裁判による解決
紛争解決の最終手段
交通事故の件でご相談いただく場合,相手方との交渉を自分で行うのは難しい,納得のいく形で終わりたいという方が多いのですが,一方で,裁判までして争いが長引くということは好まないという方も少なくありません。
これは,交通事故に関するトラブルと一言でいっても,中身は人それぞれで,重大事故である場合や,加害者側の態度が著しく悪いような場合には,一切譲歩したくないという方も多いのに対し,比較的軽微な事故の場合,トラブルから早期に開放されて,早く元の生活に戻りたいという方が多いという事情があるからだと思います。
そのため,当事務所でも,基本的には話し合いでの解決を目指しており,実際に話し合いで解決する件数が多いです。
しかしながら,交渉は相手のあることですので,交渉を尽くしても,全く相手が応じようとしないというケースが中にはあります。また,請求するための資料の不足している場合や,法律的に認められるか微妙な場合にも,話し合いでの解決が難しいということがあります。
このような場合には,やむを得ず裁判の手続きをとることになります。
裁判手続きの流れ
裁判の大まかな流れは以下のようになっていて,裁判が行われる期日は,基本的に平日の日中に裁判所に出廷することになります。
和解の試みは,適宜行われることになりますが,一旦訴訟を提起しても,実際には和解で終わるということは少なくありません。
また,関係者に対する尋問は,事実関係に争いがあるような場合など,必要なときに,自身の認識している事実を裁判所で述べてもらうものです。
比較的簡単な事件でも,①~⑤までの期間は半年程度は見ていただいた方がいいと思います。
①裁判所への提出書類の作成
②お互いの主張が書面になって提出・証拠書類の提出
③和解の試み
④関係者に対する尋問
⑤判決
裁判のメリットとデメリット
裁判の最大のメリットは,適正な金額の支払いを受けることができるという点です。
一般的には,加害者との示談交渉では,被害者側が何らかの譲歩をしなければ示談が成立しないことが多いので,裁判をした方が,基本的に受け取れる金額は大きくなると考えてよいでしょう。
また、遅延損害金と弁護士費用の一部を加害者に負担させることもかのうとなります。
遅延損害金とは、賠償金の支払いが遅くなったことに対する損害のことで、令和2年3月31日にまでに発生した事故の場合は年率5%、令和2年4月1日以降に発生した事故であれば年率3%(今後変動する可能性あり)の割合で、追加の賠償を受けることができます。
また、弁護士費用については、実際に依頼している弁護士に支払う金額を実費で精算するのではなく、裁判で認められた遅延損害金を除いた最終の支払額の10%程度とされるのが一般的です。
デメリットとしては,裁判では双方が意見を出し尽くした上で,厳格に審査がされますので,解決までの時間が長くなるということがあります。
また,示談交渉段階では,証拠が曖昧なままでもやんわり加害者が認めてくれるようなところでも,裁判所で厳格に審査した結果,認められないということもあり得ます(裁判中に和解をする場合、考慮されることがあります)。
結果として,示談交渉の方が金額が大きかったということもあり得ますので,証拠が今一つという場合には,裁判をすべきかどうか慎重に検討した方が良いと思います。
その他、交通事故に特有の裁判のメリットとして、自分にも事故の発生に過失があり、人身傷害保険に加入している場合に、本来であれば補償を受けられないはずの自分の過失分について、人身傷害保険により、裁判基準で補償が受けられるようになるというものがあります。このメリットは非常に大きいですので、条件にあてはまる場合、裁判をした方が経済的にプラスになることが多いです。
裁判における要点とは?
裁判所は,法律を適用して,紛争に対する判断を示す場ですので,どのようなときに法律が適用されるのかを押さえていなければ,当事者は適切に活動することはできません。
交通事故の場合,事故で損害が生じたのでそれを請求するというシンプルなもので,特に法律の知識がなくても何となくイメージを掴むことはできます。
しかし,実際には,加害者に対して損害賠償の請求をして支払いが認められるのは,法律による裏付けがあるためです。
交通事故の場合は,民法709条は,自賠法3条といったものが代表的なものになります。
したがって,これらの条文がどういったときに機能するのかということを意識しなければ,適切に裁判を行うことはできません。
この点が抑えられていないと,感情的な主張や同じ主張を繰り返したり,あるいは,無関係の事実にこだわるということにもなりかねず,裁判の長期化につながりかねません。
また,その他にも,民事訴訟における基本的なルール・考え方も理解しておく必要があります。
弁護士への依頼の必要性
交渉については,特に弁護士費用特約に加入されていない方の場合,費用対効果の点で,弁護士への依頼をせずに,自身で交渉を行った方が良いということもあり得ます。
しかし,こと裁判においては,弁護士にご依頼いただくことを強くおすすめします。
これは,本人が裁判を行う場合,平日の日中に裁判所に出廷することになるという物理的な制約も大きいのですが,それ以上に,裁判では,要点を押さえた活動をしなければ,解決までの期間が長引き,結果として勝てるものも勝てないということがあり得るからです。
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