後遺障害14級【頚椎捻挫・会社員】で休業損害が比較的大きい事案

2023-10-05

事案の概要

 事故状況は、被害者が自転車で道路の左側を走行していたところ、路肩に停車していた加害車両が突然発進し、被害者の乗る自転車に後方から追突したというもので、被害者は転倒し、腰部や肩の打撲、頚椎捻挫の傷害を負いました。

 その後、被害者は通院を継続していましたが、事故から約7か月が経過した時点で保険会社から治療の打ち切りを告げられたため、ご依頼となりました。

当事務所の活動

治療の打ち切り

 まず、治療の打ち切りについては、弁護士から主治医に対して意見を照会するところから始めました。その結果、医師からはまだ症状の改善が続いており症状固定には至っていないとの回答を得られました。

 この点については、一旦打ち切りになった治療費の支払いが再開するには至らなかったものの、後日行った示談交渉の際に考慮されることになりました。

後遺障害認定

 その後、通院を継続したものの完治する見込みが薄くなったため、後遺障害の被害者請求を行うことになりました。

 後遺障害診断書見ると、「症状固定日」の記載が保険会社による治療の打ち切り日となっていましたが、主治医の見解によればそれは妥当ではないため、症状の改善が見込めなくなった日に訂正をしてもらいました。

 そして、申請の結果、後遺障害14級9号が認定されることになりました。

示談交渉

 示談交渉では、まず、症状固定時期(どこまで治療費を支払うか)が問題となりました。

 相手の保険会社が治療費を打ち切った、事故から7か月というタイミングは、一般的な頚椎捻挫の症状固定時期としてはおかしなところはありません。

 ただ、本件の場合、主治医が明確に症状固定に至っていないということを真摯に答えてくれていたので、その意見書を元に交渉を行いました。

 その結果、症状固定時期そのものを変更することはなかったものの、慰謝料部分で通常の金額に加算した額での支払いが認められることになったほか、休業損害の算定は後述のようにこちらの主張に沿ったものとなりました。

 次に、本件は、休業損害の額が比較的大きいという問題がありました。

 もっとも、この点については、休みが長期にわたって続いたというような事案ではなく、通院時に早退をしていたところ、通院期間が比較的長期になった結果、トータルの休業時間が長くなったというものでした。

 この点は、現実に収入の減少が生じている以上、妥協は難しいところでしたので、強く交渉を行った結果、治療の打ち切り後の分も含めて請求額どおり認められました。

 後遺障害部分については、逸失利益は裁判の相場に基づいて労働能力喪失期間を5年として計算を行い、慰謝料は裁判基準の90%を超える額で示談をすることができました。

 その結果、自賠責保険金75万円と合算して約560万円を獲得することができました。

 金額がやや大きいのは、休業損害が190万円となったためです。

ポイント

 本件は、症状固定時期と休業損害が特にポイントとなりましたが、どの辺りで示談をするべきかは、むち打ち症の一般的な治療期間がどうなっているのか、症状固定とはどういう概念なのか、主治医の意見はどの程度尊重されるべきなのかといったことを考えて行う必要があります。

 今回は、症状固定時期自体を延長するには至りませんでしたが、その分慰謝料額で調整をすることができたので、示談としてはいい形がとれたのではないかと思います。

 その際に主治医の意見書が重要なポイントになったことはいうまでもありません。

 休業損害についても同様に、むち打ち症の場合にどの程度の休業が一般的に必要になるのかを参考にしつつ、被害者の職業に照らして妥当な金額を検討する必要があります。

 今回は、通院のための早退でしたので、この問題が正面から問題となったわけではありませんが、金額的には大きくなったので交渉が必要となりました。

 この点も、単純に金額だけで見るのではなく、休業損害が大きくなった具体的な事情を考える必要があります。