人身傷害保険とは

 人身傷害保険は,被害者が自分がけがをしたことによって被った被害について補償を受けるために,自分で加入する保険です。

 自分が加害者となったときに備える対人保険や対人保険(TVCMなどでよく見かける保険はこちらの保険です。)とは異なります。

 そのため,加害者が100%悪い事故で,加害者が任意保険に加入しているような場合には,使用しないことも多いでしょう。

 逆に,自分に一定程度の過失がある場合や,加害者が任意保険に加入していなかったような場合には,加害者側からの支払いに期待できないので,この保険を使用することが考えられます。

 ここでは,人身傷害保険の概要について簡単に説明します。

※人身傷害保険は,各保険会社によって補償の範囲などが多少異なりますので,詳細はご加入の保険の約款をご確認ください。

人身傷害保険の特徴

① 損害を補填するための保険

 人身傷害保険は,被害者に実際に生じた損害について支払いを行うものです。そのため,実際に損害が生じていない限り請求することができないということになります(ただし,約款に示されている計算方法にしたがって計算を行った結果,実際の損害額よりも大きくなる可能性はありえます。)。

② 過失にかかわりなく保険金が支払われる

 加害者側が加入している対人保険の場合,被害者に過失がある場合,その分が支払額から差し引かれることになりますので,自分にも過失がある場合に十分な補償を受けられないことになります。

 これに対して,人身傷害保険では,被保険者の過失にかかわらず,保険金を支払います(重過失があった場合は免責の可能性があります。)。

③ 算定方法

 人身傷害保険金は,契約にしたがって支払われるものなので,その金額は契約内容(約款)によって明確に定められています。

 したがって,加害者側に請求する場合に交渉で増額したりするのとは異なり,約款にしたがって支払われている以上,金額を争うことはできません。

 例えば,慰謝料は,加害者側の対人賠償であれば,確定した基準というものは存在しませんが,人身傷害保険の場合,計算方法が約款で明記されています。

 これに対して,後遺障害が残った場合の逸失利益については,基本的な計算方法については約款に記載がありますが,金額を左右する労働能力喪失率労働能力喪失期間については,『判例の動向等を勘案して決定します』などと記載されているため,必ずしも明確となっていません。

④ 求償(代位)

 人身傷害保険は,本来加害者が負担すべきものも含めて支払いを行いますので,その部分については,加害者から回収を行います。

 人身傷害保険会社が求償を行う限度で,被害者の加害者への請求権の額は減少します。

 これは,人身傷害保険が損害を補填するための保険であるため,同じ損害について2重取りはできないにするためのものです。

 

ページの上部へ戻る