10代の頚椎後遺障害・異議申立で【非該当→後遺障害14級】

2023-04-18

事案の概要

 事故状況は、被害者が自転車に乗って青信号で横断歩道を横断していたところ、信号無視の自動車にはねられたというものです。

 幸い、骨折はなかったのですが、被害者は腰部打撲、右膝関節打撲、外傷性頚部症候群の傷害を負うことになり、症状固定の段階でのご相談となりました。

当事務所の活動

傷害部分の解決

 本件は、症状固定の時期が近づいてきていましたので、まずは、後遺障害の申請を行うことにしました。

 しかし、残念ながら初回の請求では後遺障害非該当という結果になってしまいましたので、まずは後遺障害分を除いた形(傷害分といいます)で示談交渉を進めることにしました。

 その結果、まずは傷害分について95万円の支払いを受けることができました。

後遺障害の異議申立て

 その上で、被害者請求で後遺障害非該当という結果が届いたものの、異議申立てが可能か検討しました。

 本件は、よくある頚椎捻挫の事例とは異なる特徴がありました。それは、被害者が事故当時17歳と若かったにもかかわらず、頚椎椎間板ヘルニアの所見が得られていたことです。

 椎間板ヘルニアとは、椎骨と椎骨の間のクッションの役割を果たしている椎間板が変性などにより飛び出してしまった状態をいいますが、加齢によって生じることが多く、交通事故の被害者でも、元々ヘルニアを持っているという人は多いです。

 しかし、今回の被害者のように、10代で頚椎のヘルニアが出ているということは多くなく、身体の回復も中高年と比較すると早いため、むち打ち症のような怪我で後遺障害が認定されるケースは多くありません。

 それにもかかわらず、本件ではヘルニアが確認されたため、主治医は、今回の事故による外傷性のものではないかという見解を示していました。

 そこで、弊所では、このヘルニアの存在に着目し、異議申立てを行うことにしました。

 その結果、当初の判断が覆り、後遺障害14級9号の認定を受けることができました(自賠責保険金75万円の獲得)。

 さらに、この認定を受けて、加害者側と追加の交渉を行い、自賠責保険金と合算して、約130万円を追加で取得することができました。

 なお、後遺傷害部分の賠償金が通常と比べて低くなっているのは、被害者が裁判までは望まなかったことと、被害者の年齢が若く、短期間の労働能力喪失期間(頚椎捻挫の場合、5年程度が一般的)では、逸失利益の額が大きくならないことによります。

※器質的変性を前提とする後遺障害の場合、労働能力喪失期間は原則67歳までとなり、その場合、若年者の場合は一般的な労働者の平均賃金を使って計算するので、金額が小さくなるということはありません。

ポイント

 本件は、異議申立てが成功した事例ですが、ポイントは2つあります。

 1つは、事故自体が自転車で車にはねれられたというもので、危険かつ身体への衝撃も大きいと言えること、2つ目は、若い被害者であったにもかかわらず、ヘルニアの所見が出ていたことです。

 これらは、一般的なむち打ち症の事案とは異なる特徴で、異議申立てによる後遺障害等級の変更が見込めると判断しました。

 異議申立ての方針としては、本件は主治医が協力的で、頚椎椎間板ヘルニアが事故によって生じたのではないかとの見解を示してくれていましたので、主治医に追加で意見書を作成してもらい、これを異議申立書に添付することとしました。

(なお、外傷性のヘルニアであるということまで証明できれば、後遺障害12級13号という可能性もあったのですが、初回のMRIを撮影したのが事故から3か月経過後だったので、そこまでの立証には至りませんでした。事故から間が空いてしまうと、たとえ外傷性のヘルニアだということがいえたとしても、他の例えばスポーツなどで生じたものと区別が難しくなってしまいます。)

 本件は後遺障害認定の異議申立てが成功したのですが、異議申立てが成功するかどうかの見通しは、多くの認定・非該当の事例に接していなければ分からないものです。「納得できないから異議申し立てをする」というだけでは、異議申立て自体は、成功しない確率の方が高いので、失敗に終わる可能性が高く、時間と労力を無駄にしてしまいます。

 また、他の非該当となる事案との違いを見極め、それに応じて用意すべき資料も変わってきます。

 このように、後遺障害認定の異議申立ては経験が重要となりますので、弁護士によって結果に違いが出る部分だと思います。

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後遺障害認定の異議申立て

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