会社員で後遺障害12級6号が認定され,過失割合の交渉も行った事例
事案の概要
事故の状況は,バイクで道路を走行中,右側からバスが車線変更をして接触してきたというもので,被害者は,鎖骨・肋骨・肩甲骨の骨折といった傷害を負い,過失割合や事故当時に身に付けていたものなどに関する賠償の問題もあったため,事故から間もない時点でのご依頼となりました。
当事務所の活動
物損の示談交渉
まずは,物損の交渉からですが,本件は,バイクの修理費用が時価額を上回る,経済的全損にあたりましたので,この点の賠償の交渉が必要となりました。
また,事故当時身に付けていたものなども破損していましたので,この点も併せて交渉を行いました。
過失割合
本件は,弁護士への依頼前の物損の交渉の時点で過失割合は5:95で話が進んでいて(物損は相手からの請求なし),この点について被害者は特に異存はありませんでした。
しかし,弁護士が介入すると,保険会社がそれまでの主張を撤回し,過失割合20:80を新たに主張してきました。
四輪車が車線変更をして二輪車に接触した場合の過失割合は,一般的には20:80とされているのです。
保険会社が一旦示した金額を撤回することは通常はないのですが,物損で示した過失割合を,弁護士が介入した後の人身の交渉の際に撤回してくるということはたまにあります。
物損と人身では金額の大きさが違うことに加え,弁護士介入後の人身の支払額は,保険会社が通常予定している金額よりもさらに大きくなるためだと考えられます。
そのため,この点も交渉を行う必要が生じました。
一般的な過失割合を修正するためには,それ相応の理由が必要となり,しかも,こちらが主張したい事実を自分で証明しなければなりません。
事故の状況は,ドライブレコーダーなどで証明することができることもありますが,それが難しい場合,刑事手続の中で作成された資料を用いて証明をしていきます。
本件は,加害者の刑事裁判が行われていましたので,裁判所の記録を取得する必要がありました。
この裁判記録を確認することにより,事故の状況を証明することができ,被害者が事故を回避することが一般的な車線変更の場合と比較して困難であったことが分かりましたので,このことを理由に過失割合を5:95に戻すことができました。このことは,人身の賠償額に大きく影響することになります。
後遺障害の認定
被害者は,治療を行いましたが,肩の関節の可動域に障害が残ったため,後遺症の認定を受けることになりました。
本件は,実際に通院した日数が10日(他に入院2日)と短かったのですが,無事に後遺障害等級12級6号の認定を受けることができ,これに伴い,自賠責保険金として224万円が支払われました。
むちうちに代表される,痛みやしびれなどの神経症状のみの後遺症の場合とは異なり,骨折後の可動域制限の場合であれば,実通院日数がそれほど問題とはならないのです。
この場合,症状固定時点での骨の癒合の仕方などに問題があり,それによって可動域が制限されているということが,画像資料によって客観的に把握することができるということが重要なポイントとなります。
人身の示談交渉
本件の場合,既に述べたように,過失割合も争いとなりましたが,この点は,20:80から5:95となりました。
人身の交渉で金額面の差が出る部分は,主に慰謝料と逸失利益です。
過失割合5:95を前提としても,当初相手方は約950万円を提示していました。
しかし,これは相場と比較して著しく低かったため,交渉を行い,最終の支払額は約1160万円として示談をすることができました。
ポイント
今回の交渉で金額に大きな影響を与えたのは,過失割合の部分でした。
被害者本人が交渉をしていた場合と弁護士が介入した場合で,弁護士が介入した後で不利になることはほとんどないのですが,たまにあるのが,物損示談時の過失割合が変更されるパターンです。
この場合,物損の方で一般的な相場よりも保険会社が譲歩している可能性が高いため,人身の方の過失割合の交渉は難しいことが多いです。
しかし,一方で,全く譲歩する余地がないのに保険会社が譲歩することはほとんどありません。
つまり,保険会社にも何らかの弱みがあるはずです。ただ,それを証明する資料が不足しているために,一般的な相場を強く主張してくるのです。
今回の場合,刑事記録を取得することで,相手の弱み(被害者が避けられない状況だったこと)を証明することができたので,過失割合を相場から修正することができました。
弁護士基準で慰謝料や逸失利益などを請求しようとする場合,金額が大きくなり,過失割合の交渉もよりシビアになりますので,しっかりと資料を揃え,論理を整えることが重要となるのです。
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