後遺障害等級14級9号で5年を超える労働能力喪失期間が認められた事例

2017-07-04

 今回は,当事務所で取り扱った交通事故の案件の中で,後遺障害等級14級9号が認定され,逸失利益の労働能力喪失期間が5年に限定されなかった事例についてご紹介します。

 

事案の経過

 事案は,信号機のある交差点の交通事故で,被害者が原付バイクで交差点を直進しようとしたところ,対向車線の自動車が右折しようとしてきて衝突したというものです。

 被害者は,交通事故により右足関節を骨折し,8か月以上の通院をしたものの後遺症が残り,自賠責保険で後遺障害等級14級9号が認定されたところ,相手方の保険会社から賠償金の提示があったため,ご相談に来られました。

 

当事務所の活動

 骨折後の後遺障害ですので,12級13号の可能性も考えられましたが,既に提出済みの資料や,ご依頼者様のご意向により,14級9号を前提として,賠償金の増額交渉を行うこととしました。

 

賠償金額

 元々の相手方の提示額は,全て合わせて約88万円(自賠責保険金75万円除く)で,後遺障害部分に限っていうと,過失分(15%)を差し引くと自賠責保険金を下回るというもので追加支払については実質0円となっていました。

 しかし,弁護士がご依頼を受けて交渉を行ったところ,過失分と自賠責保険金を差し引いても後遺障害部分でだけで約110万円,傷害部分を加えると,合計約280円(自賠責保険金を加えると約360万円)となり,増額幅は約195万円となりました。

 

交渉のポイント

⑴ 本件の特徴

 本件で認定された後遺障害等級14級9号で,交通事故ではよく見られる等級といえます。

 しかし,14級9号が認定される例として多いむち打ち症とは異なり,今回は足関節の骨折後の14級9号であったというところに,特徴がありました。

⑵ 逸失利益の問題

 後遺障害が残った場合に請求することができる逸失利益とは,これ以上良くならない後遺症によって将来の減収が生じることを補填するものです。

 そのため,症状が固定してから,年齢により働けなくなるまでの期間(一般的に67歳までとされることが多いです。)について,この減収分を請求することになります。

 ところが,一部の後遺障害の中には,後遺障害と認定されながら,後遺症による減収が一生続くことはないとして,労働能力喪失期間を一定の期間に限定されるものがあります。

 その代表的なものが,14級9号です。

 14級9号とは,痛みやしびれといった神経症状について主に認定されるもので,症状が回復したり,症状に慣れること等によって,労働能力が回復すると考えられています。

 そのため,14級9号の場合は,労働能力喪失期間は67歳までとはされず,特にむち打ち症を原因とするものについては,裁判上,労働能力喪失期間を原則として5年とすることが定着しています。

⑶ 骨折の場合

 このように,14級9号は,他の後遺障害のように機械的に賠償金の算出をすることができないという難しさがあり,保険会社が労働能力喪失期間を限定してくることにも理由があります。

 そこで,実際には,何年程度が妥当なのかということが問題になってきます。

 むち打ち症の場合には5年が一般的と書きましたが,骨折の場合はどうなのでしょうか?

 骨折の後の14級9号の場合は,裁判上も明確な基準があるわけではなく,67歳までとするものもあれば,10年とするものもあり,むち打ち症の場合と同様に5年とするものも見られます。

⑷ 今回のケース

 今回のケースでは,保険会社は労働能力喪失期間を当初3年と主張していました。

 しかし,上で述べたように,裁判ではむち打ち症の場合でも5年,骨折の場合はそれを超える期間を認定するものも少なくないことから,労働能力喪失期間について交渉を行いました。

 その結果,労働能力喪失期間は8年,後遺障害慰謝料も当初は40万円とされていたところを110万円(裁判基準の満額)とすることで示談することができました。

 

メッセージ

 後遺障害の逸失利益の計算は,一般的な計算方法は確立されているものの,後遺障害の内容,原因となった傷害,職業,年齢といった事情から,必ずしも一般的な考え方で対処できるものではありません。

 最近の裁判の動向などを元に,どのあたりで示談をすべきなのかを見極めることが大事です(場合によっては裁判をすべきこともあるでしょう。)。

 また,一般的な考え方では処理できないという場合は,被害者の側で,その理由を資料によって根拠を示しつつ説明していかなければなりません。

 特に,後遺障害の損害賠償は,将来の損害を予測して請求するという性質のものであることから,この辺りの説得が難しいところです。

 交通事故で後遺障害の損害賠償が問題となった場合は,一度弁護士にご相談ください。

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