交通事故の解決手段と特徴

交通事故に遭った場合,加害者に対して損害賠償請求をしていくことになりますが,相手方が素直に損害について満額の賠償を行うとは限りません。

むしろ,すんなりと支払ってくれる方がまれであるといった方がよいでしょう。

そこで,適正に賠償を行ってもらうために,被害者としても何らかの行動をする必要があります。

 

示談交渉

まず考えられるのは,相手方との示談交渉です。

相手方がすんなりと支払ってくれることはまれであると申しましたが,請求の根拠を示すなどして根気強く交渉を行うことで,一般的に裁判で認められる額かそれに近い額で賠償金の支払いをしてくることも少なくありません。

交通事故の場合,毎年大量に裁判で争われてきていますので,かなり相場というものが出来上がってきています。

そのため,あえて裁判をしなくても,適正な金額についておおよその見当をつけることができますので,示談できる可能性が高いのです。

交渉で示談できた場合のメリットは,比較的短期間で決着が付くということにあります。

資料収集にかかる時間や,相手方の対応にもよるので一概には言えないのですが,早い場合だと,1月もかからずに話がまとまることもあります。

ただし,あくまでも話し合いでの決着となりますので,相手方は,いわゆる裁判基準の満額での支払いには応じないということもあります。

 

ADR

ADRとは,裁判外の紛争解決制度のことをいい,交通事故事件の場合には,特別なADRが存在し,加害者側はそこで示された示談案を尊重しなければならない(事実上の強制力がある)というものもあります。

事実上の強制力があり,裁判を行うよりも短期間で終了することが期待されるため,証拠がそろっているのになぜか相手方が支払いを拒んでいるというような場合に利用すると良いでしょう。

裁判を行うよりも短期間で解決に至ることが多く,数か月程度での解決が見込まれます。

ここでは,代表的なものを紹介します。

 

1 公益財団法人交通事故紛争処理センター

担当する弁護士が,双方から意見を聞き,資料の提出を受けて,可能であれば和解のあっせん案を提示します。

あっせん案による和解ができなかった場合,審査が行われ,裁定案が出されることになります。

紛争処理センターと協定のある保険会社等(多くの保険会社が協定を結んでいます。)は,この裁定案を尊重することとなっていますので,被害者が承諾すれば,紛争は終結することになります。

 

2 公益社団法人日弁連交通事故相談センター

被害者と相手方が出席し,担当の弁護士が双方から意見や事情を聴取し,示談のあっせんを行います。

あっせんの結果,合意に至らなければ手続きは終了となりますが,相談センターと協定を結んでいる共済が相手方の場合には,審査を求めることができ,そこで示された示談案を共済は尊重しなければなりません。

 

3 一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構

自賠責保険の後遺障害等級や事故と相当因果関係,重過失減額などの自賠責保険(共済)の支払いに納得できないときに利用します。

書面による審査が行われ,保険会社または共済組合は,そこで示された調停結果に従うことになっています。

 

訴訟

話し合いでは相手方がどうしても譲歩せず,事案の内容等によってADRを利用することが難しいような場合には,訴訟を提起することになります。

訴訟をすることのメリットは,裁判官によって,個別の事案に応じた適正な賠償金額の認定が行われることです。複雑な事案であっても,証拠を元に何らかの判断を下していくことになります。

金額的にも,遅延損害金が請求できるということもありますので,基本的に示談交渉の場合よりも高額になると考えてよいでしょう。

デメリットは時間がかかることで,裁判の途中で和解をすることも多いですが,そうでない場合,早くても半年程度はかかります。

そのため,多少長い期間をかけてでも,白黒をハッキリとさせて適正な金額をしっかり払ってもらおうと思う場合には,訴訟を選択することになります。

 

支払督促

他にも,債権者の申し立てのみで金銭給付の債務名義が作成される手続である支払督促というものがありますが,債務者の異議によって失効または民事訴訟に移行することになりますので,そもそも金額に争いがあるというような場合には有効な手段とはいえないでしょう。

このように,相手方から適正な金額を支払ってもらうための手段はいくつか考えられますが,最終的には,ご依頼者様のニーズや,各手段の中で生じるメリット・デメリット等を総合的に判断して手続きを選択していくことになります。

 

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