過失割合50:50から20:80に変更した事例

2018-05-18

 今回は,当事務所で取り扱った交通事故の案件の中で,弁護士が交渉を行ったことで過失割合が大きく変更されたケースについてご紹介します。

 

事案の概要

 事案は,交差点を通過した被害者の乗った自動車が,交差点の先にある住宅の前を通過しようとしたところ,その住宅の駐車スペースにバックで駐車すべく右側に停車していた加害者の車両が,バックのために膨らんできたために衝突してきたというものです。

 被害者は,円満解決を望んでいて,自分も動いていたこともあったので,多少減額されても仕方がないと当初思っていたのですが,加害者から,60対40と思ったより減額を主張されて驚いていたところ,話をしているうちに50対50などと言われるようになったため,当事務所にご依頼いただくことになりました。

 

交渉経過

 事故は,被害者が加害者の車の横を通過しているときに,突然加害者の車が膨らんできたというものであったため,被害者にとって回避することは非常に難しいものでした。

 そのため,過失割合が50対50ということはあり得ないと考えられましたので,まずはその旨を道路交通法の条文などを引用しつつ説明しました。

 これに対し,おそらく相手の保険会社は,加害者の責任が大きくなることについて異存はなかったようなのですが,加害者本人が頑として譲らず,話し合いが平行線となってしまいました。

 このような背景として,調査会社が行った調査の結果が50対50とされたことがあるようでした。

 調査会社というものは耳慣れない方が多いかと思いますが,保険会社が過失割合の認定をする際に,判断に迷った場合,外部に調査を依頼することがあるのです。

 そのため,そのような結果を受けてか,加害者本人が非常に強気になっていました。

 

訴訟の提起

 話し合いでは妥当な解決が図れない可能性が高まったことから,被害者と協議の上で,裁判で決着をつけることとしました。

 裁判では,刑事記録(今回の場合は物件事故報告書というものになります。)を警察から取り寄せ,各種証拠と共に裁判所に提出することになります。

 また,裁判所の判断を仰ぐため,こちらの主張が認められるように内容を訴状という形にして整理します。

 そして,準備が整ったので,実際に裁判所に書類を提出しました。

 裁判所に書類を提出すると,裁判所から加害者本人に対して書類が送られることとなります。

 

和解の成立

 そうして,裁判の日にちも決まって備えていたのですが,相手の保険会社から,加害者本人が過失割合20対80とすることに応じるとの連絡がありました。

 被害者は,元々円満解決を望んでおられたこともあり,これに応じることとしました。

 その結果,実際に裁判が始まる前に訴えを取り下げることとなり,意外な形で解決となりました。

 

ポイント

 過失割合は,通常,別冊判例タイムズNo.38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会 編)を参考にして決められることが実務上定着しています。

 これは,相手方の保険会社も同様ですので,一般的な事故類型であれば,保険会社から極端におかしな過失割合が示されることはほとんどありません。

 しかしながら,本件は,自宅の駐車スペースに入れるために対向車線に一度停車し,そこからバックのために膨らんできて被害車両にぶつけるというもので,およそ通常では起こり得ないような事故類型でした。

 そのため,この本に書かれている基準をそのまま使うことができず,そのような場合,本の内容を参考にしつつも,妥当な過失割合を当事者の間で話し合って決めなければなりません。

 このときに,調査会社というものが出てきて過失割合について見解を述べることがありますが,調査会社は,法的な資格に基づいて過失割合を判断しているわけでなく,弁護士から見たときに見当違いの見解を述べることが少なくありません。

 しかし,保険会社は,この判断をかなり重視することがありますので,それがおかしいことについて丁寧に説明する必要があります。

 また,それ以上に過失割合の交渉が難しいのは,あくまでもどちらが悪いのか?という感覚的な問題なので,形式的な基準がないとなると加害者本人が素人判断で見当違いの過失割合を主張してくることがあるということです。

 そうなると,なかなか理論的な説得が通じないことがあり,今回のように訴訟に踏み切らざるを得ないということも出てきます。

 ただ,それでも根気強く丁寧に説明をすることで,最終的には合意に至ることもありますので,この辺りは弁護士の力量が試されるところかもしれません。

 

まとめ

 過失割合の交渉は,慰謝料の交渉とは違って,加害者本人の意向なども絡んで難しいことが多い部分です。それでも,粘り強く交渉することで過失割合が変更されることも少なくありませんので,相手方が明らかに不当な主張をしているような場合には,一度弁護士にご相談されることをおすすめします。