交通事故でご家族を亡くされた方へ
交通事故でご家族を亡くされた方は,言葉にできないほどの悲しみや無念さを感じられていることと思います。
金銭的な支払いがなされたからといって解決するようなことではありませんが,少なくとも,一般的な相場から見て,到底妥当とはいえないような金額で示談することは避けるべきです。
示談をするにあたっては、まずは加害者に対して何を請求しなければならないのか、金額はどの程度が適正なものであるのかを知っておくことが不可欠です。
死亡事故によって生じる様々な損害
交通事故の被害者が亡くなられると、精神的な苦痛を受けるだけでなく、それまで家族のために収入を得てくれていた方が亡くなったことにより、収入面でも残された配偶者や子供の生活への影響は大変大きなものになります。
また、亡くなられた後、速やかに葬儀を行う必要等もありますが、事故後間もない状況の中で、これらの費用もねん出しなければなりません。
これらの損害は,事故がなければ発生しなかったものですので(葬儀はいつかは必ずしなければならないものだとしても,事故がなければその時点で行う必要はなかったものです。),加害者に対して賠償を求めていけるものです。
誰が請求できるのか
死亡事故による損害賠償の請求は,基本的に法定相続人が行うことになります。
そのため,ご家族が亡くなられた場合,相続人が誰なのかを戸籍によってきちんと確認する必要があります。戸籍謄本は,亡くなった方の出生までさかのぼることが求められます。
なお,被害者に扶養されていたり,被害者の内縁配偶者であった場合には,相続人でなくても賠償金の請求ができる可能性があります。
請求できる費目
1 葬儀費用
葬儀費用は,被害者が亡くなられて間もない段階で生じるものですが,無制限に支払われるわけではないことに注意が必要です。
葬儀費用は,基本的に実費を損害として請求するものですが,費用が高額すぎる場合には,裁判上も一部の支払いが認められないということがあります。
上限としては,150万円ほどとされることが多いとされています。
2 逸失利益
逸失利益とは,生きていれば得ることができた収入が,亡くなったことによって得られなくなったことによる損害のことです。
基本的に,事故当時に得ていた収入を元に算定することになりますが,事故当時まだ働いていなかった子供や,専業主婦の方であっても,請求することは可能です。
そのような場合には,一般的な労働者の平均賃金を使って損害額を計算することになります。
死亡事故の場合に特有の問題として,生きていれば生じていたはずの,本人の生活費を差し引いて計算しなければならないということがあります。
実務上は,被害者の所得や生活状況,被扶養者の有無,性別等を考慮して,収入の30%~50%程度を生活費控除率として差し引くという方法で計算しています。
3 年金
年金についても、事故当時受給資格を得ていた方であれば、支給されていた年金が被害者の死亡によってストップしてしまうと、その年金で生活していた家族にとって大きなマイナスとなります。
したがって、被害者が現に年金を受給していたような場合には、交通事故で死亡していなければ得られるはずだった年金について請求することが可能です。
また、事故当時にはまだ受給資格を得ていなかったという場合でも、年金を得られることがほぼ確実であったという場合には、本来得られるはずであった年金分についても賠償を求めることができます。
なお、この年金逸失利益についても、生活費控除が問題となります。
4 慰謝料
慰謝料は,精神的な苦痛・身体的苦痛に対する賠償のことですが,被害者本人への賠償分と,子供や配偶者,父母に対する賠償分が考えられます。
慰謝料は,目に見えない損害に対するものですので,金額の算定が非常に難しいところがあり,裁判上もかなりのばらつきがあります。
例えば、被害者と同居していた家族については他の家族と比べて慰謝料の額が大きくなったり、事故後の加害者の態度によって金額が変動することもあります。
こうした中で、保険会社から提示される金額は,相場からするとかなり低いということが少なくありません。
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