鎖骨の変形障害の後遺症で逸失利益を270万円から660万円に増額した事案

2024-04-02

事案の概要

 本件は、視界が悪い道路をバイクで走行中の自損事故で、被害者は、鎖骨骨折、肋骨骨折などの傷害を負いました。

 本件は加害者がいる事故ではないため、自身で加入されていた人身傷害保険によって治療費などの補償を受けていましたが、鎖骨骨折部は元通りにはならず、変形障害を残すこととなりました。

弁護士の活動

後遺障害認定の結果

 本件は、加害者がいない事故で、加害者の自賠責保険を使うことはできませんが、人身傷害保険を使用する場合でも、自賠責保険と同様に後遺障害等級の認定が行われます。

 本件の場合、認定された後遺障害等級は、自賠法施行令別表第二第12級5号の「鎖骨に著しい変形を残すもの」でした。

 他に、肩関節可動域制限と骨折部の疼痛などもありましたが、可動域制限については認定の対象となる数値までわずかに足りず、疼痛は、上記変形障害から派生する障害にあたるため、変形障害に含まれて評価される(別途評価はしない)ことになりました。

保険会社との交渉

 人身傷害保険の場合、慰謝料の計算方法は契約(約款)で定められていますので、一般の交通事故の事案のように、保険会社と交渉して増額させることはできません。

 しかし、後遺障害等級が認定された場合、後遺障害逸失利益の計算が、人身傷害保険の契約に照らしても妥当ではないことが少なからずあります。

 本件でも、弁護士が見て、後遺障害逸失利益の計算が正しく行われていないと考えられましたので、この点の交渉を行いました。

 その結果、逸失利益の額が2倍以上となって保険金の支払を受けることができました。

ポイント

 後遺障害逸失利益の増額交渉は、加害者がいる場合に行う任意保険会社との交渉とほとんど変わりません。基礎収入の設定が人身傷害保険の方が有利になっていることはありますが、労働能力喪失率や労働能力喪失期間といった金額に大きく影響する部分についての考え方は共通しています。

 本件の場合、鎖骨の変形障害という、裁判実務上も後遺障害逸失利益が生じるかどうかに見解の違いがあるようなケースで、保険会社からも、「通常労働能力の喪失は想定されない」などとして、金額を著しく少なく認定されていました。

 しかし、本件の場合、たしかに、一見すると後遺障害の対象となったのは鎖骨の変形障害のみに見えるのですが、その他に骨折部の痛みがあり、可動域制限についても、等級認定にはわずかに届かなかったものの、相当程度生じていたほか、現実に事故前に行っていた仕事を辞めざるを得なくなるほどの生活に支障も生じていましたので、適切に評価されていないことは明らかでした。

 そこで、弁護士が、参考文献やカルテの記載内容を指摘しつつ、逸失利益の存在を丁寧に説明していった結果、後遺障害逸失利益が当初の2倍以上とすることで合意に至ることができました。

 鎖骨の変形障害は、後遺障害の中でも逸失利益の算定が難しいケースではありますが、関連する専門書を読みこみ、どういった議論があるのかを熟知した上で、裁判の傾向を掴んでいれば、どの辺りが妥当な金額なのかを知ることができ、それによって交渉を有利に進めていくことができます。

 当事務所では、人身傷害保険の場合でも、後遺障害逸失利益の増額交渉をお受けしておりますので、金額にご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

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