整形外科の通院日数がわずか9日でむちうちの後遺障害14級認定

2024-01-23

事案の概要

 事故の状況は、被害者が信号機のある交差点をバイクで直進していたところ、対向の右折車に衝突されたというものです。

 被害者は、外傷性頚部症候群(むちうち)等の傷害を負うことになりました。

 被害者は整形外科や整骨院に通院して治療を続けていましたが、事故から7か月弱が経過したところで相手の保険会社から治療費の支払いを打ち切られたため、ご相談となりました。

弁護士の活動

自賠責保険の後遺障害認定

 本件は、事故から約7か月が経過しており、治療によって完治することは期待できない状態であったため、まずは後遺障害について自賠責保険の被害者請求を行うこととしました。

 その結果、首や上腕の痛みについて、後遺障害14級9号の認定を受けることができました。

保険会社との交渉

 後遺障害の認定結果を踏まえて相手の保険会社と裁判基準に基づいて交渉を行ったところ、治療費を除いて約320万円(被害者請求で獲得した後遺障害分の自賠責保険金を含む)を獲得することができました。

ポイント

 上記の流れ自体は、典型的なむち打ち症等に見られる経過で、特に特筆すべきところはありません。

 ただ、このケースでは、通常と異なる点がありました。

 それは、整形外科の通院が極端に少なかったということです。

 この方の場合、整形外科の通院は月に1回程度と極端に少なく、合計で9日しかありませんでした。これに対して、整骨院への通院は多く、合計が130日を超えていました。

 これまでの経験上、むち打ち症のような他覚的所見がない神経症状については、整形外科にしっかりと通院した人でないと、いくら整骨院へ通院していても後遺障害認定は受けられないという印象を持っていましたので、今回のケースはいい意味で驚きでした。

 さらに、首の痛みについては、後遺障害診断書上、「時々痛む」と記載されていて、後遺障害の認定基準にある、「ほとんど常時疼痛を残すもの」という条件を満たしていないため、後遺障害が認定される可能性はかなり低いように見受けられました。

 これに対してプラスの事情としては、通院中に撮影されたMRIの画像を見ると、私は読影の専門家ではありませんが、ヘルニアのようなものと、神経根が圧迫されているような状態は確認することができました。

 その他、本件はよくある自動車搭乗中の追突事故ではなく、自動車とバイクの衝突事故であり、身体への衝撃が強いと思われるということも特徴として挙げられるでしょう。

 本件は、後遺障害診断書の末尾の「今後の緩解の見通し」欄について多少の修正をお願いしたほかは、弁護士が後遺障害認定のために特別な活動をしたというわけではありません(示談交渉の場面で全力を尽くしたことは言うまでもありません)。

 これらの事情からすると、やはり後遺障害の認定で重視されているのは、事故の状況やMRI等の画像といった客観的な資料なのだと改めて思いました。

 被害者請求の審査の中での「事故状況」という要素は、最近の審査の中で被害車両に関する資料の提出が必須になったのことですので(自賠責保険会社の担当者から聞きました)、特に重視されているものと考えられます。

 これに対し、医師に働きかけて後遺障害診断書を有利に書いてもらう、通院の日数を稼いで重症であるかのようにアピールするといった小手先の手法は、書く人や被害者の行動次第でいくらでもコントロールできるもので簡単に鵜呑みにすることはできませんので、ますます通じなくなってきているのではないかと思います。

 つまり、「これだけ大きな事故で、症状が長期化するような身体的な特徴があるのだから、後遺症が残ることも医学的な説明がつく」というような本人の自己申告以外の事情が必要だと考えられます。

 本ホームページでは再三述べていることですが、後遺障害の認定は、被害者側で狙って取りにいくようなものではないのです。