後遺障害14級9号【頚椎捻挫後の疼痛】で0円→130万円
事案の概要
事故状況は,コンビニエンスストアの駐車場内の事故で,駐車スペースに駐車していた車両同士が,同じタイミングで駐車スペースから出ようとしたところ,衝突してしまったというものです。
被害者は,頚椎捻挫・腰部挫傷の傷害を負って通院加療を続けていましたが,頚部痛・腰部痛が後遺症として残ることとなりました。
当事務所の活動
依頼前の状況
本件は,どちらも駐車スペースから出ようとしていた車両で,特に優先関係は見られず,過失については5分5分とするのが妥当なケースでした。
そのため,人身損害については,加害者に対して過失割合に応じて支払いを求めることはせず,被害者が加入していた人身傷害保険を利用して治療を受けていました。
また,人身傷害保険によって,頚部痛について後遺障害等級14級9号が認定されたため,これに応じて人身傷害保険金が支払われました。
本件は被害者の過失が大きいため,人身傷害保険金の支払いを受けた場合,通常であれば,加害者から追加の支払を受けることは困難です。
したがって,加害者側の保険会社との間で交渉を行う余地はほとんどなく,特に動きはありませんでした。
依頼後の対応
本件は,人身傷害保険から先行して支払いが出ているケースであったため,加害者側から支払いを受ける賠償金額の計算にあたって,人身傷害保険会社に請求権が移った分を差し引くという処理をする必要があります。
例えば,裁判基準で損害合計額が400万円,過失割合50:50の場合で,人身傷害保険金として300万円を受け取っていたような場合,加害者側への請求額は200万円(400万円の50%)ですが,300万円の範囲で請求権が人身傷害保険会社に移りますので,加害者側としては,追加の支払に応じることはできないということになります。
ただし,人身傷害保険の約款により,加害者との間で「判決または裁判上の和解において人身傷害条項損害額基準に基づき算定された損害の額を超える損害の額が確定し,その基準が社会通念上妥当であると認められるとき」は,その金額を元に,被害者の過失分に人身傷害保険金を充てることとなっていますので,この仕組みを利用して,加害者に追加請求を行うことが考えられます。
※人身傷害保険の仕組みについて詳しくはこちら→「人身傷害保険で過失分をカバーする」
本件でも,交渉で追加の支払を受けるのは困難でしたので,特に事前交渉をすることなく,直接訴訟提起を行いました。
その結果,既に支払われていた人身傷害保険金の他に,交渉では支払いを受けることが困難であった130万円の支払いを加害者から追加で受けるという形で和解することができました。
ポイント
事故の発生について,被害者の過失も大きい場合,人身損害については自賠責保険を利用して補償を受けることが考えられます。
自賠責保険は,自分の過失が著しく大きくない限り,過失に関係なく保険金が支払われるという特徴があり,過失に応じて加害者から支払いを受けるよりも,補償が手厚くなることがあるのです(※ただし,保険金に上限があります。)。
また,自賠責保険の他に,自身が加入する人身傷害保険を利用するという方法もあり,この方法を用いると,自賠責保険から保険金の支払いを受けるよりも手続きが簡単で,基本的に自賠責保険と同等以上の支払を受けられますので,人身傷害保険の加入がある場合,これを利用するとよいでしょう。
その場合,裁判を利用することで,人身傷害保険金の支払いを自身の過失部分の補填に充てることが可能となりますので,人身傷害保険が使えなかった場合と比較して,さらに大幅に補償額が増やすことも可能です。
ただし,この方法を使うには,裁判を起こすことで,人身傷害保険の保険会社の求償額を変更するという処理が必要となり,弁護士のサポートがほぼ必須となります。