,被害者は,右手舟状骨骨折の傷害を負いました。
治療中の慰謝料等についてはご自身で示談をした後で,後遺障害に関する申請からの依頼となりました。
当事務所の活動
被害者請求
本件では,右手関節の可動域制限や疼痛等の神経症状が残存しており,後遺障害の認定が見込まれました。
そこで,各種資料を取り寄せ,被害者請求によって自賠責保険会社に保険金請求を行いました。
事前認定による申請もあり得たところでしたが,被害者請求は,提出書類を吟味できるほか,事前認定よりも早く賠償金を獲得できるというメリットがありますので,被害者請求を行いました。
申請の結果,可動域制限について,後遺障害等級12級6号が認定され(疼痛は可動域制限と通常派生する関係にあるため,これに含まれる。),保険金として224万円が支払われました。
相手方保険会社との交渉
自賠責保険は,あくまでも最低限の補償を迅速に行うためのものですので,被害者に対する賠償としては不足しています。
そこで,その分をカバーするための保険である,加害者側の任意保険会社に対して,差額の支払いの交渉を行いました。
当初,相手方は,慰謝料の額を裁判基準の8割,逸失利益は労働能力喪失期間を10年間と主張し,過失分と自賠責分を除いた最終の支払額を約220万円としていました。
しかし,弁護士が交渉を行った結果,慰謝料は満額,逸失利益は労働能力喪失期間が15年となり,最終の支払額は約360万円となって,140万円の増額に成功しました(弁護士介入後の獲得金額は約580万円)。
交渉のポイント
後遺障害に関する損害賠償の場合,将来にわたって発生する損害を予測することになりますので,どうしても金額が不明確になる部分があります。
このケースの場合,特に問題になるのは逸失利益の部分で,逸失利益とは,将来後遺症を原因としてどの程度の減収が発生するのかを予測して請求するのですが,これは,厳密に予測することは不可能なので,通常は,事故前の収入に認定された後遺障害の等級に応じて決められた労働能力喪失率をかけ,その減収がどの程度の期間続くのかという形で計算します。
今回認定された12級6号の場合だと,労働能力喪失率について争われることはあまり多くなく,争いになるのは減収が何年間続くのかという形で争われることが多いです(労働能力喪失期間)。
後遺障害は,基本的に永久に残存するものについて認定されるものですので,単純に考えると,働ける間は減収が続くということになります(一般的には67歳までとされます。)
ところが,実際には,そもそも労働能力喪失率どおりに減収が生じていなかったり,将来改善する可能性があるといった事情から,労働能力喪失期間で調整が行われることがあります。
また,むち打ち症に関して12級の13号が認定された場合,労働能力喪失期間が一般的に10年間とされることが多いことから,保険会社は12級となると10年という主張をしてきます。
12級6号の場合,基本的に,画像を見て可動域制限の原因が分かるような場合でなければ認定されず,画像上はっきりと原因が分かるような場合であれば,一生涯改善の見込みはないと考えられますので,労働能力喪失期間も基本的に67歳までと考えられます。
しかし,減収がないような場合には,裁判をしても見込んだとおりの金額が認められるとは必ずしも限りません。
本件の場合,ご本人の早期解決のご意向が強かったことや,慰謝料は満額となっていたこと,労働への支障も現時点ではそれほど大きくなかったことから,労働能力喪失期間を15年とすることで示談としました。
コメント
後遺障害は,等級の数字だけではなく,どういった後遺症に対して等級が認定され,実際にどのような支障が生じているのかということを見ながら,適正な賠償金額を判断していくことになります。
本件のような12級6号と,神経症状について認定される12級13号とでは,賠償上の違いがありますし,その他の等級(例えば変形障害や醜状障害など)の場合でも,特別な考慮が必要となることがあります。
この辺りの判断は,専門家でなければ難しいところですので,後遺症が気になる場合は,おひとりで悩まれずにお気軽に弁護士にご相談ください。当事務所では無料相談も実施しております。
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