主婦の休業損害を含め約180万円の支払いを受けた事例(治療費は除く)
今回は,当事務所で取り扱った交通事故の案件の中で,兼業主婦をされていた被害者の方の事例をご紹介します。
事案の概要
事案は,停車中の被害車両に,前方から突然バックしてきた加害車両が衝突してきたという交通事故です。
自営業を営みながら通院をすることとなるなど,事故後の対応に不安な点も多かったことと,弁護士費用の特約にご加入されていたこともあって,事故当初からのご依頼となりました。
当事務所の活動
弁護士がお話を詳しく伺ったところ,事故後の通院や症状の影響から,たしかに自営のお仕事への影響があり,その分の休業損害の請求も可能なケースでした。
しかし,自営業の休業損害の場合,休業が必要だったのか,あるいは,必要だったとしてどの程度の休業が必要だったのかという点で難しいところが多く,金額の計算も,相手方の交渉では争いとなることが少なくありません。
他方で,今回の場合,自営の仕事の他に主婦業もされている方であったところ,実務上で認められる主婦業に関する休業損害の金額は決して低くありません。
そこで,休業損害については,治療終了後,主婦の休業損害として請求することにしました。
なお,今回は,特に後遺症は問題となりませんでした。
相手方保険会社との交渉
今回は,初回に賠償金額の提示を受ける前に,保険会社の担当者と簡単な交渉を行っていましたので,初回の提示額の時点で約128万円の提示を受けていました。
しかし,その後,さらに交渉を進め,最終的に約180万円の支払いを受けることで示談が成立しました。
交渉のポイント
兼業主婦の休業損害の計算
まず,兼業主婦の休業損害なのですが,一見すると,実際に休んだ仕事の損害分しか加害者に請求できないという感覚になるのではないでしょうか。
しかし,実務上,専業主婦の場合でも,女性労働者の平均賃金を使って賠償の請求ができるとされており,パートなどをしながら兼業主婦をしている人が,専業主婦の場合よりも受け取れる賠償金の額が小さいというのは不合理ですので,現実の収入額と女性労働者の平均賃金を比較して,高い方を用いて賠償金の計算をすることが認められています。
自営業の休業損害の請求の難しさ
自営業の休業損害の請求が難しいところは,実際に休業したのか,休業をしたとして,その休業が本当に必要だったのかが容易に分からないという点にあります。
サラリーマンであれば,実際に休業していたかどうかは会社に問い合わせれば分かりますし,会社との関係上,不必要に休業を続けることも通常はできません。
そのため,サラリーマンであれば,極端な休業の仕方をしなければ,この点が問題になることはあまり多くありません。
逆に,自営業であれば,誰かに勤怠を管理されているわけではないので,この点の検証が非常に難しいのです。
そのため,保険会社は,自営業の場合の休業損害の認定について厳しい態度をとってくることが多いです。
さらに,自営業の場合,所得の低下の他に,固定経費が無駄になるという問題もあります(例えば,休業していても発生するような店舗の家賃など)。
このような経費分も加害者に請求することが可能なのですが,この点も保険会社はすんなりとは認めません。
このように,自営業の休業損害について,適正な額の支払いを受けることは,一筋縄ではいきません。
主婦の休業損害として請求した理由
これに対し,主婦業の場合,まず基礎収入に関しては,実務上の考え方は固まっていますので,ほとんど問題になりません(保険会社は自賠責基準の5700円を主張することもありますが…)。
休業の日数については,明確な決まりがなく争いになりやすいところではありますが,自営業の場合よりは,緩やかに認められることが多いように思います。
この辺りは,同種の過去の事例のデータを元に妥当なラインを探るほかありません。
いずれにしても,今回は,支払いを受けられる金額の見込みを考慮して,主婦の休業損害として請求を行いました。
コメント
今回は,保険会社との交渉であまり争いになりませんでしたが,通常,主婦の休業損害の額はかなり大きな争いになります。
したがって,一般的には,弁護士が交渉を行ったからといって,このケースのようにすんなりと支払いが受けられるとは限りません。
しかし,そのように元々難しい問題であるからこそ,ご自身で解決することが一層難しい部分でもあります。
主婦の休業損害は,そもそもそのような賠償が可能であること自体気付かないことも多いのですが,金額は決して小さくありません。交通事故で負ったケガの影響で主婦業に支障が出ているような場合には,まずはお気軽に弁護士にご相談ください。当事務所では無料相談も実施しております。