後遺障害併合14級【頚部痛・兼業家事】事故が2件重なったケース
事案の概要
事故状況は、被害者が信号待ちで停止中に、後方から加害者の運転する車両に衝突され、その衝撃で前方に停止していた車両にも衝突したというもので、車両の後部が大きく破損し、被害者が頚椎捻挫の傷害を負ったというものでした。
さらに、その2か月半後、ガソリンスタンドの敷地内で、後退してきた別の車両に衝突され、同じく頚椎捻挫の傷害を負いました。
事故が重なってご自身での対応が難しくなったため、ご相談となりました。
当事務所の活動
本件のように、交通事故で怪我をして治療をしていたところ、通院が終わらないうちに別の事故で同じ場所を負傷したような場合を、賠償実務上、「異時共同不法行為」と呼んでいます。この用語は、あくまでも交通事故の損害賠償実務での用語で、法律上の共同不法行為とは異なりますので注意を要します。
いずれにせよ、このような事態が生じると、通常、それまでに対応していた1つ目の事故の保険会社の対応が終了し、次の保険会社が代わって対応を開始することになります。
そして、治療が終了した後に、順番に示談交渉を行っていくことになります。
本件では、治療終了後も後遺障害が残ったため、後遺障害の被害者請求を行い、後遺障害14級9号が認定されることになりました(本件の場合、後遺障害の自賠責保険金は75万円×2=150万円となりました)。
その結果を元に示談交渉を行い、1事故目の保険会社から約270万円(自賠責保険金含む)、2事故目の保険会社から約53万円の支払いを受けるということで示談することができました。
ポイント
本件のような異時共同不法行為では、各加害者がどのような責任を負うのかを整理しておく必要があります。
この点は、保険会社の認識と、法律上の考え方ではギャップがありますので、この点を十分に認識しておく必要があります。
詳しい説明は割愛しますが、厳密に法律的な考え方に基づいて示談をしようとしても、現実的に示談をすることは困難です。
そこで、保険会社の実務の考え方を基本としつつ、被害者にとって最もよい解決方法を選択していきます。
弊所では、異時共同不法行為の場合、通常は後発事故から示談を進めていきますが、本件は、明らかに先行事故の方が後発事故よりも衝撃が大きく、怪我への影響も大きいものでしたので、この点を考慮して先行事故から示談をしていくことにしました。
異時共同不法行為で、どちらの事故との関係でも後遺障害認定が受けられれば、自賠責保険金の額もその分大きくなりますので、通常よりも示談交渉を進めやすくなります。
例えば、裁判基準の賠償額が180万円の場合、事故が1つだと14級の自賠責保険金は75万円で、残額の105万円を任意保険会社に支払ってもらわなければなりませんが、事故が2つで自賠責保険金を150万円受領できれば、任意保険会社に請求する額は30万円で済みます。このように、金額のギャップが小さいくなるため、示談交渉のハードルも下がります。
異時共同不法行為は、法律的な見通しを意識しつつ、示談の落としどころを探っていく必要があり、関係する当事者の数も増えますので、専門的な知識がなければ正確に理解するのは困難です。
異時共同不法行為でお困りの場合、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。