12級8号【TFCC損傷後の変形障害】で1230万円→1460万円
事案の概要
事故は十字路交差点の出合い頭事故で,被害者は,右手関節TFCC損傷,左肋骨骨折,左血胸などの傷害を負いました。
治療により症状は軽快したものの,TFCC損傷による変形障害や疼痛等が残存し,「長管骨に変形を残すもの」として,後遺障害等級12級8号が認定され,保険会社から賠償金額の提示があった段階での依頼となりました。
当事務所の活動
本件は,元々相手方から既払金を除いて約1230万円の提示がされていて,それほど悪い金額ではありませんでした。
しかし,内容の詳細を見ると,慰謝料や逸失利益の計算について気になるところがありましたので,この点について交渉を行うこととしました。
その結果,最終の支払額が約1460万円となり,約230万円の増額となって示談することができました。
ポイント
本件の問題は,休業損害と逸失利益の計算の部分にありました。
被害者は,事故の少し前に自営に仕事を変えていて,それによって大幅に収入が増えていたのです。
それだけであれば,取引先の協力を得て資料を取り付け,給与の振込先口座の預金通帳の写しを提出するなどして収入の証明ができるのです。
しかし,今回の場合,給与が手渡しで実際の支払いを証明するものがない,給与から源泉徴収がされているものの,税金の面からもこれを裏付ける資料がないといった問題がありました(事故当年は未申告)。
このような場合,収入がゼロではないことは明らかであるものの,正確な金額を計算することができないということで,一般的な労働者の平均賃金を参考にして金額を計算することがあります。
本件の場合も,休業損害はそのまま請求した金額が支払われていましたが,逸失利益は平均賃金を用いて計算されることとなり,依頼前は,業種別の若干低い金額が用いられていました。
平均賃金と一言で言っても,学歴や業種によって差をつけるのか,平均賃金から一定割合を差し引くのかといった考慮が必要となることがあり,いずれにせよ重要なのは,「確実にその程度の収入は得ていただろう」と言えなければならないので,その点が本件では問題となりました。
交渉の結果,慰謝料の金額を増額できたことに加え,逸失利益の基礎収入も業種の限定を行わない形で計算を行い,結果的に増額に成功しました。
休業損害の収入の証明は,事故前の実績で判断されることとなりますので,事故の直前に仕事を変え,収入も増えたとなれば,審査も当然厳しくなります。
その場合でも,給与の支払いが振込みで行われるなどしていれば,金額の証明ができることは多いとは思いますが,そういった証明ができない場合には,平均賃金を使った計算などに頼らなければならなくなります。
本件の資料の状況等に照らすと,いい条件で示談ができたのではないかと思います。
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