脊髄損傷の後遺障害
脊髄は,脳からの指示を全身に伝える神経で,非常に重要なものです。
この脊髄が交通事故によって損傷することがあるのですが,その場合,腕や脚に麻痺が残ったり,呼吸障害や膀胱直腸障害が発生することもあるなど,深刻な障害が残りかねません。
ただ,脊髄損傷といっても障害の内容が誰でも同じというわけではなく,いわゆる完全損傷の場合と不全損傷の場合とでは,症状の内容・程度にかなりの違いがあり,損害賠償上も大きな違いが生じてくることになります。
自賠責保険の等級
自賠責保険において,せき髄症状を理由として認められる後遺障害等級は次のとおりです。
別表第1 第1級1号 |
「せき髄症状のため,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について,常に他人の介護を要するもの」 |
別表第1 第2級1号 |
「せき髄症状のため,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について,随時介護を要するもの」 |
別表第2 第3級3号 |
「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが,せき髄症状のために労務に服することができないもの」 |
別表第2 第5級2号 |
「せき髄症状のため,きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの」 |
別表第2 第7級4号 |
「せき髄症状のため,軽易な労務以外には服することができないもの」 |
別表第2 第9級10号 |
「通常の労務に服することはできるが,せき髄症状のため,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」 |
別表第2 第12級13号 |
「通常の労務に服することはできるが,せき髄症状のため,多少の障害を残すもの」 |
認定のポイント
基本的に,MRI,CTといった画像所見が重要で,この画像所見と実際に生じている麻痺や可動域の制限等が整合するかどうかが見られることになります。
また,後遺障害の申請の際には,脊髄損傷の場合の特別な医師による意見書を取り付けるなどします。
せき髄損傷の認定の問題点
脊髄損傷となった場合,画像上から脊髄が損傷したことが明らかな場合には後遺症の証明をすることに特に問題は生じません。
しかし,不全損傷の中には,必ずしも画像上はっきりと脊髄を損傷したことが分からない場合があり,そのような場合,実際に生じている障害に見合った等級の認定が受けられないという可能性もあります。
この場合,事故の状況から脊髄損傷が生じてもおかしくないことや,反射等の検査結果,事故後の症状の経過等によって,脊髄損傷が存在することの立証を試みることになります(大阪地裁平成20年7月31日判決等)。
賠償上の問題点
後遺障害等級が認定された場合でも,自宅の改造や将来看護費等の請求を考えなければならない場合や,労働能力の喪失率が争われることもあり,賠償上の複雑な問題が生じることがあります。
交通事故で脊髄損傷が発生した場合には,相談は無料ですので,お早めにお問い合わせください。
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