道路交通法と過失割合の関係

2022-06-02

 交通事故の相談を受けていると、インターネットで色々と調べてこられる方もいます。

 その際、過失割合について、「相手は道路交通法〇条違反だから、こちらに過失はないですよね?」と言われることがあります。

 しかし、道路交通法は過失割合を決める際に、重要な手掛かりとはなりますが、それだけでどちらにどれだけ有利かは分かりません。

 今回は、道路交通法と過失割合の関係について解説します。

 

被害者側にも道路交通法違反はある

 道路交通法には、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」という条文があります(70条)。

 この条文はいわゆる一般規定というもので、内容は非常に抽象的で、簡単に言うと、「安全に運転しなければならない」ということです。

 そして、被害者側も、完全に「安全な運転」をしていれば、追突事故のような場合を除き、ほとんどのケースで事故を回避することが可能です。

 例えば、優先道路であっても、見通しが悪い交差点があれば、そこから車や自転車が飛び出してくる可能性があるので、慎重に運転し、カーブミラー等を確認するといったことです。

 現実には、そこまで慎重に走っていない車も多数ありますが、「みんながそう運転しているからいい」ということにはなりません。

 つまり、事故が現実に起きている以上、ほとんどの場合で被害者側にも何らかの落ち度があり、その落ち度は、道路交通法70条違反になり得るということです。

 保険会社の担当者が「動いているもの同士なので0:100」にはならないというのはこの趣旨です。

 したがって、被害者側にも道路交通法違反はある以上、相手に道路交通法違反があるからといって0:100になるわけではありません。

道路交通法が過失割合に与える影響

 では、道路交通法の定めが過失割合と関係がないのかというとそういうわけではなく、実際の過失割合は、道路交通法の定めを参考にしつつ、様々な事情を考慮して決定されることになります。

 例えば、道路交通法を見れば、交差する道路でどちらが優先するのかを明らかにすることが可能です。

 一時停止の規制があれば、道路交通法43条により、停止線の直前で一時停止をした上で、交差道路を通行する車両等の進行を妨害してはならないとされていますので、実際に一時停止をしたかどうかにかかわらず、交差道路を通行する車両に対して劣後することになります。

 一方で、優先車の方でも、道路交通法42条1により、「左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとしするときは徐行しなければならない」とされています。つまり、たとえ優先車であっても徐行していなければ、道路交通法42条1号に違反しているということになります。

 この類型では、劣後車が一時停止無視をしていたとしても、優先車が徐行して注意しながら走行していれば、多くの場合は事故に至らないと考えられますので、この類型では、多くのケースで、被害者側にも道路交通法違反があるわけです。

 相手側に一時停止の規制があれば、優先する方は特に脇道を気にせずに制限速度内で進んでいいと思って運転している人が多いと思いますが、道路交通法上は誤りです。

 もっとも、この徐行義務は、道路が「優先道路」であった場合には課されていません。

 道路交通法上の「優先道路」とは、標識により優先道路であることが明らかにされているか、交差点の中まで中央線や車両通行帯の表示が連続しているものをいいます(道路交通法36条2項)。一時停止の規制があるのみでは、ここでいう「優先道路」とはなりません。この点は誤解が多いところです。

 しかし、優先道路だからといって、歩行者が出てくる可能性もありますし、全く注意せずに走行していては、とても「安全な運転」とはいえません。

 したがって、優先道路を走行していたとしても、道路交通法70条違反を免れるわけではありません。

 ただし、「優先道路」ではない場合と比較すると、明確に徐行義務が課されているわけではないため、過失割合の点でも、「優先道路」に当たる場合の方が若干有利になっています(10%程度)。

まとめ

 このように、道路交通法でどのような規制がされているのかを見ると、どちらが優先するのか、また、一時停止の規制があるのみの場合と優先道路の場合といったように、類型ごとに比較した場合に、どちらをより被害者に有利にすべきかといったことが分かります。

 とはいえ、そこから直ちに、過失割合が30:70だとか具体的な数字が導かれるわけではありませんので、過去の裁判でどういう判断がされてきたのかといったことを踏まえた上で、相場を掴む必要があります。

 少なくとも、相手の道路交通法違反を指摘できれば勝てるといった簡単な話ではないのです。

 

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