裁判で相手のセンターラインオーバーが認められた事案
事案の概要
事故の状況は,加害者が運転する車がセンターラインを越えて走行してきたため,被害者の車に衝突したというもので,双方とも怪我はありませんでした。
しかし,加害者がセンターラインオーバーの事実を認めなかったため,適切に賠償が行われず,ご依頼となりました。
当事務所の活動
示談交渉
本件は,センターラインオーバーの事故であったため,事実関係の証明さえできれば,通常,相手方が全額責任を負うことは明らかな事案でした。
しかし,相手方は,弁護士介入後も一向にこの事実を認めず,双方の損害はそれぞれ自分で直すという,いわゆる「自損自弁」の見解を変えることがなかったため,やむを得ず訴訟提起を行うこととなりました。
裁判での活動
本件の問題点は,センターラインオーバーを証明する決定的な証拠がないということでした。ここでいう決定的な証拠とは,それを見れば事故状況そのものがはっきりと分かるというような物的な証拠のことで,典型的なものはドライブレコーダーや防犯カメラの映像のようなものです。
本件は,実は,事故現場を撮影した防犯カメラは存在しました。
しかし,夜間の事故であったことに加え,相手のセンターラインオーバーの程度も大きくなく,双方のサイドミラーが接触したという程度であったため,カメラの映像ではセンターラインオーバーを確認することができませんでした。
また,センターラインオーバーの場合,車の損傷状況からは,どちらがセンターラインを越えていたのかを判別することは困難であるため,他に有効な物的証拠を見出すことはできませんでした。
その結果,事故後の双方当事者の対応といった間接事実によって,センターラインオーバーを証明することとなりました。
そのため,相手の対応の何がどのようにおかしいのかを具体的に指摘した上で,当事者の経験した事実を詳細に記した「陳述書」という提出し,それをもって,裁判所に判断をしてもらうこととなりました。
その結果,裁判所が相手方のセンターラインオーバーを認め,それを前提にこちらの請求のほぼこちらの主張どおりの和解をすることができました(和解では,早期の解決のため10%の限度で譲歩することとなりました。)。
コメント
本件のように,当事者の供述のみで証明する方法は,通常かなりの困難を伴います。
なぜなら,裁判では,どちらがより正しいかということを競うのではなく,こちらが主張したい事実について,裁判官に確信を抱かせる必要があり,しかも,裁判所は,あくまでも中立な立場で厳格に判断しなければならないため,曖昧な理由で事実を認めるわけにはいかないからです。
そのため,一般的には,供述を元に事実を認める場合であっても,何らかの裏付けが必要となります。
本件の場合,相手の主張で不合理な点があることが動かしがたい事実であったため,物的証拠がなかったにもかかわらず,こちらの主張が認められました。
本件のポイントは,被害者の話をよく聞いた上で,裁判の中で相手の供述の不合理な点を明らかにするという点にありました。
しかし,一般的には,このようなケースで勝つことは相当に難しいので,ドライブレコーダーを搭載するなどして,万が一のときのために備えておくことをおすすめします。