呼吸器・循環器の後遺障害

【呼吸器の後遺障害】

ア「動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定」

 安静時に採血により測定します。

 原則はこの方法により認定が行われます(ただし,イ,ウの方法による方が重い認定となる場合は,イ,ウの方法によります)。

 測定の結果,動脈血酸素分圧の数値(~50Torr,50Torr~60 Torr,60Torr~70 Torr,70 Torr~)と動脈炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torr)にあるかどうか(範囲内だと等級が下がる)で後遺障害等級が判定されることになります。

〇後遺障害等級の認定

動脈血酸素分圧

動脈血炭酸ガス分圧

限界値範囲内

限界値範囲外

50Torr

1~3級(※)

50Torr超~60Torr

5級

1~3級(※)

60Torr超~70 Torr

9級

7級

70 Torr超

なし

11級

 動脈血酸素分圧,動脈血ガス分圧とは,それぞれ動脈血に含まれる酸素,炭酸ガスの圧力をいい,Torrとは,圧力単位のことです。

(※)介護の要否で等級が分かれます

イ「スパイロメトリーの結果及び呼吸困難の程度による判定」

 アの結果がイを下回る場合,イの結果により等級の認定がされます。

 ホース状の酸素吸入口に口をあて,空気を一杯に吸い込んで吐き出し,%1秒量(最初の1秒間吐き出した量で気道が狭くなることにより換気量が減少していることを示す)又は%肺活量(肺の弾性の減弱等により換気量が減少していることを示す)を測定します。

※年齢や性別から算出した予測値に対する実測値の割合を%で表します。

 これに,実際の呼吸困難の程度を考慮して等級が判定されます。呼吸困難の程度はおおむね以下のような区別がされます。

・高度→呼吸困難のため,連続しておおむね100m以上歩けないもの

・中等度→呼吸困難のため,平地でさえ健常者と同様には歩けないが,自分ペースではなら1km程度の歩行が可能であるもの

・軽度→呼吸困難のため,健常者と同様には階段の昇降ができないもの

〇後遺障害等級の認定

スパイロメトリーの結果(いずれか)

呼吸困難の程度

%1秒量

%肺活量

高度

中度

軽度

35以下

40以下

1~3級(※)

7級

11級

35超~55

40超~60

7級

7級

11級

55超~40

60超~80

11級

ウ「運動負荷試験の結果」

 ア,イの判定で等級認定ができない場合でも,ウの結果により等級の認定が行われることがあります。

・「運動負荷試験」の種類(いずれか選択)

①漸増運動負荷試験

トレッドミル,エアロバイク

②時間内歩行試験

6分間・10分間等の歩行試験(廊下等を行ったり来たりして距離を計測する)

シャトルウォーキングテスト(一定間隔の目印の間を,電子音に合わせて反復して歩行する)

③その他

50m歩行試験等

・「運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害ある」と判断されるための必要事項

主治医の意見として以下のものが必要になります。

①実施した運動負荷試験の内容

②運動負荷試験の結果

③呼吸機能障害があると考える根拠

④運動負荷試験が適正に行われたことを示す根拠

⑤その他参考となる事項

〇後遺障害等級の認定

呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ,ウから明らかに呼吸機能に障害があると認められる場合→11級10号

 

【循環器の後遺障害】

心機能の低下

 運動耐容能(どのくらいの運動に耐えられるか)の低下の程度によって認定されます。

 運動耐容能の測定は,運動負荷試験を行って,嫌気性代謝閾値(AT)を計測することが考えられます。

 ATとは,軽い運動から運動の強さが徐々に増していくとき、有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点となる運動強度のレベルのことをいいます。

 このATを見ることによって,可能な運動の程度が分かり,METsの数値で表されます。

※METとは

 安静座位の酸素摂取量を1MET=3.5ml/kg/minという単位にして,その運動が何倍の酸素摂取量に当たるかを示します。

METsの目安は以下のとおり

作業・運動の内容

運動強度(METs)

・机上の事務的な仕事

・パソコン・タイプ作業

・時速1~2km程度のゆっくりとした歩行

・食事・洗顔・歯磨き

1~2

・守衛・管理人の業務

・調理作業

・立って電車等に乗る

2~3

・機械の組立作業

・溶接作業

・トラックの運転

・タクシーの運転

・時速4km程度の普通の歩行

・シャワーを浴びる

3~4

・軽い大工仕事

・草むしり

・階段を降りる

4~5

・大工作業

・農作業

・垣根の刈り込み

・階段を昇る

5~6

・シャベルを使う穴掘りの作業

・雪かき

・早足での歩行

6~7

・時速8km程度のジョギング

7~8

・階段を連続して昇る

・時速10km程度のジョギング

8~

〇後遺障害等級の認定

・6METsを超える運動が制限→9級11号

(例:平地を健康な人と同じ速度で歩くのは差し支えないものの,平地を急いで歩く,健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動が制限されるもの)

・8METsを超える運動が制限→11級10号

(例:平地を急いで歩く,健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動に支障がないものの,それ以上に激しいか,急激な身体活動が制限されるもの)

その他の循環器の後遺障害等級

・除細動器を植え込んだもの→7級5号

・ペースメーカーを植え込んだもの→9級11号

・房室弁又は大動脈弁を置換したもので,

 (ア)継続的に抗凝血薬治療を行うもの→9級11号

 (イ)(ア)に該当しないもの→11級10号

・大動脈に偽腔開存型の解離を残すものは11級10号

 

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