後遺症の等級と慰謝料について
後遺症による慰謝料とは
交通事故によって怪我を負った場合,治療を継続しても元通りにならず,後遺症となることがあります。
後遺症による慰謝料とは,この後遺症によって生じる精神的な苦痛に対する賠償のことをいいます。
慰謝料は,目に見えない損害に対する賠償であり算定が困難ですが,実務上は,一定の基準に基づいて支払われることが多いです。
特に,後遺症による慰謝料については,裁判上も,多くの場合で後遺障害等級に応じた定額が支払われていて,現在の裁判での慰謝料額の相場は次のとおりです.
裁判基準・弁護士基準
第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6級 | 第7級 |
2800万円 | 2370万円 | 1990万円 | 1670万円 | 1400万円 | 1180万円 | 1000万円 |
第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
830万円 | 690万円 | 550万円 | 420万円 | 290万円 | 180万円 | 110万円 |
(「平成28年版・赤い本上巻」 日弁連交通事故相談センター東京支部)
これに対し,慰謝料に関する自賠責基準も存在します。自賠責保険や必要最低限の補償となるため,金額が小さくなります。
自賠責基準
別表第1の場合(常時介護及び随時介護が必要な場合の後遺障害として定められているもの)
第1級 | 第2級 |
1600万円 | 1163万円 |
別表第2の場合
第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6級 | 第7級 |
1100万円 | 958万円 | 829万円 | 712万円 | 599万円 | 498万円 | 409万円 |
第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
324万円 | 245万円 | 187万円 | 135万円 | 93万円 | 57万円 | 32万円 |
保険会社による支払い
後遺症による慰謝料については,治療期間中の慰謝料以上に基準が確立されているともいえますので,保険会社としても当然この基準を参考にして支払いを行ってもらいたいところです。
しかし,実際には保険会社が最初からこの基準にもとづいて支払いをしてくれるということは非常に少なく,場合によっては自賠責基準による金額を示されることもあります。
保険会社の対応例
例えば,14級の場合,弁護士基準(裁判基準)では,慰謝料額は110万円で,逸失利益は,基礎収入×5%×労働能力喪失期間(むち打ちの場合5年とされることが多いです。)のライプニッツ係数で計算されます。
上記の計算式では,逸失利益は年収500万円であれば,108万2375円となります(年収に応じて比例します。)(※)。
これに対して14級の場合の自賠責基準の慰謝料額は32万円で,逸失利益を含めた保険金の上限額は75万円ですが,任意保険会社は,この上限額のみの支払いを提案してくるということが見られます。
(金額の違いの例)
〇弁護士基準 慰謝料110万円+逸失利益108万2375円(年収500万円の場合)=218万2375円
〇保険会社の提案 慰謝料と逸失利益を合計して75万円
※民事法定利率5%で計算。民法改正により変更となる可能性があります。
弁護士による交渉
このように,後遺症による賠償金の額は,自賠責基準と弁護士基準(裁判基準)とでは大きく異なります。
そこで,この差額を支払うように任意保険会社と交渉をしていく必要があり,弁護士にご依頼いただいた場合,弁護士基準(裁判基準)による請求をしていくことになります。
ただ,後遺症による賠償金は,非常に高額になることが多く,保険会社も交渉ではなかなか支払いに応じないということもあります。
そのような場合,弁護士が過去にあった同様の交通事故事例を示しながら粘り強く交渉をしていくことになります。どうしても保険会社が満足のいく金額を出そうとしない場合,ご依頼者様とご相談の上で,裁判手続きを利用して適正な支払いを受けられるようにしていくこともあります。
いずれにせよ,後遺症による慰謝料の請求は基準がある程度確立してきているところですので,どのような方法をとるのが最適なのかを検討しながら,しっかりと請求していくことが重要です。
後遺症による賠償の請求については,一度当事務所にご相談ください。