症状固定後の通院
「症状固定」の意義
交通事故の治療費などの支払いは、無限に続くわけではなく、どこかで区切りをつけて、以降の補償は「後遺障害」という形で行われています。
そのため、通院をしても症状が良くならないということになってくると、保険会社から治療費の支払いを打ち切られることになります。
この区切りのタイミングになったことを「症状固定」といいます。
「症状固定」とは文字どおり症状が固定して治療をしても改善が見られなくなった状態を指します。
この「症状固定」になると、治療費や休業損害の支払いはなくなります。
休業損害については、後遺障害逸失利益という項目で、後遺障害等級に応じて支払われることになります。
また、治療費については、後述のように、症状の改善に役立っていないということになるので、支払いの対象から外れることになります。
それでは、「症状固定」となった後に通院をしたい場合、どのように扱われるのでしょうか?
これには、大きく分けて2つのパターンがありますので、それぞれ解説します。
①保険会社だけが一方的に言っている場合
保険会社から打ち切りを通知されたとしても、実際には「症状固定」に至っていないこともあります。
「症状固定」の考え方は上記のとおりで、治療が症状の改善に役立っているかどうかが重要なポイントになります。
したがって、治療の効果が十分に出ているにもかかわらず、保険会社が短期間で打ち切りを言ってきたような場合、そもそも「症状固定」には至ってはいませんので、加害者は治療費の支払いを免れることはできません。
このような場合、一旦治療費を自分で立て替えた上で領収証を保管し、後日保険会社に対して請求することになります。
このとき、注意しなければならないのは、治療の効果が出ていたとしても、いわゆる対症療法に過ぎず、一時的に症状が和らいでも、時間が経つと元に戻ってしまうという一進一退の状態の場合、やはり「症状固定」とみなされる可能性があるということです。
治療直後の改善状況だけでなく、例えば1か月前と比べてどうなのかを見極めるようにしてください。
実際には「症状固定」になっていないのであれば、後でそのことが検証できるように、主治医に意見書のようなものを作成してもらうことも検討しましょう。
②実際に「症状固定」に至っている場合
損害賠償の基本は「原状回復」です。
事故がなかった状態に戻すために必要なことを金銭による賠償という形で行います。
したがって、治療をしても元に戻らないのであれば、無駄な治療であるともいえるので賠償の対象とはならないことになります。
この場合、治療を継続することは自由ですが、その治療費は加害者側からの支払いの対象ではなくなります。
ただし、これには例外があり、何も治療しなければ、症状固定時の症状を維持することができず、かえって悪化してしまうというような場合には、症状固定後であっても治療費が加害者側の負担とされることがあります。
また、人工関節の交換手術のように、将来確実に追加の手術が必要となるような場合、この費用も加害者側の負担となります。
まとめ
このように、「症状固定」と保険会社から言われた場合、まず、本当の意味で「症状固定」となっているかどうかで対応が変わります。
「症状固定」になっていないのであれば、主治医にそのことを確認し、証拠として残してもらうことが重要です。その上で、示談交渉の際に、「本当の症状固定」の時期までの治療費等の支払いを請求しましょう。
これに対し、実際に「症状固定」に至っているのであれば、症状を一時的に緩和する効果があったとしても、治療費の支払いを相手に負担させることは困難です。
この場合は基本的には後遺障害等級の認定を受けることを検討します。
また、将来手術を予定しているなど、例外的に症状固定後の治療費を相手に負担させることができる場合には、忘れずにこれを請求するようにしましょう。