後遺障害14級9号【右肩関節痛・代表役員】裁判で約110万円→約550万円

2022-09-22

事案の概要

 事故状況は、被害者が自動車を運転して優先道路の交差点を直進していたところ、右方から交差点に進入した車が衝突してきたというものです。

 被害者は、右肩腱板損傷や頚部挫傷といった診断名で約1年間通院をしたものの、右肩関節痛の症状が残存し、後遺障害の事前認定を受けた結果14級が認定されたものの、保険会社の示談金の提示額が低かったためご相談となりました。

当事務所の活動

 既に後遺障害認定済みの事案で、特に異議申立てのご希望もなかったため、すぐに示談交渉を開始しました。

 元々保険会社(正確には共済)が示していた金額は、他の事案と比較しても著しく低く、後遺障害部分については自賠責保険の定額分のみというものでした。

 当事務所で示談交渉をした結果、2.5倍ほどにはなりましたが、通常想定される賠償金の額よりも非常に低かったため、裁判での解決を求めることになりました。

 結果として、裁判所から和解案が提示され、それを双方が受け入れる形で解決することができ、金額も当初の約5倍となりました。

ポイント

 この裁判では多くの争点がありましたが、大きなポイントは、会社の代表取締役であったというところにありました。

 会社役員の場合、一般的な給与所得者(サラリーマン)とは大きく異なる以下の3つの点があります。

 1つ目は、使用者側の立場ですので、出退勤が厳しく管理されていないということです。

 2つ目は、役員の場合、仕事を休んでも報酬が減額されないことが多いことです。

 3つ目は、賠償金の計算をするときに、実務上、役員報酬額の全額を対象とするとは限らないということです。

 →詳しくは「社長・役員の休業損害(休業補償)の交渉」

 

 本件では、被害者が日常的に行っている業務の内容と事故後の変化、後遺症が残ったという事実やカルテの記載、会社の構成や他の従業員の給与の額といったことを示しながら、実際に仕事に支障が生じていること、報酬の中の労働対価部分の証明を行いました。

 また、休業損害については、役員報酬の減額がなかったため、本来であれば反射損害として会社から請求を出すべきところだったと思いますが、本件では、被害者がいわゆる一人会社の株主兼社長という特徴があったため、そのまま被害者個人の損害として認めてもらうことができました。

まとめ

 保険会社は、役員であるというだけの理由で休業損害や逸失利益の存在を否定してくる場合があります。

 しかし、難しい問題はあるものの、実際に休業や業務への支障が生じているのに、これが認められないということはありません。

 役員の休業損害・逸失利益は、賠償上何がどういった理由で問題となるのかをよく理解した上で、資料を示しながら適切に自分の主張を整理する必要があります。

 この交渉は難しいものとなることが多いので、弁護士にお任せください。